AVM完全摘出後でも長期追跡中の同一部位の出血率は2.4%

公開日:

2021年8月25日  

最終更新日:

2021年8月25日

Hemorrhage Following Complete Arteriovenous Malformation Resection With No Detectable Recurrence: Insights From a 27-Year Registry

Author:

Rapaport S  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, Maryland, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33826718]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2021 Jul
巻数:89(2)
開始ページ:212

【背景】

脳動静脈奇形(AVM)を外科的に完全摘出すればその後の出血は起こらないのか.
ジョンズ・ホプキンズ大学脳外科は自験の前向き登録データを基にこの問題を検討した.1990年から2017年までに治療した619例のAVMのうち,術前塞栓術施行73例や術前定位手術的照射施行(SRS)12例を含めた210例が顕微鏡下摘出術を受けた.これらの症例は平均6.1±3.0(SD)年追跡された.

【結論】

210例中5例(2.4%)が術後平均8.6±9.0年目に病変と同一部位に出血を起こした(術後出血率3.9/1,000人・年).5例全例で出血後の血管撮影によってAVMの再発や新規AVMを含む血管病変がないことが確認された.術後出血例の全例(5/5)が出血発症例で,術後非出血例では54%(110/205)が出血発症例であった(log-rank p=.057).術後非出血例と比較して,術後出血例ではその後mRSは悪化し(p=.005),最終追跡時mRSは有意に高スコアであった(3.0±1.6 vs. 1.5±1.3,p=.031).

【評価】

従来の報告では,塞栓術,定位手術的照射(SRS),あるいは顕微鏡下手術での治療後にAVMの完全消失が画像検査で確認された患者における新規AVMの発生(de novo formation)頻度はAVM消失後4.2年で成人では2.7%,小児では10~14%で,そのうち90%が出血で発症すると報告されている(文献1).またSRSによるAVM完全閉塞後の出血が1~2%の頻度で発生することも報告されている(文献2,3).
しかしこれまで,顕微鏡下でのAVM全摘出後の同一部位の出血に関する報告はなかった.本報告はジョンズ・ホプキンズ大学における27年間のAVMの前向き登録に基づいて,AVM全摘出後に同一部位の出血が約6年間の追跡期間で2.4%の頻度で起こることを明らかにした.このうち1例は術前塞栓術を,他の1例は術前SRSを受けていた.出血例のいずれも,AVMの再発を含めた血管撮影上の異常はなかった.本報告は,AVM全摘後も出血と無縁ではないこと,そして出血が機能予後を大きく悪化させることを示している.
手術によるAVM「完全」消失後の出血の原因について,著者らは血管撮影でも映らないような微小で流速が緩徐な残存AVMの可能性,IL-6やTNFαなどの炎症性サイトカインの多型の関与などを考慮している(文献4,5).
本シリーズの出血例5例では,いずれも手術の適応がなく,このため組織学的な検討は行われていないので,これらの仮説の証明には今後の症例の蓄積を待たなければならない.
摘出腔および周囲の灌流イメージ,T2*,SWIなどのMRI撮像法における経時的な変化が出血の予測に役立つかどうかも今後検討すべき課題のように思われる.
何れにしても,塞栓術やSRSの補助も得ながらAVMを全摘出しても,現段階ではもう大丈夫ですと言うことは出来ないことは,患者・家族へのインフォメーションとして重要である.

執筆者: 

有田和徳