頭蓋内胚細胞性腫瘍患者の長期生存の条件は何か:名古屋大学

公開日:

2020年12月29日  

最終更新日:

2021年1月2日

Long-term survival in patients with primary intracranial germ cell tumors treated with surgery, platinum-based chemotherapy, and radiotherapy: a single-institution study

Author:

Shimizu H  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Nagoya University School of Medicine, Nagoya, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:33007755]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Oct
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

頭蓋内胚細胞性腫瘍(GCT)は,組織像に基づいてgerminomatousグループ(GGCT)とnongerminomatous GCTグループ(NGGCT)に分けられる.GGCTにはpure germinoma(胚腫)とgerminoma with STGCが含まれる.NGGCTは予後によって,予後良好群(成熟奇形腫),予後中間群,予後不良群の3群に分けられる.名古屋大学のShimizuらは2016年までに経験した自験の頭蓋内GCTの連続120症例の長期予後とそれを左右する因子を解析した.成熟奇形腫は摘出手術のみを,その他は手術+プラチナ製剤ベースの化学療法+放射線治療を受けた.

【結論】

5年,10年,20年OSはGGCTの70例で97.1%,95.7%,93.2%であったが,NGGCTの40例では67.3%,63.4%,55.4%であった.OSとPFSはGGCTとNGGCTの間で有意差があった(p<0.001).NGGCTの予後中間群では5年,10年,20年OSは78.9%,71.8%,53.8%であったが,予後不良群では3年,5年OSですら42.9%と34.3%にとどまった.多変量解析では,NGGCTの予後不良群と予後中間群の計33例では,血中AFP高値(>300 ng/mL)が唯一のOS不良の相関因子であった(HR3.88,p=0.02).

【評価】

本邦の原発性脳腫瘍の2.2%(文献1)を占めるGCTはgerminomatousグループ(GGCT)とnongerminomatous GCTグループ(NGGCT)に二分され(文献2),さらにNGGCTは予後に基づいて3群にわけられており,それぞれに対する治療戦略が提案されている.名古屋大学のグループは,中央値11年(0.5~37.8年)という長期の追跡を通して,プラチナ製剤ベースの化学療法+放射線治療によって,germinomatousグループでは20年生存が93.2%,5年,10年,20年PFSも91.4%,86.6%,86.6%と高い治療効果が得られることを示した.一方,NGGCTの予後中間群19例と予後不良群14例では,より強力な化学療法,放射線療法によっても,5年OS67.3%,5年PFS67.4%と相対に低く,特に予後不良群では5年OSは34%でしかなかった.
一方近年,小児の新規NGGCTに対して化学療法を手術に先行させるネオアジュバント治療の2相試験の結果が報告されているが(文献3),これによれば同治療を受けた102例の5年EFSとOSは93%と84%と高いことが報告されている.名古屋大学のシリーズでは,4例が化学療法後にセカンドルック手術を受けているが,うち2例では手術後早期に死亡したという.
高用量化学療法とリスク対応放射線治療を受けたNGGCT116例では(European SIOP-CNS-GCT-96試験),初診時AFPレベルとセカンドルック手術後の腫瘍残存が予後不良因子として報告されている(文献4).本シリーズでも,初診時AFPレベルが唯一の予後不良因子であった.実際,NGGCT予後不良群14例のうち8例が初診時AFPレベル>300 ng/mLで,この8例中6例が死亡している.
一方,β-hCGレベルは予後との相関がなかった.これはおそらく高いβ-hCG値を示す腫瘍は予後良好のβ-hCG産生germinoma,すなわちgerminoma with STGCを高率に含んでいることによると思われる.
本研究で,germinomatous GCTではプラチナ製剤ベースの化学療法+放射線治療によって,20年生存が9割以上で達成出来ることを示した意義は大きい.一方で,NGGCTの予後不良群と予後中間群では未だに十分な治療成績が得られていないことも明らかになった.今後,特にNGGCT予後不良群,中でもAFP高値群に対する至適治療法の確立にあたって,化学療法の種類,用量,タイミング(ネオアジュバントかアジュバントか),放射線照射の方法,線量など解決すべき課題は多い.

執筆者: 

有田和徳