上顎洞の粘膜腫張はびまん性グリオーマ患者に多く,膠芽腫では予後と関係する

公開日:

2021年4月27日  

最終更新日:

2021年4月27日

Mucosal thickening of the maxillary sinus is frequently associated with diffuse glioma patients and correlates with poor survival prognosis of GBM patients: comparative analysis to meningioma patients

Author:

Saito T  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Tokyo Women's Medical University, Tokyo, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:33537891]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2021 Feb
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

東京女子医科大学のSaitoらは以前からグリオーマの患者では上顎洞粘膜の肥厚が多い事に気づいていたという.本研究はグリオーマの患者で本当に上顎洞粘膜の肥厚が多いのかどうか,またその臨床的な意義について検討したものである.対象はびまん性グリオーマ343例(Grade 2~4,このうち128例がgrade 4[膠芽腫]),髄膜腫218例.対照は頭痛でMRIをとったが頭蓋内病変がなかった201例.T2強調MRI上で粘膜厚3 mm以上を粘膜肥厚と評価した(文献1).

【結論】

上顎洞粘膜の肥厚の頻度は,びまん性グリオーマ群で髄膜腫群や対照群より高かった(53% vs. 23%と20%,ともにp<.0001).髄膜腫群は対照群と差がなかった.びまん性グリオーマにおける粘膜肥厚はWHOグレード(膠芽腫で62.5%),MIB-1値と相関した.膠芽腫では粘膜肥厚がある群ではない群に比較してOSは短かった(22.7 vs. 48.5ヵ月,p=.0064).多変量解析では腫瘍摘出度,MGMTの状態,粘膜肥厚が独立したOSの相関因子であった.

【評価】

一般人口でも上顎洞は蝶形骨洞や前頭洞に比較して粘膜肥厚が認められやすいが,本研究では,びまん性グリオーマ患者では髄膜腫患者や一般人口に比較して上顎洞粘膜肥厚の比率が高いこと,悪性度が高いほどその頻度が高く,またこの粘膜の肥厚は膠芽腫患者のOSの短縮因子であることを明らかにした.
著者らはこの結果を受けて,上顎洞粘膜肥厚はびまん性グリオーマの発生や悪性化に非間接的に関与していると推測している.さらに,上顎洞粘膜肥厚は粘膜における免疫応答の抑制の結果であり,抗腫瘍免疫応答の抑制と相関しており,これが上顎洞粘膜肥厚がOS短縮の独立因子である理由であると推測している.
最近,非機能性下垂体腺腫における下垂体卒中例では非卒中例と蝶形骨洞粘膜の細菌叢が異なるとの報告がある(文献2).びまん性グリオーマとコントロール群あるいは髄膜腫群の副鼻腔粘膜細菌叢との違いは気になるところである.もしかすると副鼻腔粘膜細菌叢あるいはウイルス叢をターゲットとした抗菌治療がグリオーマに対する新たな補助療法の一つになるかも知れない.
いずれにしても,上顎洞粘膜肥厚はルーチン検査で得られる画像所見であるので,びまん性グリオーマとの相関については,他のコホートで検証されるべきである.
さらに著者らも述べているように,今回の検討では上顎洞の粘膜肥厚とびまん性グリオーマ発生の直接的な因果関係を証明するデータが得られていない.今後前方視的な研究で,上顎洞粘膜,腫瘍組織各々のサンプルを採取し,TGF-β等の免疫応答関連因子やT cellの性状等の評価を行うことにより,共通する免疫応答の抑制機序を解明できる可能性がある.両者の関係を基礎医学的に証明することで,本研究のインパクトがさらに高まることが期待される.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

齋藤太一