迷走神経刺激(VNS)が脳梗塞後の上肢麻痺リハビリテーションに効く:108例のRCT

公開日:

2021年5月10日  

Vagus nerve stimulation paired with rehabilitation for upper limb motor function after ischaemic stroke (VNS-REHAB): a randomised, blinded, pivotal, device trial

Author:

Dawson J  et al.

Affiliation:

Institute of Cardiovascular and Medical Sciences, College of Medical, Veterinary and Life Sciences, University of Glasgow, Glasgow, UK

⇒ PubMedで読む[PMID:33894832]

ジャーナル名:Lancet.
発行年月:2021 Apr
巻数:397(10284)
開始ページ:1545

【背景】

迷走神経電気刺激(VNS)は難治性てんかんやうつに対する治療手段として普及しつつあり(文献1,2),既に全世界で10万台以上が埋め込まれている.本研究は脳梗塞後上肢機能障害に対するリハビリテーションにVNSを加えることによる上乗せ効果を検討した3重盲RCTである.米国と英国の19のリハビリテーション施設で実施された.対象は過去9ヵ月-12年間に脳梗塞に罹患した108例で,全員がVNS装置の埋め込み術を受けた.VNS実刺激+リハビリ群は53例,VNSシャム刺激+リハビリ群(対照群)は55例であった.患者は6週間のVNS刺激下での施設リハビリに続いて自宅でのVNS刺激下での機能訓練を行った.

【結論】

施設リハビリ終了翌日のFMA-UEスコアの治療前に対する増加は,VNS実刺激群が対照群に比較して大きかった(5.0 vs. 2.4 ポイント,群間差2.6,95%CI 1.0~4.2,p=.0014).施設リハビリ終了後90日目のFMA-UE機能スコアの臨床的に意義のある改善(改善ポイント>5)の頻度もVNS実刺激群が対照群に比較して大きかった(47 vs. 24%,群間差24%,95%CI 6~41;p=.0098).
WMFTスコアでも同様の結果であった.

【評価】

脳梗塞後上肢機能障害のリハビリテーションに対する迷走神経電気刺激(VNS)の効果に関しては,齧歯類の実験で,VNSが前肢の運動機能を高め,運動皮質のシナプス結合を3倍に高めることが報告されている(文献3).また,ヒトでの2つのパイロットスタディーではVNSがリハビリテーションの効果を高めることが示唆されている(文献4,5).
本研究は脳梗塞後上肢機能障害に対するVNS治療に関する初めてのRCTである.VNS実刺激群はリハビリテーション(6種類の上肢運動繰り返し運動を各30回から50回)中に各運動1回毎にVNS(0.8 mA,100 μs,30 Hz 0.5秒持続)を受けた.VNS刺激群の上肢運動評価スコア(FMA-UEとWMFT)の改善はシャム刺激(0 mA)群と比較して治療開始6週間後に有意に高く,施設リハビリ終了後90日目においてより高い頻度で臨床的に意義のある治療反応が認められた.この結果を受けて著者らは,リハビリテーションに併せたVNSは今後,脳梗塞後の上肢機能障害の治療選択肢になる可能性があると結論している.なお,重篤な有害事象として対照群1例で喉頭麻痺が認められた.
本論文を読んだ率直な感想として, 脳梗塞発症後平均3年あまりも経過した上肢麻痺患者の機能改善にVNSが本当に効くのかという疑問がわく. 本当だとすればどのようなメカニズムなのかを知りたい.さらに,今回のRCTはFMA-UEスコアが20~50点の中等~重症患者が対象であったが,今後はより重症例での効果,また出血例での効果,より長期の効果持続,ADL,QOLに関する研究にも期待したい.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

飯田幸治、片桐匡弥