特発性低髄液圧症候群の症状,診断,治療:144文献のメタ解析

公開日:

2021年2月3日  

Clinical Presentation, Investigation Findings, and Treatment Outcomes of Spontaneous Intracranial Hypotension Syndrome: A Systematic Review and Meta-analysis

Author:

D'Antona L  et al.

Affiliation:

Victor Horsley, Department of Neurosurgery, National Hospital for Neurology and Neurosurgery, London, UK

⇒ PubMedで読む[PMID:33393980]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2021 Jan
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

本稿はロンドンの国立脳神経内科・脳神経外科病院のD'Antonaらによる特発性低髄液圧症候群(SIH)の臨床像,検査所見,治療転帰に関するシステマティックレビューとメタアナリシスである.文献はPRISMチェックリストに基づいて検索され,6,878論文から適格な144文献(1論文患者数平均53名)を採用した.

【結論】

最も一般的な症状は起立性頭痛(92%),嘔気(54%),頚部疼痛/こり(43%)であった.頭部MRIにおける硬膜造影は73%で認められ,脊髄MRIにおける硬膜外髄液は48~76%で認められた.髄液漏出部位の検出ではデジタルサブトラクション・ミエログラフィーとガドリニウムMR・ミエログラフィーが最も感度が高かった.腰椎での髄液圧は,低値67%,正常(60~200 mmH2O)32%,高値3%であった.保存的治療(安静と輸液)は28%で,単回の硬膜外ブラッドパッチは64%で有効であった.20 mL以上の大量ブラッドパッチはそれ以下の量よりも有効性が高かった(77 vs. 66%).

【評価】

特発性低髄液圧症候群(SIH)は,頑固な起立性頭痛,嘔気,頚部・項部疼痛等によって患者のQOLを強く障害し,日常生活に大きな影響を与えている.その発生頻度は年間5/100,000人前後で,くも膜下出血の約半分とされるが(文献1),その診断は容易ではなく,見逃されたり,誤診されることも多い(文献2).また,その診断基準も変遷し(文献3,4),新しい診断手技も次々に導入されているため,一般神経内科医や脳外科医にとっては,決して容易に扱える疾患ではない.
著者らは,このSIHに関する過去にない大規模なシステマティックレビューで,未だに未確定な臨床像,検査所見,至適治療についての解明を試みている.
本文中では上記に記載の事実の他,患者年齢は平均42.5歳(95% CI,41.1~43.9)(range 2~88歳)であった.頭部MRI所見では,硬膜造影(73%)に次いで多かったのは,静脈怒張(57%),脳の下垂(43%),下垂体腫大(38%),硬膜下液貯留(35%),正常(19%)であった.漏出ポイントは胸髄41%,頚胸髄移行部25%,頚髄14%,腰髄12%,複数部位24%であったことなども示されている.
著者らはこのレビューの結果をまとめて,SIHには起立性低血圧を示さない例や頭部MRI所見正常例もあること,とりわけ髄液圧が60 mmH2O以上の患者も33%いることから,全ての典型的所見がそろわないからと言ってこの疾患を否定は出来ないと結論している.さらに,臨床的にSIHが疑われる患者では頭部と脊髄の造影MRIをファーストラインの検査として実施すべきで,これらの造影MRIで結論が得られない症例に腰椎穿刺による脳脊髄圧測定が行われるべきと示唆している.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

川原 隆