パーキンソン病に対する集束超音波による淡蒼球内節破壊術は安全

公開日:

2021年1月11日  

MR-guided focused ultrasound pallidotomy for Parkinson’s disease: safety and feasibility

Author:

Howard M  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, University of Maryland School of Medicine, Baltimore, Maryland, USA

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ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Nov
巻数:
開始ページ:

【背景】

本態性振戦に対するMRガイド下集束超音波による破壊術は普及しつつあるが(文献1,2),パーキンソン病に対してもその利用がスタートしている.本稿は,メリーランド大学等米国の複数の施設で実施されたパーキンソン病患者に対する一側淡蒼球内節の集束超音波破壊術に関するオープンラベル試験である.対象はL-DOPA反応性パーキンソン病で,ジスキネジアを含む非対称性の運動症状を有し,症状に変動のある患者20例.運動症状が強い側(患側)の反対側淡蒼球内節の破壊術が行われた.

【結論】

トータルUDysRSは治療前の36.1に比べて手術後3ヵ月目は14.2で59%,12ヵ月目は20.5で43%改善していた(ともにp<.0001).オフメディケーション時の患側の運動症状(MDS-UPDRSスコア・パートIII)は治療前の20.0に比べて手術後3ヵ月目は10.6で44.5%,12ヵ月目は10.4で45.2%改善していた(ともにp<.0001).1例は3ヵ月目でUPDRSで有意の悪化を示した.
視野障害,構音障害,認知機能障害,筋力低下といった治療関連有害事象の多くは一過性かつ軽度であり,いずれもFDAが定める重篤な有害事象の範疇にはふくまれなかった.

【評価】

現段階におけるパーキンソン病に対する外科治療の主流は脳深部刺激(DBS)であり(文献3,4),続いてターゲットに刺入したプローブを通した高周波凝固術であるが,出血や感染の可能性は無視出来ない(文献5).
最近パーキンソン病に対する集束超音波による破壊術が導入されつつあるが,その位置付けはまだ確定していない.
本論文と前後してNEJM上で発表されたパーキンソン病患者27例に対する集束超音波による視床下核破壊術では,MDS-UPDRSIII上の改善率中央値は52.6%であるから淡蒼球内節に対するそれと同等であるが,有害事象についてはジスキネジア,麻痺,構音障害,歩行障害などが半数以上の症例で認められ,12ヵ月でも6例で症状が続いていたという(文献6).これに比べれば,有害事象に関してはこの淡蒼球内節破壊術の方が少ないように思われる.著者らも有害事象の頻度と重症度は現在広く普及している本態性振戦に対する集束超音波による視床破壊術と同程度であったと述べている(文献7).著者らは本研究結果を受けて,症状変動を伴うジスキネジアを含む非対称性運動症状を有するパーキンソン病に対する集束超音波淡蒼球内節破壊術は実施可能(feasible)な治療法であることを示しているという.
今後,より多数例を対象として脳深部刺激(淡蒼球内節,視床下核)や視床下核に対する集束超音波破壊術と比較したRCTが実施される必要がある.
なお本邦でも経頭蓋MRIガイド下集束超音波脳深部核破壊術については,2019年6月1日に,薬物治療で十分な効果を得ることのできない本態性振戦に続いて,2020年9月1日に,薬物治療で十分な効果を得ることのできないパーキンソン病に対する振戦及び運動症状緩和を目的とした治療が保険収載されている.厚生労働省の「実施上の留意事項について(保医発0831第1号 令和2年8月31日)」によれば,パーキンソン病患者での標的は視床か淡蒼球(脳深部刺激術が不適応の患者に限る)とされており,視床下核は含まれていない.

執筆者: 

有田和徳