主要な脳外科雑誌における二重盲査読制度の導入は女性著者の割合を高めたのか:2010~2019

公開日:

2020年12月29日  

最終更新日:

2021年1月2日

Does double-blind peer review impact gender authorship trends? An evaluation of two leading neurosurgical journals from 2010 to 2019

Author:

Mahajan UV  et al.

Affiliation:

School of Medicine, Case Western Reserve University, Cleveland, Ohio, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33186905]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Nov
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

女性の脳外科医は研究面では過小評価されがちであるが,女性レジデントや専門医の数,発表論文数そのものは増加しつつある.本研究は,①2大脳外科誌(JNSとNeurosurgery)掲載論文における女性著者が占める割合の推移(2010~2019の10年間),②Neurosurgery誌において2011年1月に開始された二重盲査読制度(文献1)が女性著者の論文の割合に与えた影響,③他の変数(女性レジデントや専門医数)の推移と女性著者の論文数の推移との比較を通して,女性脳外科医の研究活動の現状を解析したものである.

【結論】

過去10年間の両誌における女性著者の割合は筆頭13.4%,ラスト6.8%であった.両誌間で女性著者の割合に差はなかった(p=0.29,0.25).Neurosurgery誌における二重盲査読制度の前後で,筆頭,ラストともに女性著者の割合に差はなかった(p=0.066).女性がラスト著者である場合,女性が筆頭著者である割合は2倍になった(OR 2.14,p=0.0001).非招待論文に比較して招待論文では女性筆頭著者の割合は下がった(8.6%対14.1%).ラスト著者の女性の割合は概ね脳外科専門医における女性の割合に一致したが,筆頭著者の割合は脳外科レジデントの女性の割合より低かった.

【評価】

学術論文ピアレビューにおける単一盲査読(single-blind peer review)とは,著者には査読者が誰かわからないが,査読者は著者が誰かわかっていることで,二重盲査読(double-blind peer review)とは著者に査読者が誰かわからない上に,査読者も著者が誰かわからない状態での査読である.著者名,著者の所属施設,所属国家もわからないので,査読に当たって,性,人種,所属,国家などの多様な因子による差別,偏見,予断,意識しないバイアスが排除出来る可能性が高い.二重盲査読制を採用する雑誌に論文を投稿する際には全ての情報が含まれた原稿とは別に著者名,所属,研究実施施設などが抹消された原稿を送る必要性がある.Neurosurgery誌は2011年1月から,この二重盲査読制度を開始した(文献1).
本研究ではNeurosurgery誌に掲載された論文筆頭著者における女性の割合は,2010年は13.0%,2013年は15.4%で差はなかった.ラスト著者における女性の割合は,2010年は5.1%,2013年は9.3%で一見有意差が示されている(p=0.042)ようだが,その後の6年間(2014~2019)は2.5~7.6%にとどまっており,二重盲査読制が女性脳外科医の論文採用の可能性を拡げているわけではないようである.
ラスト著者における女性の割合(7.4%)は脳外科専門医における女性の割合(2019年で6.8%)とほぼ同一である.すなわち研究を指導する女性の割合は専門医の女性の割合とほぼ同一であることが窺える.一方,筆頭著者における女性の割合(14.3%)は脳外科レジデントにおける女性の割合(2018年で23.6%)より少なく,今後,これらの女性レジデントがアカデミックなキャリアーを積んでいけば,女性筆頭著者の割合がもっと増える可能性がある.そのためには,レジデントのうちから彼女らにレベルの高いリサーチトレーニングの機会が与えられる必要性がある.
ちなみに,この研究には米国以外の国の著者もふくまれているが,米国と非米国で女性が筆頭著者である割合に差はなかった(OR 1.057,p=0.5891).
女性がラスト著者である場合,女性が筆頭著者である割合は2倍になっていたというのは興味深いが,他の外科領域の論文でも同じ現象が認められている(文献2,3).男性指導者とは違った女性指導者のロールモデルとしてのユニークな役割を反映しているのかも知れない.
本稿では最後に,一流脳外科雑誌における女性著者を増やすためのいくつかの提言をおこなっているので一読を勧める.また本論文の中でも紹介されているが,日本脳神経外科女医会の創設者であるKato Y氏の提言も併せてお勧めしたい(文献4).
なお,本論文の著者Mahajan UVは,インド系の女性で,現在医学部1年生と思われる.もちろんタイトルはBSであるからどこか理科系の大学学部を卒業している.Mahajan UVは最近,米国におけるCOVID-19感染率,致死率の人種差に関する論文も筆頭著者として発表している(文献5).Twitterには脳外科医志望と記載されており,将来が楽しみな学生である.

執筆者: 

有田和徳