タイプIV血管周囲腔の提案:前部側頭葉や前頭弁蓋部に見られるT2/FLAIR高信号を伴う大きな血管周囲腔

公開日:

2021年3月22日  

最終更新日:

2021年3月23日

Opercular perivascular cysts: A proposed new subtype of dilated perivascular spaces

Author:

McArdle DJT  et al.

Affiliation:

Department of Radiology, Royal Melbourne Hospital, Melbourne, Australia; Faculty of Medicine, Dentistry, and Health Sciences at the University of Melbourne, Parkville, Australia

⇒ PubMedで読む[PMID:31972365]

ジャーナル名:Eur J Radiol.
発行年月:2020 Mar
巻数:124
開始ページ:108838

【背景】

血管周囲腔の拡大は従来,基底核群(タイプI),高位白質群(タイプII),中脳群(タイプIII),その他に分けられてきた(文献1,2,3).しかし,前部側頭葉に認められる大型の血管周囲腔(のう胞)は周囲にT2/FLAIR高信号を伴うなど,以前からその特異性が指摘されてきた.ロイヤルメルボルン大学放射線科のチームは,前部側頭葉の大型血管周囲腔のう胞に,前頭弁蓋部の径3 mm以上の血管周囲腔のう胞を含めてその特徴をまとめた.対象は18例(女性16例)で年齢中央値は53歳.16例は前部側頭葉,2例は前頭弁蓋に存在した.のう胞の最大径中央値は8 mm(3.5~24).

【結論】

全てののう胞内容はADCを含む各種MRIシーケンスにおける信号が脳脊髄液に一致しており,のう胞壁は造影されなかった.15例では周囲脳はT2/FLAIR高信号を示した.全例で中大脳動脈の分枝(17例M2,1例M3)が隣接しており,のう胞を覆う皮質を圧迫してくぼみをつけていた.8例では近接した他の血管周囲腔が認められた.経過観察が行われた13例のうち1例で一過性の増大が認められた.
MCA分枝に隣接する弁蓋部の血管周囲腔のう胞は大型で周囲にT2/FLAIR高信号を伴い,新たなタイプIV血管周囲腔としてまとめられるべきである.

【評価】

日常的にある程度の数の脳MRIを見ている脳外科医なら前部側頭葉に認められる血管周囲腔には大型で周囲にT2/FLAIR高信号を伴うものがあることは知っているはずである.今回のロイヤルメルボルン大学のMcArdleらの提案は,前部側頭葉と前頭弁蓋部を含めた弁蓋部の血管周囲腔(のう胞)をタイプIV血管周囲腔と一括してはどうかという提案である.これらの血管周囲腔(のう胞)には中大脳動脈の分枝が隣接しているのも特徴であるという.のう胞周囲に浮腫状のT2/FLAIR高信号を伴うことがあることから,前部側頭葉の血管周囲腔のう胞の中には摘出手術を受けたものもあるが,何れも組織学的に拡大した血管周囲腔であることが確認されている(文献4,5).
前部側頭葉に認められる血管周囲腔のう胞の成因としては,まがりくねった中大脳動脈の分枝が周囲皮質を圧迫することによって血管周囲腔とくも膜下腔の交通が遮断され,グリンパティック系の構成要素としての血管周囲腔が拡大する機序が想定されている(文献5).同じことは良性脳腫瘍の皮質圧迫によっても起こるらしい(文献5).血管周囲腔のう胞の周囲のT2/FLAIRは一見浮腫に見えるが,組織学的には髄鞘減少,反応性のグリオーシス,微小な多数の血管周囲腔の集合であったと報告されている(文献4,5).
当然,大部分ののう胞は長期観察でも不変か,極く軽度拡大するだけであるが,まれにのう胞とくも膜下腔との交通が出来て自然縮小する例も報告されている(文献6).
臨床的に重要な関心は,1 cm以上の大きさでかつT2/FLAIR高信号を伴っているような場合に,PXA,DNT,diffuse astrocytomaなどの腫瘍性病変との鑑別が可能かどうかである.造影MRI,MRS,PETなども利用しながら丁寧な経過観察を行う事は必須であるが,前部側頭葉を含む弁蓋部には“Leave Me Alone Lesion”であるタイプIV血管周囲腔が存在し得るということを脳外科医が知っておくことが先ず大切である.
著者らが主張するようにタイプIV血管周囲腔が中大脳動脈の主要な分枝による大脳皮質の圧迫との関係で発生するのであれば,このような血管周囲腔の拡大は前部弁蓋(前部側頭葉と前頭弁蓋)のみならず,後部側頭葉(側頭弁蓋)や島回で発生しても良いはずである.これからの症例蓄積を待たなければならないが,もしかするとタイプIV=弁蓋部血管周囲腔はタイプIV=peri-Sylvian血管周囲腔という概念に拡大するかも知れない.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

溝上達也