脳動静脈奇形に対する定位手術的照射(SRS)前の塞栓術はAVM閉塞の阻害因子か:傾向スコア法でマッチさせた202症例による検討

公開日:

2021年6月12日  

Stereotactic Radiosurgery With Versus Without Embolization for Brain Arteriovenous Malformations

Author:

Chen CJ  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, University of Virginia, Charlottesville, Virginia, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33017465]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2021  Jan
巻数:88(2)
開始ページ:313

【背景】

脳動静脈奇形(AVM)に対する定位手術的照射(SRS)前の塞栓術は照射範囲の縮小や破裂リスク低減のために実施されてきた(文献1,2,3).一方近年,塞栓術によって照射後のAVM閉塞率が低下する可能性が指摘されている(文献4).しかし,これらの主張の根拠となった研究では,塞栓群と非塞栓群でナイダスの大きさなどAVMの性質が異なるという欠陥があった.本研究は北米中心の多施設共同研究で,1987年以降にSRSが施行されたAVM1,258例を対象とした(塞栓術施行は148例).
平均追跡期間約50ヵ月でのAVMの粗閉塞率は塞栓術群で有意に低かった(43.4% vs. 64.0%,p<.001).

【結論】

次に,全1,258例から傾向スコア法で年齢,出血の既往,深部静脈灌流,部位,治療前のナイダス体積,辺縁線量などをマッチさせた症例101例ずつを抽出し比較した.
その結果,3,4,5,6年累積閉塞率はマッチ後の2群間で完全に一致した(サブ・ハザード比[SHR]1.005,p=.981).3,4,5,6年累積の放射線誘発脳変化(RIC)の出現率は塞栓術実施群で低かった(SHR 0.478,p=.004).照射後の出血率,症候性RIC,のう胞形成は2群間で同様であった.塞栓術に伴う合併症の発生率は症候性8.3%,無症候性18.6%であった.

【評価】

塞栓術が定位手術的照射(SRS)後の最終的なAVMの閉塞を阻害するという理由としては
①塞栓術によって部分的に残ったナイダスや散在した(scattering)ナイダスに対する照射線量が不充分となる
②塞栓による虚血や炎症がAVM内の血管新生を促進する
③塞栓部分(embolic cast)によって残存AVMの辺縁が不明瞭になる
④塞栓によって元々コンパクトであったAVMが寸断され不連続になる
⑤塞栓部分が再開通する
⑥Onyxによる塞栓術ではDSA上の偽閉塞が認められる
などの可能性が挙げられている.確かに本研究でも,追跡期間約50ヵ月でのAVMの粗閉塞率は塞栓術群で有意に低い.
しかし,著者らはAVMに対するSRS(そのほとんどはガンマナイフ)の1,000例を超える豊富な経験症例から治療前のナイダスの大きさなど種々の因子について傾向スコア法でマッチングを行い各101例ずつを抽出して比較した結果,AVMの粗閉塞率も年毎の累積閉塞率も塞栓+SRS群とSRS単独群では差が無いことを明らかにした.ちなみにマッチ群におけるナイダスの平均体積は塞栓+SRS群で10.3 mL,SRS単独群で8.6 mLであった(p=.419).
放射線誘発脳変化(RIC)はAVMに対するSRS後6~18ヵ月に約1/3の患者で照射部周囲の脳に出現するT2高信号領域であり,多くは無症状であるが,頭痛,けいれん,神経脱落症状を呈する場合もある(文献5).本研究でRICが塞栓群で低かったのは,注入された塞栓物質自体と塞栓による局所的な虚血が放射線抵抗性を高める可能性を示唆しているという.ただし,この脳保護効果は,塞栓術に伴う合併症のリスクによって相殺される可能性がある.
著者らは本研究の結果は塞栓術がSRSによるAVM閉塞を妨げるかも知れないという一般的な心象に反駁するものであると結論している.一方,本研究結果はAVMの体積を減らすためのネオアジュバント的な塞栓術は支持しないが,ナイダス内か周囲に動脈瘤を有する例あるいはハイフロー・シャントを有する例などハイリスクのAVMに対するターゲット的な塞栓術は正当化するであろうと述べている.

執筆者: 

有田和徳