MV-プラス(PLUS)ってなんだ:後頭蓋窩におけるMVNT類似病変

公開日:

2021年5月23日  

最終更新日:

2021年5月23日

Multinodular and Vacuolating Posterior Fossa Lesions of Unknown Significance

Author:

Lecler A  et al.

Affiliation:

Departments of Neuroradiology and Neurology, Fondation Ophtalmologique A. Rothschild, Paris, France

⇒ PubMedで読む[PMID:31558497]

ジャーナル名:AJNR Am J Neuroradiol.
発行年月:2019 Oct
巻数:40(10)
開始ページ:1689

【背景】

MVNTは天幕上の神経系細胞からなる小結節の集蔟という組織学的特徴を有する病変で,2013年にHuseらによって初めて紹介され(文献1),WHO(2016年)脳腫瘍分類でも取り上げられている.その後,後頭蓋窩にもMVNTに類似の病変が発見されている.本報告は欧州のENIGMA[謎]研究グループが塊集した74例のMVNT様病変のうち後頭蓋窩に発生し,MRI上天幕上MVNTと同じ所見を有する11例(平均37歳,女性6例)をMV-PLUSとしてまとめたものである.病変はすべて無症状で,T1強調像で低信号,T2/FLAIR画像で高信号の小結節の集蔟からなっていた.

【結論】

病変はすべて小脳に限局しており,その大多数では病変中心部は小脳虫部にあった.T2/FLAIR画像で低信号を示す中心部ドット・サインが9例(82%)で認められた.病変が小脳皮質に及んでいるものは2例(18%)であった.1例のうち1個の小結節だけが造影効果を示した.DWI,SWI,MRS,PWIではいずれも悪性所見を示さなかった.全例で病変は中央値3年間の経過観察期間内で増大を示さず,摘出手術は行われなかった.MV-PLUSは良性の奇形性病変であり摘出の必要性はないようだ.

【評価】

Multinodular and vacuolating neuronal tumor of the cerebrum(MVNT)は天幕上の皮髄境界部に存在し,てんかんに関係しており,空胞化異型神経系細胞からなる小結節の集蔟という組織学的特徴を有する病変でnon-neurocytic,purely neuronal tumorとして2013年にHuseらによって初めて紹介された(文献1).日本語では大脳多結節空胞状神経細胞腫瘍と訳されている.2017年の33報告例のレビューによれば(文献5),病変は小さく辺縁が明瞭な3~10個以上の小結節(1~5 mm)の集蔟から構成されている.結節の集蔟は深部脳溝を取り巻く皮質リボンの中か皮質下白質の表層に存在している.病変全体の大きさは7~57 mmで,占拠性効果,浮腫,拡散抑制,造影効果は呈さない.各結節はT2,FLAIRで高信号,T1でやや低信号か等信号であった.平均36.8ヵ月(24~144ヵ月)の追跡期間で,いずれも増大を認めなかった.
この腫瘍は,極めて良性の病変と想定されてはいるが,真の新生物なのか,皮質形成異常あるいは過誤腫的な存在なのか明らかにはなっていない(文献6).
本論文は,フランスを中心としたMVNTに関する多施設研究グループENIGMA[謎](EuropeaN Interdisciplinary Group for MVNT Analysis)が塊集した症例の中からテント上MVNTの特徴を有する後頭蓋窩の病変を集め,multinodular and vacuolating posterior fossa lesions of unknown significance(MV-PLUS)と名付けその特徴を明らかにしたものである.画像上の特徴は天幕上のものと違いは無く,またやはり3年間の追跡期間内では増大はなかった.
MV-PLUSと鑑別すべき病態としては,虚血性疾患,多発性硬化症,感染性疾患,血管奇形,中毒,小脳神経節細胞腫(レルミット・ダクロス病),血管周囲腔の拡大など幅広い.
ただ,この報告でユニークなのはMV-PLUSでは径4 mm以上の病変(小結節)の大部分(82%)で中心部ドット・サイン(T2/FLAIRで低信号)が認められたことである.天幕上MVNTでもこの所見は認められているが,その頻度は不明である(文献4,5).この所見は小結節中心部の高蛋白成分あるいは充実性部分を反映している可能性がある(文献1,6).上記の種々の病態とMV-PLUSを鑑別する重要なポイントとなるかも知れない.
MV-PLUSもMVNT同様に “leave-me-alone lesion” であるが,診断のためには高磁場,高分解能MRIを用いthin sliceでのT1,T2,FLAIRでドット・サインを含む特徴的所見を捉える必要性がある.同時に出来ればDWI,SWI,MRS,PWIも行って悪性所見を除外しておく必要性もある.また,病変の大きさや信号の変化がないか,長期の経過観察も行っておいた方が良いように思う.

本論とは関係無いが,研究チーム名のENIGMA,後頭蓋窩病変のMV-PLUSの命名は秀逸である.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

杉山一彦