CT搭載移動ストロークユニットの出動は機能予後も改善させる:ベルリンの経験

公開日:

2021年2月13日  

最終更新日:

2021年3月5日

Association Between Dispatch of Mobile Stroke Units and Functional Outcomes Among Patients With Acute Ischemic Stroke in Berlin

Author:

Ebinger M  et al.

Affiliation:

Klinik und Hochschulambulanz für Neurologie, Charité–Universitätsmedizin Berlin, Berlin, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:33528537]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2021 Feb
巻数:325(5)
開始ページ:454

【背景】

ベルリン市は2017年からCTスキャン,血液検査機器,車内tPA投与キットを搭載したストロークユニット車(MSU)の配置を始め,2018年には3台に増やした.脳卒中救急コールがあり,発症後4時間以内で,MSU対応エリア内であれば,MSUに救急隊員,検査技師,神経内科医が乗り込み,最寄り基地の通常救急車と同時に発進した.MSU対応時間外(23時~7時)であったりMSUが既に出動中の場合は通常の救急車のみを発進させた.
シャリテー・ベルリン医科大学のチームは2017年2月から2019年10月までの間で,MSU発進が血栓溶解療法あるいは血栓回収療法の適応となる脳梗塞患者に与えた影響を比較検討した.

【結論】

MSU発進を受けた患者群(749例)では,MSU非発進群(794例)に比較して3ヵ月目のmRSスコアは低く(中央値1 vs. 2),MSU発進がmRSを悪化させる共通オッズ比は0.71であった(p<0.001).
同様に非MSU発進群では3ヵ月目の障害なし-中等度機能障害78.0%,重篤機能障害13.3%,死亡8.8%であったのに対して,MSU発進群では障害なし-中等度機能障害80.3%,重篤機能障害12.6%,死亡7.1%であり,MSU発進が機能予後を悪化させる共通オッズ比は0.73であった(p=0.04).急性期脳梗塞に対するMSU発進は低い機能障害と関連していた.

【評価】

急性期脳梗塞に対する治療の現在のガイドラインでは,できるだけ早いtPA投与が推奨されている(文献1).CTスキャン,血液検査機器,tPA投与キットを搭載した移動ストロークユニット内で急性期脳梗塞の診断と同時にtPAが投与できれば,tPAの治療効果は上がると期待されているが,エビデンスは乏しかった(文献2,3).
このベルリン市のシステムでは,救急要請コールを受けた救急通信指令係が発症4時間以内の急性期脳梗塞であると判断すれば最寄りの基地の通常救急車と同時にMSUを発進させるようにしている.通常救急車の方の現場到着が早ければ,一次応急処置を行っておき,患者の状態が治療適応外,あるいはMSU到着を待つより最寄りの脳卒中センターへ搬入する方が早いと判断すれば,MSUを帰還させる.MSUが到着してtPA投与を含む特殊治療が必要と判断すれば,通常救急車は帰還させるとしている.一方,MSU稼働時間外,すべてのMSUが出動中,患者位置がMSU対応エリア外であれば通常救急車のみを発進させた.
その結果,最終健常確認から救急隊発進まではMSU発進群で中央値36分,MSU非発進群で39分,救急車発進から通常救急車の現場到着までは2群とも8分,発進からMSUの現場到着までの時間は15分であった.発症からtPA投与までの時間中央値はMSU発進群で95分,MSU非発進群で110分(p=0.003),tPA投与までが60分以内であったのはMSU発進群で12.8%,MSU非発進群で4.0%であった.
従来からMSUの現場派遣が急性期脳梗塞患者に対するtPAの投与開始を早めることが報告されてきたが(文献3,4),今回のベルリン市における研究によって,MSUと通常救急車の同時発進が3ヵ月目の機能予後も改善することを明らかにした.
注意すべきは,この研究はRCTでないことで,これはこの時期すでにベルリン市では,急性期脳卒中に対する救急要請コールに際してはMSUの発進がスタンダードケアになっていたことによる.この研究ではMSU発進あるいはMSU非発進の区分はMSUが利用出来る時間とエリアで決まっていたため,性,年齢,合併症,発症前身体機能,初回評価NIHSSなどに差はなかったが,未知の交絡因子が存在する可能性は否定出来ない.
今後,他の大都市圏でのRCTが望まれるし,また当然費用効果の観点からの評価も必要である.

コメント:MSUの最大のメリットはtPA投与までの時間短縮にあるが,それ以外にも役立つ側面がありそうだ.その一つは,tPA投与時点で脳主幹動脈閉塞が疑われた場合に血栓回収術が可能な高度専門施設へダイレクトに搬送できる点である.事前に専門医が得た情報を伝えることが出来るため,病院搬入からカテ室搬入(door to puncture time),さらには発症から再開通までの時間(onset to reperfusion time )が大きく短縮される可能性があり,MSU導入によって得られるメリットはより大きなものになりそうである.また,脳梗塞でなく脳出血であった場合でも,より早期の降圧が可能になり予後の改善につながると思われる.<神田直昭>

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

神田直昭