リウマチ性疾患患者のくも膜下出血の特徴:長崎くも膜下出血レジストリーから

公開日:

2021年5月22日  

最終更新日:

2021年5月22日

Characteristics of aneurysmal subarachnoid hemorrhage associated with rheumatic disease

Author:

Yamaguchi S  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Nagasaki University School of Medicine, Nagasaki, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:33175266]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2020 Nov
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

最近の研究では動脈壁の炎症所見が脳動脈瘤破裂の危険因子であることが示唆されている(文献1).一方,リウマチ性疾患は動脈硬化と脳卒中の促進因子であることも判っている(文献2).本研究は長崎くも膜下出血レジストリーに登録された2001~2018年に発生したくも膜下出血5,066例を対象に,リウマチ性疾患に罹患している102例(2.0%,91例が女性,年齢中央値69.0歳[57.0~75.5])の特徴を検討した.

【結論】

多変量ロジスティック解析では,リウマチ性疾患に罹患している患者群はそれ以外の患者に比べて,女性が多く(OR 3.38,p<.001),高血圧が少なく(OR 0.60,p=.012),くも膜下出血の家族歴が少なく(OR 0.18,p= .020),小さな破裂動脈瘤(<5 mm)が多く(OR 1.50,p=.048),多発瘤が多かった(OR 1.69,p=.021).

【評価】

動脈瘤の発生・成長・破裂には全身あるいは局所の種々のレベルの炎症が関与していることが示唆されている(文献3,4).本研究はリウマチという全身性の炎症性疾患と動脈瘤の破裂に関する疫学的なデータを住民レベルコホートで提供した点でユニークである.
本コホートにおけるリウマチ性疾患102例の内訳と全くも膜下出血患者における頻度は関節リウマチ70例(1.4%),SLE9例(0.18%),シェグレン症候群7例(0.14%),その他17例であった.一般人口における有病率は関節リウマチ0.6~1.0%,SLE 0.03~0.05%,シェグレン症候群0.05%とされているので,くも膜下出血患者における頻度はこれより高い.
単変量解析では性,高血圧,家族歴,喫煙歴,WFNSグレード,動脈瘤径,多発,治療の種類,症候性スパズムが2群間で差があったが,多変量解析は,リウマチ性疾患に合併したくも膜下出血は家族歴や高血圧は少ないが,女性で多発瘤を有する患者が多く,破裂瘤は小さいものが多いことを示した.こうした事実はリウマチ性疾患に合併したくも膜下出血では一般人口における動脈瘤の発生と破裂とは別の機序を推測させるのに充分である.
今後は,リウマチ性疾患患者を対象とした前向き多施設研究で動脈瘤の発生頻度や破裂リスクの検証を通して,全身的な疾患活動性や動脈瘤壁の炎症所見と増大の関係が明らかにされる事を期待したい.

<コメント>
近年,動脈瘤の発生,成長,破裂に血管の炎症の関与が示され,全身の血管に炎症を来しうる膠原病とくも膜下出血との関連が示唆されてきた.今回,長崎くも膜下出血研究会のデータより膠原病とくも膜下出血の関連性が示された.この研究は疫学的に動脈瘤の発生もしくは破裂と血管の炎症との関与を示し,動脈瘤の発生・破裂機序解明に有用な情報を提供している.ただし,この研究では十分な症例数が得られなかったために,膠原病の単一疾患レベルでのくも膜下出血との関連性に関しては評価できていない.膠原病の中でも,くも膜下出血を起こしやすい疾患や,脳梗塞,脳出血を起こしやすい疾患など,単一疾患レベルでも様々な特徴があるのではないかと考えられる.今後は多施設,前向き研究においてさらなる検討が必要である.(松尾孝之)

執筆者: 

有田和徳