脳原発悪性リンパ腫の摘出手術は有効か

公開日:

2021年3月22日  

最終更新日:

2021年3月23日

Resection of primary central nervous system lymphoma: impact of patient selection on overall survival

Author:

Schellekes N  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Tel Aviv Medical Center, Tel Aviv, Israel

⇒ PubMedで読む[PMID:33636699]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Feb
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

中枢神経原発リンパ腫(PCNSL)は定位生検で診断が得られ,少なくとも初回の化学・放射線治療の奏功率が高い.さらに腫瘍は多巣性であることが多いので,摘出手術は標準的治療とはなっていない(文献1).一方で,ある条件をみたす患者への摘出手術が生命予後を延長するという報告もある(文献2,3,4).テルアビブ医療センター脳外科チームは2005年から2019年に治療を行った初発PCNSL244例のうち孤立病変113例を対象に摘出術の意義を後方視的に検討した.36例には摘出術(全摘あるいは亜全摘)が行われ,77例には定位的生検術が行われた.

【結論】

多変量解析では,年齢(≧70),深部腫瘍,後頭葉,術後のKPS(≦70),術野感染はOSにとっての有意のリスク因子であった.対象例全体では摘出群は生検群よりOSが良い傾向であったが有意ではなかった(p=.095).しかし表在性腫瘍の場合は摘出群は生検群よりOSが有意に延長していた(p=.014).また、70歳未満で表在性腫瘍の患者では摘出群は生検群よりOSが有意に延長していた(35.0 vs. 8.9ヵ月,p=.007).

【評価】

腫瘍が大きな塊として存在するPCNSLは,化学療法や放射線治療で完全消失しにくく予後不良で(文献5),摘出により体積を減らすことの有効性が示唆されている(文献2,3,4).
本シリーズでは,KPS良好(80~100)が摘出群で86.1%,生検群で53.2%,表在腫瘍が摘出群で52.8%,生検群で32.5%,脳実質外に存在するものが摘出群で22.2%,生検群で2.6%,両側性に進展しやすい脳梁病変が摘出群で0%,生検群で18.2%であるから,元から強い治療バイアスのかかった2群での比較であることには注意が必要である.
しかし,少なくともKPSが良好な比較的若い患者(70歳未満)で,孤発性の腫瘍が脳表近くに存在するPCNSL患者では,摘出術が生命予後を改善させる可能性は高そうである.最近は,ナビゲーション,超音波,術中CT/MRIも普及しているので,これらの手術モダリティーを駆使して摘出率を向上させること,電気生理学的モニタリングを併用して重篤な手術合併症(術後補助療法開始の遅延)を防ぐことで,その有用性はさらに明確になる可能性がある.
やはりRCTが必要であるが,それが困難でも多数例を対象とした傾向スコアマッチを用いた比較は欲しい.
また,本研究では検討項目になっていないが,今後の課題として摘出群における摘出度(全摘,亜全摘,部分摘出)とOSとの関係は知りたいところである.

執筆者: 

平野宏文   

監修者: 

有田和徳