慢性硬膜下血腫に対する中硬膜動脈塞栓術は有効か:傾向スコアマッチングによる検討

公開日:

2021年4月9日  

A propensity-adjusted comparison of middle meningeal artery embolization versus conventional therapy for chronic subdural hematomas

Author:

Joshua S  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Barrow Neurological Institute, St. Joseph's Hospital and Medical Center, Phoenix, Arizona, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33636706]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Feb
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

中硬膜動脈塞栓術は慢性硬膜下血腫に対する有望な治療法として注目されつつあるが(文献1,2,3),その有効性は確立していない.フェニックスBNIの脳外科は自験の慢性硬膜下血腫231例(両側性91例)をレビューして中硬膜動脈塞栓術の有効性を検討した.41血腫が中硬膜動脈塞栓術で,159血腫が保存的に,123血腫が手術的に治療された.性,年齢,神経症状,合併症,抗血栓剤,先行外傷,血腫内の急性/亜急性出血所見,血腫厚を傾向スコア法でマッチングしたのち,3群間の治療不成功率などの差を回帰分析した.

【結論】

傾向スコアマッチング後の比較では,中硬膜動脈塞栓術と比較して,手術と保存的治療は治療不成功(血腫厚>10 mm以上 and/or 外科的救援の必要性)の予測因子であり(OR 12,p=.02とOR 13,p=.01),不完全な血腫吸収の予測因子であった(OR 6.1,p<.001とOR 5.4,p<.001).中硬膜動脈塞栓術群は保存的治療群と比較して血腫厚縮小幅が大きかった(平均-8.3 mm,p<.001).

【評価】

慢性硬膜下血腫の多くは単純な手術で解決することが多いが,手術の合併症や手術後の再発は23~28%に達する(文献4,5).本研究は傾向スコアマッチングの手法を用いて,中硬膜動脈塞栓術群では通常治療(保存的治療あるいは手術)群よりも治療不成功率,不完全な血腫吸収の可能性が低い事を示した.また,有意ではないが,最終追跡時のmRSの悪化は通常治療群より少なかった(3% vs. 10%).治療に伴う合併症は通常治療と同様に低かった(3% vs. 2%).
慢性硬膜下血腫に対する中硬膜動脈塞栓術のRCTの結果がまだ出ていない現段階で,当然出て来るよねと予想されていた傾向スコアマッチングによる従来の治療法との比較データである.ただし,本シリーズでは初発の慢性硬膜下血腫のみならず再発も含んでいること,有症候性で中心線偏位が5 mm以上の患者では原則として手術が行われ,無症候性で血腫厚が8 mm以下では原則として保存的治療が選択されており,治療バイアスは大きく,それが全て傾向スコアマッチングで解消されたとは考えられない.現在進行中のRCTや大規模前向き登録研究に期待したい(文献6,7).

執筆者: 

有田和徳