膠芽腫でもMRI非造影部分におけるT2-FLAIRミスマッチでIDH変異型が診断出来る

公開日:

2021年3月16日  

最終更新日:

2021年3月22日

Fluid attenuation in non-contrast-enhancing tumor (nCET): an MRI Marker for Isocitrate Dehydrogenase (IDH) mutation in Glioblastoma

Author:

Patel SH  et al.

Affiliation:

Department of Radiology and Medical Imaging, University of Virginia Health System, Charlottesville, VA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33661425]

ジャーナル名:J Neurooncol.
発行年月:2021 Mar
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

手術前のMRI所見で膠芽腫におけるIDH変異を予想しようという試みは続いているが,特殊な撮像,画像処理,機械学習(AI)などが必要なものも多く(文献1,2,3),臨床現場での利用は限られている.バージニア大学放射線科のPatelらは,造影されない腫瘍部分(nCET)のT2画像における高信号部分の一部がFLAIR画像で抑制されること(fluid attenuation:FLA in nCET)に注目して,他のルーチンMRIで得られる所見も含めてこの所見のIDH変異予測における意義を検討した.対象は膠芽腫199例で,うちIDH変異は16例(8%).2人の放射線科医が診断実験を行った.

【結論】

診断における検者間一致度(κ値)は腫瘍の造影:0.49,壊死:0.55,FLA in nCET:0.83,多焦点性病変:0.55,腫瘍が存在する脳葉:0.85であった.多変量解析で,IDH変異と相関していたパラメーターとそのオッズ比はFLA in nCET:82.9,年齢(1歳+毎に):0.93,前頭葉:11.08,腫瘍周囲浮腫の厚み:0.15であった.FLA in nCETの検出は検者間一致度が高く,IDH変異と強く相関した.

【評価】

本診断実験では,特殊な撮像法ではなく通常のMRI撮像法における画像所見と膠芽腫のIDH変異との関係を検討したものである.その結果,IDH変異と相関していたのは従来報告されている前頭葉腫瘍,若年,周囲浮腫の薄さ(≦1.1 cm)以外に,著者らが注目していた造影されない腫瘍部分におけるfluid attenuation(FLA in nCET)部分の存在であった.具体的にはT2高信号部分がFLAIRで相対的に低信号に見えることである.このFLA in nCETは検者間一致度が0.83と高く,またオッズ比も82.9に達していた.
Grade II-IIIのdiffuse astrocytomaにおけるT2-FLAIRミスマッチサインは腫瘍辺縁を除いてほぼ全体がT2で高信号であるのにFLAIRでは相対的に低信号になることをさし,IDH変異の強い予測因子である(文献4,5).今回,著者等が注目した膠芽腫におけるfluid attenuation(FLA)とは,必ずしも腫瘍全体でなく,腫瘍の中でも非造影部分(nCET)の一部でのT2-FLAIRミスマッチを指している.
膠芽腫におけるこのミスマッチ部分(FLA in nCET部分)は,のう胞部分であることもあるが実質性の腫瘍であることの方が多い.なお,T2-FLAIRミスマッチは壊死性のう胞でも認められるが,この場合はのう胞周囲に造影リングがある(nCETではない)ことから区別が可能である.
著者らによれば,一般(IDH野生型)の膠芽腫で認められる壊死,高細胞密度,血管増成を伴う腫瘍成分ではT2-FLAIRミスマッチを示さないようである.しかし,本研究ではT2-FLAIRミスマッチ部分とその他の部分を比較した組織学的検討はされておらず,病理学的な背景の解明は今後の課題である.
また,本論文では撮像のパラメーターが記載されていないので,どこの施設でも同じ結果が出るのか疑問が残る.さらに,本研究は,組織学的に膠芽腫と診断された症例を集めて診断実験を行っているが,実際の臨床現場の画像診断ではlow-gradeかhigh-gradeか悩む事は少なくないので,本研究のようにきれいな結果になるのかも気になるところである.
従来IDH変異型膠芽腫の術前診断に有用とされているADC値,腫瘍体積等(文献6)が検討対象となっていないことも本研究の問題点である.今後,これらのバイオマーカーも含めた総合的な解析で,FLA in nCETの意義が再検討されるべきであろう.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

寺田一志