既存の発作予防薬が効かない片頭痛に対する抗CGRP抗体ガルカネズマブの効果:3b相CONQUER研究

公開日:

2021年6月11日  

最終更新日:

2021年6月11日

Safety and efficacy of galcanezumab in patients for whom previous migraine preventive medication from two to four categories had failed (CONQUER): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3b trial

Author:

Mulleners WM  et al.

Affiliation:

Eli Lilly and Company, Lilly Corporate Center, Indianapolis, IN, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32949542]

ジャーナル名:Lancet Neurol.
発行年月:2020 Oct
巻数:19(10)
開始ページ:814

【背景】

本研究は2021年に日本でも販売開始になった新規片頭痛治療薬の抗CGRP抗体ガルカネズマブ(エムガルティーⓇ)に対する世界12ヵ国64施設で実施された3b相試験の結果である.エピソード性あるいは慢性の片頭痛を有し,2~4剤の予防薬が効果あるいは忍容性の欠如のため継続できなかった462例を1:1でランダム割り当てし,実薬(ガルカネズマブ,120 mg)か偽薬を月に1回,3ヵ月間皮下注した(初回月は2倍投与).過去に使用されていた予防薬は多い順にトピラマート(約7割),アミトリプチリン(約5割),プロプラノロール,バルプロ酸などであった.

【結論】

一次アウトカムである3ヵ月間の片頭痛発作日数は,実薬群ではべースライン13.4日/月に対して治療期間中は4.1日/月減少したが,偽薬群ではその減少は1日/月以下であった(群間差 -3.1日,p<.0001;効果量=0.72).治療による有害事象は実薬群で51%,偽薬群で53%で差はなかった.重症有害事象はいずれも2例(1%)で認められた.実薬で認められた重症有害事象は痔核と扁桃炎の各1例であった.

【評価】

先行する2つの3相試験(文献1,2)によって,既に片頭痛ガルカネズマブの有用性は示されているが,これらの3相試験ではレベルA,Bの効果を示さない3種類以上の片頭痛予防薬やボツリヌス毒素A,B投与を受けていた患者が除外されていた.この3b相CONQUER研究ではボツリヌス毒素を含む2-4剤の片頭痛予防薬に効果を示さないエピソード性あるいは慢性の片頭痛患者を対象とした.この結果,ガルカネズマブの忍容性は良好で,片頭痛発作日数は投与前の13.4日/月から4.1日/月の減少を示した.片頭痛発作日数の減少率は慢性片頭痛患者においてエピソード性片頭痛患者よりも大きかった(いずれもp<.0001).二次アウトカムの片頭痛発作日数が50%以上減少,75%以上減少の割合も偽薬群よりガルカネズマブ群で有意に高かった(いずれもp<.0001).
また治験期間中の急性期治療薬(アセトアミノフェン,トリプタンなど)の使用数においても,片頭痛特異的QOL質問表の役割/機能制限ドメイン(MSQ-RFR)と片頭痛障害評価スコア(MIDAS)においてもガルカネズマブ群は偽薬群に比較して有意差をもってその効果を示した(いずれもp<.0001).さらにこれまでに使用して失敗した発作予防薬の数が多い方により大きな片頭痛発作日数の減少が認められる傾向であった(2剤:-2.0,3剤:-4.1,4剤:-6.1日).
CGRPは,三叉神経節や硬膜上の三叉神経末梢に存在する神経ペプチドであり,過剰に発現すると血管拡張作用や神経原性炎症を介して,片頭痛発作を引き起こす.現在種々の抗CGRP抗体(ガルカネズマブ,フレマネズマブ,エプチネズマブ)や抗CGRP受容体抗体(エレヌマブ)の臨床治験が進行している(文献3).
ガルカネズマブに関しては,これらの3相,3b相試験の結果をみると,同剤が他の発作予防薬で効果不十分な片頭痛患者に対する次の選択肢となることは十分に期待される.
しかし,片頭痛の多くが長期の罹病期間を伴う慢性疾患であることを考慮すれば,3~6ヵ月間の評価で効果と安全性を結論するのは心許なく,血圧や心血管への影響も含めて,今後数年にわたる長期投与の結果が発表されるのを待ちたい.
また,気になるのはガルカネズマブと既存の発作予防薬のhead to headの試験はやったんだろうかという点である.たとえば,他の発作予防薬は効かなかったけれども,トピラマートをまだ使っていない患者に対して,盲検にはならないが,ガルカネズマブ(薬価45,165円/月)とトピラマート(ジェネリックでは薬価3,000円/月以下)でRCTをやったらどうなるんだろうか.
さらに本3b相試験の実薬群で片頭痛発作日数が50%以上低下しなかった患者が62%もいたという事実を考慮すれば,抗CGRP抗体が効かなかった患者に対する他の発作予防薬の選択肢も探求されなければならない.

執筆者: 

有田和徳