ステレオEEGとレーザーアブレーションによる島回/帯状回てんかんの治療

公開日:

2021年2月13日  

最終更新日:

2021年2月13日

Intracranial EEG and laser interstitial thermal therapy in MRI-negative insular and/or cingulate epilepsy: case series

Author:

Gireesh ED  et al.

Affiliation:

Epilepsy Center, Neuroscience Institute, AdventHealth, Orlando, Florida, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33307521]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Dec
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

局在関連てんかんの中でも島回や帯状回起始と推定されるものは焦点推定に難渋することが多い.最近,難治性てんかんの焦点検索におけるステレオ脳波検査(sEEG)が普及しつつある.フロリダのアドベントヘルス病院てんかんセンターのチームは,器質病変がなく島回(5例)あるいは帯状回(4例)の焦点が推定される難治性てんかん患者9例に対するsEEGとレーザー組織内温熱治療装置(LITT,NeuroBlate®)の組み合わせによる治療の結果を報告している.てんかん源は従来のvEEGモニタリング,MEG,PET,SPECTに加えてsEEGの所見を基に推定した.1症例当たりのsEEGのコンタクト電極数は98~250個.

【結論】

臨床的なてんかん性放電が記録出来るsEEGのコンタクト電極が確認できれば電極を抜去し,小さな穿頭からモンテリス社製ロボットを用いてLITTファイバー(径3.3 mm)をコンタクト電極があった部位まで進めた.このLITTファイバーを用いて術中MRI温度測定下で脳組織を温熱凝固した.凝固に用いたLITTのトラックは1-3本で,凝固巣の合計体積は島回群で13.2,帯状回群で15.3 cm3であった.術後,エンゲル・クラス1は平均追跡期間1.35年で67%,クラス2は22%であった.島回焦点の1例でLITTの最中に開頭手術を必要とする血腫が生じ,失語や不全麻痺を来したが,約1年で回復した.

【評価】

島回や帯状回は脳の深部に存在する上に,てんかん性興奮は容易に周囲構造や反対脳に拡延するため,頭蓋内電極を用いてもてんかん焦点の同定は困難なことが多い(文献1).最近は,これらのてんかん源に対する焦点検索の手法としてsEEGが普及しつつある(文献2).
本稿は,島回や帯状回にてんかん源が推定される難治性てんかんの9例をsEEGによる発作波の検出とその発作波が検出されたコンタクト電極周囲をレーザー組織内温熱治療装置(LITT)でアブレーションするという戦略で治療した結果である.エンゲル・クラス1は平均追跡期間1.35年で67%,クラス2は22%であった.従来の島回のてんかんに対する外科手術後の術後てんかん消失率は56%から69%と報告されているが(文献3,4),これらの症例の大部分に島回内あるいは隣接した部位に器質病変が存在していた.本稿のシリーズでは全例がMRIで器質的病変がないものであったことを考慮すると特筆すべき治療成績ということが出来る.また,9例中3例では以前にてんかん外科手術(側頭葉切除1例,前頭頭頂皮質切除1例など)が実施されたが,けいれんのコントロールが得られてはいない症例であった.
本研究で使用されたモンテリスメディカル社(ミネソタ)のNeuroBlate®システムは,低侵襲のレーザー組織内温熱治療装置(LITT)で,頭蓋上の小さな孔(4.5 mm)に装着されたミニボルトを通して,MRIガイド下で独自のロボットシステムによって3.3 mm径のオプティック・ファイバーを脳内目標座標に到達させ,MRIによる温度モニター下で腫瘍や脳組織を凝固する装置である.2009年5月にFDAの認可を受けて以来,米国では70以上の医療機関で採用され,脳腫瘍,てんかんなどへの応用が進んでいる(文献5).この他,FDA認可済みのLITTシステムとしてはメドトロニック社(ミネソタ)のVisualase®システムがある(2007年に認可).
2021年2月現在,日本ではいずれのシステムも販売承認の予定はない."
島回は直ぐ外側に中大脳動脈の主要な分枝が,帯状回は直ぐ内側に前大脳動脈が存在するので,レーザーアブレーションによってそれらから分枝した比較的太い動脈が破綻する可能性はあり,実際本シリーズでも9例中1例で1年間にわたる後遺症状を残す出血を経験している.海馬や視床下部過誤腫に対するレーザーアブレーションでも7-8%で出血が認められると報告されており(文献6),レーザーアブレーションが開頭手術よりも安全というわけではなさそうである.sEEGで確定した焦点を改めて顕微鏡下で穿通動脈も直視しながら丁寧に切除するという方法との比較も興味深い.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

飯田幸治