C型肝炎治療薬のリバビリンがSHH型とグループ3の髄芽腫に効く:前臨床研究

公開日:

2021年4月16日  

Preclinical efficacy of ribavirin in SHH and group 3 medulloblastoma

Author:

Huq S  et al.

Affiliation:

"Hunterian Neurosurgical Research Laboratory, Department of Neurosurgery, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, Maryland"

⇒ PubMedで読む[PMID:33545678]

ジャーナル名:J Neurosurg Pediatr.
発行年月:2021 Feb
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

髄芽腫のうちSHH(sonic hedgehog)活性型とグループ3(非SHH,非WNT)の増殖には,律速的翻訳開始因子であるeIF4Eと,ヒストンメチル基転移酵素の1つで主要な転写調節因子であるEZH2の活性化が関与している.最近の既存薬再開発(転用)研究によって抗ウィルス薬であるリバビリンがeIF4EとEZH2の活性を抑制することが明らかになっている.本研究はONS-76(primitive SHHモデル)細胞株とD425(aggressiveグループ3モデル)細胞株を用いてin vitroとin vivoでリバビリンの効果を検討したものである.

【結論】

リバビリン投与によって両髄芽腫細胞株の増殖は有意に抑制され,細胞死は有意に増加した.ONS-76細胞株では細胞遊走と浸潤が有意に抑制された.D425頭蓋内埋め込み免疫不全マウスではリバビリン投与が生存期間を有意に延長した(p=.0004).

【評価】

髄芽腫の予後指標は従来の病理形態,年齢,転移の有無,切除範囲などに基づく分類から,分子学的分類(WNT,SHH,Group 3,Group 4)へ移行しており(文献1),現在,前向き試験でのバリデーションが進行中である.今のところWNTは生存予後が良好で,転移のあるグループ3,TP53変異を伴ったSHHグループは超高リスク群に分類されている(文献2).
ドラッグリパーパシング(drug repurposing)はドラッグリポジショニング(drug repositioning),既存薬再開発(転用)とも言われ,ある疾患に有効な既存薬群から,別の疾患に有効な薬効を見つけ出すことである.ドラッグリパーパシングに使われる医薬品は,すでにヒトでの安全性や薬物動態の試験が済んでおり,薬剤の製造方法が確立しているため開発と治験に関わる時間とコストを大幅に低減できる.
リバビリンは1972年にWitkowskiらによって合成された抗ウィルス薬であり,特にRSウィルス下気道感染症,インフルエンザ感染症,ラッサ熱,AIDS,麻疹等などのRNAウィルスに対して幅広い抗ウィルス作用を示す.わが国では2001年にC型慢性肝炎のウィルス血症に対してIFN-2bとの併用が保険適用となっている.最近,リバビリンはeIF4EとEZH2を抑制することが明らかになり,ドラッグリパーパシングの手法を通して,膠芽腫やATRTを含む多くの固形癌,血液癌での有効性と治療薬としての可能性が示唆されてきた.
本研究は,リバビリンがSHHタイプとグループ3の髄芽腫細胞株の増殖の抑制,細胞死の増加,浸潤の抑制をもたらし,髄芽腫細胞マウス頭蓋内移植モデルでの生存期間を延長することを示した.なおマウス頭蓋内移植モデルでのリバビリン1日投与量(腹腔内100 mg/kg)は20 kgの小児における12 mg/kgに匹敵し,小児の亜急性硬化性全脳炎(麻疹ウィルス変異株持続感染)に対する臨床使用の経験から推定される安全許容範囲内の投与量であるという.
既に髄芽腫のグループ3,4に対しては同じくドラッグリポジショニングの手法で強心配糖体のジゴキシンのin vitro,in vivo(マウス)における効果が報告されているが(文献3),未だ臨床試験には至っていないようである.同様に,各種の悪性腫瘍に対するリバビリン投与も三相試験で有効性を示したプロジェクトはなく,ドラッグリパーパシングといえども実用化までには長い道のりが必要そうだ.

執筆者: 

有田和徳