臨床現場でのCASとCEAの比較:米国の手術症例前向き登録データベース(NSQIP)の84,191例から

公開日:

2021年8月10日  

Early Outcomes After Carotid Endarterectomy and Carotid Artery Stenting: A Propensity-Matched Cohort Analysis

Author:

Sastry RA  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Warren Alpert School of Medicine, Brown University, Providence, Rhode Island, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34320217]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2021 Jul
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

過去のプール解析やRCTではCEAとCASの長期成績はほぼ同等であるが,30日以内の脳梗塞はCAS群で高いことが報告されている(文献1,2,3).リアルワールドでの実態はどうか.ブラウン大学のチームは米国外科学会の手術症例前向き登録データベース(NSQIP)を用いて検討した.対象は2011年から2018年に非緊急で実施されたCAS 2,830例とCEA 81,361例.ロジスティック回帰による傾向スコアを用いてマッチさせた両群2,821例ずつを比較した.

【結論】

CAS群はCEA群に比較して術後30日までの脳卒中(脳梗塞)発生率が高かったが(2.6% vs. 1.5%,OR 1.97,p=.001),心停止率は低く(0.2% vs. 0.6%,OR 0.33,p=.042),30日までの再手術率は低かった(2.5% vs. 4.2%,OR 0.59,p=.006).心筋梗塞,入院期間の延長,自宅以外への退院,30日以内再入院,30日以内再手術,30日以内死亡に差はなかった.

【評価】

本報告はNSQIPを用いた米国のリアルワールドでの頸部血行再建手術の解析である.術後30日までの脳卒中の発生率に関しては,CEA群では2011年から2018年までほぼ一定(1.5~2%)であったのに対して,CAS群では最初の2年間は1.6%で,その後の6年間は2.7%であった.この結果,2群間の比較では従来の報告と同様,CAS群の方が術後30日までの脳卒中発生率が高かったが,他の指標に関してはCASはCEAに対してあまり遜色はないことが示されている.
一方,手術後30日以内の脳卒中,心筋梗塞,心停止,死亡の4項目を合わせた統合転帰はCEA群では2011年から2018年まで約4%で殆ど一定しているのに対して,CAS群では年度毎のバラツキが大きいが,直近の2018年では4%を下回っている.
CEAが殆ど完成された手技であり,片やCASでは未だ多くの術者がラーニングカーブ途上にあり,新規塞栓防止デバイス(EPD)や技術も登場しつつあることを考慮すれば(文献4),今後術後脳卒中の発生率の差は縮まる可能性はある.既に米国における2010~2015年の再入院データベース(NRD)を用いた研究では,周術期脳卒中リスクはCEA群の方がCAS群より高いというデータが出ている(2.6 vs. 1.9%;OR 1.47,p<0.001)(文献5).また,同じくNSQIPを用いた研究ではEPD非使用群では使用群に比較して周術期の脳卒中が有意に多いことが報告されている(6.5 vs. 1.5%,OR=4.48)(文献6).さらに,CREST-2レジストリー(C2R)に登録された,米国の経験豊富(それまでで50例以上,過去1年間で8例以上の経験)なCAS治療医187名が実施した2,219件(2,141症例)の治療結果の解析では,治療後30日間の脳卒中か死亡(S/D)の発生は2%と,従来報告されているRCTの結果に比べればかなり低い(文献7).
今後の大規模な前向き登録研究の結果に注目したい.
ちなみに本論文のonline版(2021年8月アクセス)のAbstractやTable内の症例数には幾つか誤植があるので注意が必要.

執筆者: 

有田和徳