占拠性病変となった脳梗塞に対する外減圧は有用か:7研究488例のメタアナリシス

公開日:

2021年3月1日  

最終更新日:

2021年3月5日

Surgical Decompression for Space-Occupying Hemispheric Infarction: A Systematic Review and Individual Patient Meta-analysis of Randomized Clinical Trials

Author:

Reinink H  et al.

Affiliation:

Department of Neurology and Neurosurgery, Brain Center, University Medical Center, Utrecht University, Utrecht, the Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:33044488]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2021 Feb
巻数:78(2)
開始ページ:208

【背景】

大きな脳梗塞,特に閉塞血管再開通例では病巣が強い浮腫を示し,間脳・脳幹を圧迫し,生命予後が危ぶまれることがある.これに対して減圧手術が行われることがあるが,そのエビデンスは充分ではない.ユトレヒト大学のReininkは文献例のメタアナリシスでその有効性を検証した.対象はPRISMAガイドラインに基づき採用した7個のRCT(6カ国)の488例で,個別患者データを基にメタアナリシスをおこなった.一次アウトカムは発症1年後の良好な機能予後(mRS≦3).

【結論】

減圧手術は保存的治療群に比較して発症1年後の死亡の可能性を有意に低下させ(調整オッズ比,0.16;95%CI,0.10~0.24),一次アウトカムである良好な機能予後のチャンスを高めた(調整オッズ比,2.95;95%CI,1.55~5.60).減圧手術の一次アウトカムへの貢献は,年齢(≦60歳 or >60歳),性,失語の有無,初診時NIHSSスコア,ランダム化までの時間,閉塞血管領域毎で分けたグループ間でも不均質はなかった.発症後48時間を超えた症例は少なすぎて結論は下せず,60歳を超えた患者への効果に関しては研究間で差が大きかった.

【評価】

中大脳動脈全領域などの大きな梗塞巣に強い浮腫が発生し生命をおびやかすような占拠性病変となることは2~8%と報告されている(文献1,2).このようないわゆる悪性中大脳動脈領域梗塞に対する保存的治療では,死亡率は80%に達するとの報告がある(文献3).これに対する減圧手術のRCTはその有効性を示してはいるが(文献4,5),症例数が少ないため,いくつかの患者群ではその有効性を示せないこともあった.488例の個別患者データを基にしたこのメタアナリシスでは,全対象患者における有効性だけでなく,性,年齢,失語症を含むか,重症度(NIHSS),MCA領域のみかACA領域も含むかなどで分けた各患者群においても有効性に不均等が無いことを示した.このことは,一次アウトカムである良好な機能予後(mRS≦3)だけでなく,mRSの機能予後方向へのシフトについても同様であった(全症例でのオッズ比,4.95;95%CI,2.99~8.20).
すなわち本メタアナリシスは,減圧手術が,占拠性病変となった脳梗塞の幅広い層の患者に有効であることを示したと言える.
ただし,発症から48時間以上を経過した患者や60歳以上の高齢者に関してはもう少しエビデンスの集積が必要なようだ.
もちろん,減圧手術が患者のQOLの向上につながるかどうかも今後明らかにすべき重要な課題である.

<コメント>
本邦では『脳卒中治療ガイドライン2009』で中大脳動脈灌流域を含む一側大脳半球梗塞において,①年齢が18~60歳,②NIHSS scoreが15より高い,③NIHSS scoreの1aが1以上,④CTにて前大脳動脈もしくは後大脳動脈領域の脳梗塞の有無は問わないが中大脳動脈領域の脳梗塞が少なくとも50%以上あるか,拡散強調MRI画像(DWI)にて梗塞範囲が145 cm3以上,⑤症状発現後48時間以内,の適応を満たせば発症48時間以内に硬膜形成を伴う外減圧術がグレードAとして推奨されている.本治療の生命予後の改善には異論のないものの高次機能を含む機能予後の改善については未だ議論のあるところである.本稿でも良好な機能予後を『mRSを3以下』として有効性を示しているが,mRS2以下では有効性を示せていない.mRS2以下が得られた症例において,保存的治療群と減圧手術群で治療前の失語症の有無や重症度等に差が見られなかったのかも興味深い.尚,発症から48時間以上に関しては7個のRCTの内6つは発症から48時間以内を対象症例としていた事,60歳以上の高年齢患者に関しても7個のRCTの内3つが60歳までを対象としており,解析が困難となったものと思われる.(磯部尚幸)

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

磯部尚幸