髄膜腫に対する塞栓術は有用性を示していない:34報告1,782例に対するランダム効果モデルを用いたメタアナリシス

公開日:

2021年4月27日  

最終更新日:

2021年4月27日

Does preoperative embolization improve outcomes of meningioma resection? A systematic review and meta-analysis

Author:

Jumah F  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Rutgers-Robert Wood Johnson Medical School & University Hospital, Rutgers-New Jersey Medical School, New Brunswick, NJ, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33723970]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2021 Mar
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

大型あるいは血流豊富な髄膜腫に対する術前塞栓術は出血量を減少させ,腫瘍を軟化させる効果があるとされるが,塞栓に関連した合併症のリスクも4.6~12%と(文献1,2,3),無視出来ない頻度である.術前塞栓術には,こうしたリスクを上回る有用性があるのか.ニュージャージー州ラドガー大学のJumahらは34報告1,782例に対するメタアナリシスを行った.塞栓術が行われた髄膜腫の平均体積は150 cm3,平均径は5.2 cm.

【結論】

直後の合併症率は4.3%であった.報告間の不均質性はかなり大きかった(I2=35~86%).ランダム効果モデルを用いたメタアナリシスでは検討した5項目すべてにおいて非塞栓術群と差は無かった:出血量(平均差13.9 cc),手術時間(平均差2.4分),全摘達成(オッズ比1.07),術後合併症(リスク差0.01),手術後死亡症(リスク差0.01).

【評価】

この結果を受けて著者らは,髄膜種に対する塞栓術は比較的安全に実施可能であるが,手術あるいは手術後の経過に明らかなメリットを示さなかったと結論している.しかし,過去の報告における不均質性と選択バイアスは大きかったと述べている.
実際に検討された5項目における塞栓術の効果をみると,報告によってばらつきが大きく,出血量や手術時間といった単純な指標でもまったく正反対の結果(効果あり,あるいは逆効果)を示すものも多い.これは,髄膜腫塞栓術の基準やガイドラインが存在しないことを反映しているものと思われる.本研究対象のシリーズのいくつかでは,腫瘍径4 cm以上,手術時に血流遮断が最後まで難しいことが予測される,先行手術での大出血,外頸動脈系からの血液供給が50%を超えることなどが適用条件とされている.一方,塞栓術を避けるべき要因としては頭蓋底の腫瘍,手術の早期に栄養動脈の処置が可能,リスキーな外頸動脈-内頸動脈間吻合,脳神経への血流支配,内頸動脈系からの血液供給が50%以上などが挙げられている.
しかし,この研究で採用されたシリーズでの実際の塞栓術実施率は3.6~69.5%で,シリーズ間で適用範囲の違いが大きいことがわかる.頭蓋底の腫瘍については,塞栓術の好対象とする考えとむしろ忌避するという考え方がある.また,外頸動脈系栄養動脈の塞栓術はむしろ内頸動脈系や椎骨脳底動脈系からの血流を増加させるという指摘もある(文献4).塞栓後,摘出手術をいつ行うのかという問題についても,24時間以上開けるというものから,腫瘍が充分に軟化する7日以上たってから行うというものまで様々である.
こうなるとスコアマッチングの出番である.フェニックスBNIのPrzybylowski CJらは2020年発表の研究において,自験の52例の塞栓術実施症例を、701例の非塞栓髄膜腫症例から傾向スコアマッチングで年齢,部位,大きさ,静脈洞浸潤などの交絡因子を調整した52例を抽出して比較している(文献5).その結果,塞栓術群と非塞栓術群では術中出血量,Simpson G4(部分切除),周術期合併症,永続的神経脱落症状の出現,最終追跡時の良好機能予後(機能的自立,mRS:0~2)の何れでも差がなかった(p=0.17~0.7).ただし,手術後のmRSが手術前と比較して改善した患者は,塞栓術群で多かった(50.0% vs. 28.8%;p=0.03)と述べている.
今後,よくコントロールされたランダム化研究で,塞栓術が本当に効果があるのか,あるとすればどのような症例か,またどのような周術期ケアが必要なのかが明らかになることを期待したい.
それまでは,髄膜腫に対する塞栓術は,重大な出血が予想される症例,摘出の早い段階で栄養血管の処置が困難な症例に限定するなど症例を絞って実施された方が良いように思う.

執筆者: 

有田和徳