髄膜腫における痙攣の予測因子は何か

公開日:

2021年1月10日  

Clinical and genomic factors associated with seizures in meningiomas

Author:

Gupte TP  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, Yale Brain Tumor Center, Smilow Cancer Hospital, New Haven, Connecticut, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33276341]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Dec
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

髄膜腫患者では痙攣は稀ではないが,その誘因,なかでも遺伝子的背景は詳細ではない.エール大学ニューヘブン病院のGupteらは自験の手術症例連続394例を基にこれらの点を検討した.全症例のうち17%が術前に痙攣を伴った.検討した遺伝子変異は既知の髄膜腫のドライバー遺伝子変異NF2,SMARCB1,KLF4,PI3K,HH,RAF7-単独,POLR2Aの7個である(文献1).

【結論】

単変量解析では,術前の痙攣の発生はNF2変異(p=.020),WHOグレード IIかIII(p=.029),異型髄膜腫(p=.004),周囲浮腫(p<.001),腫瘍の脳への浸潤(p=0.009),PFSの短かさ(HR 2.68)と相関していた.多変量解析では,浮腫(OR 3.11,p=0.003)と異型髄膜腫(OR 2.0,p=0.041)が術前痙攣の予測因子であった.術後の痙攣に関しては,多変量解析では,術前痙攣(OR 3.5),再発腫瘍(OR 2.9),放射線照射を要する腫瘍(OR 2.8)が予測因子であった(p<.05).

【評価】

痙攣は髄膜腫ではまれではなく,約30~40%が痙攣を示すとされる(文献2,3).本研究は,連続394例を対象に多様な臨床所見,画像所見,病理所見などと共に既知のドライバー遺伝子変異と術前/術後痙攣発生の相関を解析したものである.
その結果,MRI上の浮腫を伴う腫瘍と異型髄膜腫が痙攣を起こしやすいことが明らかになった.単変量解析では上記以外に非頭蓋底局在(円蓋部局在とほぼ同義)やKi67高値(>5%)が術前痙攣の予測因子であることが判明した.そうだろうねというわかりやすい結果である.
単変量解析で有意のリスク因子であったNF2変異は,多変量でのリスク因子である浮腫と異型髄膜腫を伴いやすく(文献4),このため多変量解析では残らなかった.その他,KLF遺伝子変異は分泌性髄膜腫(secretory meningioma)に特異的で(文献5),分泌性髄膜腫は脳浮腫と痙攣を伴い易いと報告されているが(文献6),本研究ではKLF遺伝子変異と痙攣との相関は認められなかった.
手術後中央値21.1ヵ月間の経過観察期間では16.7%に痙攣が認められている.予測因子としては術前痙攣,再発腫瘍,放射線照射を要する腫瘍が挙がっている.このような患者では,手術後の抗痙攣剤の中止には慎重でなければならないだろう.

執筆者: 

有田和徳