パーキンソン病に対する集束超音波による視床下核破壊術に関するシャム手術対照ランダム化試験

公開日:

2020年12月29日  

Randomized Trial of Focused Ultrasound Subthalamotomy for Parkinson’s Disease

Author:

Martínez‑Fernández R  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, University of Virginia Health System, Charlottesville, Virginia, USA

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ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2020 Dec
巻数:383
開始ページ:2501

【背景】

本態性振戦に対する集束超音波による視床Vim核破壊術は徐々に普及しつつある(文献1,2).一方,視床下核はパーキンソン病に対する脳深部刺激で頻用されるターゲットである.本研究はパーキンソン病に対する集束超音波による視床下核破壊術に関するRCTである.対象は著明な非対称性運動症状を示すパーキンソン病で,薬物で充分にコントロール出来ず,深部刺激の適応でない患者40例.27例で運動症状が強い側(患側)と反対の視床下核の集束超音波による破壊が(実治療群),13例でシャム手術が行われた(対照群).一次アウトカムはオフメディケーションでの患側のMDS-UPDRS運動スコア(III)(高い程悪い)とした.

【結論】

手術前と手術後4ヵ月後MDS-UPDRS IIIスコア中央値は実治療群で19.9と9.9(変化率中央値52.6%),対照群で18.7と17.1であり(変化率中央値4.2%),二群間差は8.1(95% CI,6.0-10.3;p<0.001)であった.実治療群の有害事象はオフメディケーション時のジスキネジア6例(4ヵ月目:3例),オンメディケーション時のジスキネジア6例(1例),患側の筋力低下5例(2例),言語障害15例(3例),顔面筋力低下3例(1例),歩行障害13例(2例).6例では12ヵ月の段階でもこれらの症状が続いていた.

【評価】

このランダム化試験によれば,著明な非対称性運動症状を示すパーキンソン病の患者に対する集束超音波による視床下核破壊はシャム手術群に比較して有意の運動症状の改善をもたらした.MDS-UPDRS IIIスコア上の改善率は中央値52.6%で,臨床的に意義のある30%以上の改善は88.9%で認められた.シャム手術群13例のうち12例もその後のオープンラベル相で実治療(クロスオーバー)を受けたが,効果は同様であった.有害事象として多かったのはジスキネジア,筋力低下,歩行障害,言語障害であり,22.2%では治療後1年の段階でもこれらの症状が続いた.
有害事象で重篤なものが結構多いような印象であるが、著者らによれば,この治療効果と有害事象の頻度は,パーキンソン病に対する定位的な視床下核高周波凝固術と同様であったという.すなわち,本研究はパーキンソン病の患者に対する集束超音波による視床下核破壊術が少なくとも実行可能(feasible)な治療であることを示したということが出来るかも知れない.
本研究の問題点としては,症例数が少ないこと,9割の症例が一施設(スペイン国サンパブロ大学病院)で実施され,評価者が実治療/シャム手術を正確に推定していたこと,追跡期間が短い事などが挙げられる.また,現段階でパーキンソン病に対する手術療法として最も一般的である視床下核への深部電気刺激(DBS)(文献3,4)との比較が行われていない.
さらに,パーキンソン病患者に対する集束超音波による淡蒼球内節の破壊(文献5)との比較,あるいは棲み分けなども今後の課題と考えられる.
なお本邦でも経頭蓋MRIガイド下集束超音波脳深部核破壊術については,2019年6月1日に,薬物治療で十分な効果を得ることのできない本態性振戦に続いて,2020年9月1日に,薬物治療で十分な効果を得ることのできないパーキンソン病に対する振戦及び運動症状緩和を目的とした治療が保険収載されている.厚生労働省の「実施上の留意事項について」によれば,パーキンソン病患者での標的は視床か淡蒼球(脳深部刺激術が不適応の患者に限る)とされており,視床下核は含まれていない(文献6).

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

花谷亮典