テモゾロミドは朝飲むのが良い:ワシントン大学(MO,USA)の経験

公開日:

2021年5月10日  

最終更新日:

2021年5月10日

Temozolomide chronotherapy in patients with glioblastoma: a retrospective single-institute study

Author:

Damato AR  et al.

Affiliation:

Division of Public Health Sciences, Department of Surgery, Washington University School of Medicine, St. Louis, MO, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33959716]

ジャーナル名:Neurooncol Adv.
発行年月:2021 Mar
巻数:3(1)
開始ページ:vdab041

【背景】

最近,生体や癌の概日リズムに合わせた投薬スケジュールを作るChronotherapyという概念が登場している.一方,グリオーマ細胞の細胞内シグナルや抗腫瘍剤に対する反応にも概日リズムが存在することが示唆されている(文献1,2).本研究は膠芽腫に対するテモゾロミド内服のタイミングが生存に与える影響を検討したものである.対象はワシントン大学(MO)で9年間に診断された498例の膠芽腫のうち,本研究の対象基準を満たした180例からIDH変異例などを除外した166例とした.テモゾロミドの午前中内服は89例で,午後(夕方)内服は77例.

【結論】

166例のうち午前中内服群のOS中央値は午後内服群より長かったが(1.43 vs. 1.13),KMカーブは3年目でクロスし,95%CIは重なった.ただし1年以内の境界内平均生存期間(RMST)の群間差は有意であった(-0.09,95%CIが-0.16〜-0.018).
MGMTメチル化56症例では午前群でOS中央値が6ヵ月長く,1年と2.5年のRMST差は有意であった.
また全症例で交絡因子を調整したところ午前投与群の優位性は1,2,5年の有意のRMST差によって支持された(いずれもp<.05).

【評価】

なんか難しい統計解析だなあというのが第一印象だが,これは境界内平均生存期間(RMST)という概念を用いていることによる.RMSTは本研究のようにKMカーブが途中で接近したりクロスしたりして比例ハザードが成立しない場合に最近用いられている手法で,ある時間までのKMカーブの下の部分の面積(積分)を2群間で比較するという解析方法である.これによってある期間内での平均生存期間の差がわかる.本研究ではこの方法で,1年以内のRMSTでは午前中にテモゾロミドを服用した群で生存期間が有意に延長していることを証明したという.
さらに性,年齢,摘出度,MGMTプロモーターメチル化,KPS,ステロイドの使用,各種治験への参加,TTF使用などの予測される交絡因子を傾向スコアマッチングで調整後,IPTW(逆確率加重)で重み付けをした後に,2群のRMSTを比較したところ1,2,5年以内において生存期間が有意に延長していたという.
ちなみに,本研究が行われたワシントン大学(MO)では,テモゾロミドの服用時間については午後服用はすべて本論文のコレスポンディングのCampian JLの患者で,午前服用は他の3人の医師の患者であったという.
日本では,テモダールの内服は睡眠前に行うよう指示していることが多いように思う.これは,同剤内服後に倦怠感,嘔気等の副作用が現れることがあり,朝の内服では一日の活動が制限されてしまうこと,逆に睡眠中は悪心に悩まされることは比較的少ないことによる.
テモゾロミドの午前中服用は,たとえ複雑な統計解析であっても,OSで有意差が出るのなら,耐容性やQOLに影響の少ない患者で試してみたい方法である.ただ,患者にこのKMカーブを見せて,「朝飲むのは少ししんどいかも知れませんが,1年以内あるいは2.5年以内という期限つきなら長生きできるチャンスが拡がります」と説得するのはむずかしそうである.
いずれにしても,本研究の結果は是非とも大規模なRCTで検証して欲しい.
比較的少数(40例)での朝服用(10時まで) vs. 夜間服用(20時以降)のRCT(NCT02781792)は現在進行中である(研究終了予定:2022年11月).
またテモゾロミドの午前中服用の早期段階(3年以内)でのメリット,そして遅い段階でのメリットの消失の生物学的背景も知りたいところである.

<コメント1>
本論文の多変量解析に合理性があるかどうかが問題である.単変量解析の項目が恣意的だと,交絡因子を排除できない.
また,午前と午後投与の薬理学的差分の考察が乏しい.(杉山一彦)

<コメント2>
興味深い結果ではあり,可能性として,テモゾロミドを午前中に服用する患者が増えるかもしれない.ただし,本論文には以下の問題がある.①498例中180例をピックアップした理由が書いていない.②統計解析がトリッキーで,生存曲線は最終的に重なっており,臨床上意味のある差が見出せない.本当に効くなら生存曲線は離れたままのはず.③PFSについて触れられていないことが不自然である.④午後投与の患者中でIDH変異が不明は6.5%で大部分はワイルドタイプであるのに,午前投与の患者のIDH変異が不明な患者が37%もいる(実際はIDH変異腫瘍で予後良好な腫瘍が含まれている可能性を否定出来ない).⑤IntroductionやDiscussionが冗長なわりにResultに関した考察に乏しい.(山崎文之)

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

杉山一彦、平野宏文、山崎文之、齋藤太一