午前中にEVTが開始された患者の機能予後が良い:ローザンヌ大学とベルン大学1,558例の解析

公開日:

2021年5月10日  

Association of Time of Day When Endovascular Therapy for Stroke Starts and Functional Outcome

Author:

Hajdu SD  et al.

Affiliation:

Department of Interventional and Diagnostic Radiology, University of Lausanne, Lausanne, Switzerland

⇒ PubMedで読む[PMID:33397770]

ジャーナル名:Neurology.
発行年月:2021 Jan
巻数:96(8)
開始ページ:e1124

【背景】

EVT開始(鼠径部穿刺)時間は機能予後と相関するのか.スイスのローザンヌ大学とベルン大学のチームは,2012年から2018年の間にEVTが施行された症例を対象としてこの問題を検討した.EVTが実施された連続1,558例を実際のEVT開始時間によって,朝8時から翌早朝(7時58分)まで早い順番に,ほぼ127例ずつ12個の時間帯に別けた.この12群間で一次アウトカムの90日目のmRSとutility-weighted mRSを比較した.

【結論】

一次アウトカムは午前中の2つの時間帯(8時~10時20分,10時20分~11時34分)でEVTが開始された群が良好で(OR,0.53;p<.001とOR,0.62;p=.006),逆に午後から夕方の2つの時間帯(15時55分~17時15分,18時55分~20時55分)で開始された群が不良であった(OR,1.47;p=.034とOR,1.49;p=.033).
10時20分から11時34分の群では発症からEVTまでの時間が有意に長く,tPAの使用症例が有意に少なかった(p<.004とp=.012).

【評価】

ローザンヌ大学とベルン大学はそれぞれ毎週5~7例のEVTを実施している高次センターである.この2センターで実施されたEVTをその開始時間で12枠に分割したところ,たとえ発症からEVTまでの時間が長くてもtPA投与を受けている患者が少なくても午前に始まったEVTが良好な機能予後をもたらすという結果が得られた.しかも,NIHSS,TOAST,ASPECTSなどの重症度,受け入れ側の標準的なワークフロー(人員など),手技の有効性(mTICIなど)とこの結果との関係はなかったとのことである.これはなにか?
著者らは,午前中のEVT開始群の一次アウトカムが良好な原因として,術者の疲労が少ない事を推測しているが,午前中群とその他の群で完全再開通率,EVT施行(パス)回数,実施時間,症候性頭蓋内出血に差はなかった.午前中受診患者では厳密な発症時間不明(Wake-up stroke)の患者が多いためEVTの適用判断がより厳密で,そのために側副血行が良好で梗塞コアが小さかった可能性はあるかも知れない.残念ながら,今回使用したデータベースからは梗塞コア体積のデータは得られず,このことの証明は出来無かったという.
逆に夕方から夜間のEVT群の機能予後が不良であった原因としては,やはり再通開率,試行回数,頭蓋内出血に差は無かったので,EVT実施医の疲労以外,例えば神経内科医や脳卒中ユニットのスタッフの疲労の可能性も推測されているが証明の術はない.
本研究はワーキングシフト(EVT開始時間)とEVT後の機能予後の関係について光をあてたという点でユニークである.
EVTの出現と普及そして適応範囲の拡大(文献1,2,3,4)は,急性期脳梗塞に対する治療のパラダイムシフトをもたらし,血管内治療医のみならず脳卒中に関わる医師やスタッフの負荷を増加させ,結果として, ある特定の患者集団には充分な恩恵がもたらされていない可能性がある(文献5,6).
こうした観点も含めて,今回の結果を前向き研究で検証する必要性がある.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

岐浦禎展