日本人における “carotid web” の頻度と臨床的意義

公開日:

2021年4月12日  

最終更新日:

2021年4月12日

Prevalence and site of predilection of carotid webs focusing on symptomatic and asymptomatic Japanese patients

Author:

Yang T  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:33668027]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Mar
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

頚動脈球部後面から内腔側への膜状,棚状の隆起であるCarotid web(CW)は1973年にMGHのMomoseらによって初めて命名された(文献1).その塞栓源としてのリスクを指摘する報告もあるが,詳細は不明である.京都大学のYangらは頭頸部のCT血管造影(3D-CTA)が施行された連続444例を対象にCWの頻度と臨床的な意義を検討した.
CWは脳梗塞やTIAによる神経症状を有する132例中で2例(症候性,1.5%),神経症状のない312例中で7例(無症候性,2.2%)発見された.神経症状を有する132例中,CWのない130例を対照群とした.

【結論】

全9例中7例ではCWは頚動脈球の後面に存在し,2例は内頚動脈起始部のやや末梢にあった.無症候性の7例中4例は最低2年間の経過観察期間中無症候性のままであった(他の2例は追跡不能).症候性の2例は抗血小板剤内服にも関わらず脳梗塞やTIAを再発したため,CEAが実施された.
CWを有する9例は対照群に比較して若年(55 vs. 69歳,p=.003)で,男性が少なく(33 vs. 72%,p=.025),動脈硬化リスク因子が少なかった(p<.05).

【評価】

頚動脈球部後壁(内頚動脈分岐部)の非動脈硬化性の膜状,棚状の突出であるCWはintimal fibromuscular hyperplasiaあるいはdysplasiaとも呼ばれ(文献2,3),特に若年者における原因不明の脳梗塞の原因の1つと考えられてきた(文献3,4).ちなみにCW(carotid web)のwebはクモの巣の意味よりは水かきの方の意味で用いられている.CWはアフロカリビアン,コーカシアンなど非アジア人における報告が多く,アジア人での報告は稀であった(文献5,6).本研究は日本における1施設で5年あまりの期間に実施された444例のCT血管造影から導き出した症候性,無症候性CWの疫学である.その頻度は2%(9/444例)であり,過去に報告された非日本人での頻度(1~7%)と同様であった.また,高血圧,糖尿病,高脂血症,冠動脈疾患といった動脈硬化性の背景因子の少ない比較的若年の女性患者に多いというのも既報に一致している.
CWの成因ならびにリスク因子については現在のところ明らかになっていないが,頸動脈分岐部における移行部(TZ)の組織学的な構成の変化(弾性線維主体から平滑筋主体へ),球部後壁における壁ずり応力(WSS)の低下,内皮細胞の機能障害などの関与が推測されている.
症候性の場合は,CWの吻側あるいは尾側での乱流が微小血栓形成の原因となるので,抗血小板剤や抗凝固剤が使用されているが,脳梗塞再発率は高い(文献6).そのようなケースに対するCEAやステントの有用性も報告されているが,質の高いエビデンスはない.
今後,多施設での前向き研究で,より詳細な臨床像,至適な管理指針が明らかになることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

岐浦禎展