発症6時間以上経過した脳主幹動脈閉塞に対する血管内血栓除去の妥当性:AURORAデータベースの検討

公開日:

2021年8月25日  

最終更新日:

2021年8月25日

Assessment of Optimal Patient Selection for Endovascular Thrombectomy Beyond 6 Hours After Symptom Onset: A Pooled Analysis of the AURORA Database

Author:

Albers GW  et al.

Affiliation:

Department of Neurology and Neurological Sciences, Stanford University, Stanford, CA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34309619]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2021 Jul
巻数:e212319
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【背景】

現在,脳主幹動脈閉塞(LVO)に対する血管内治療(EVT)のゴールデンタイムは発症後6時間であり,それより遅い場合の治療適応判定基準は充分明確にはなっていない.スタンフォード大学のAlbersらは発症後6時間以降のLVOに対するEVTに関する過去の6個のRCTの患者データを基にこの点を検討した.対象患者は505例で,266例はEVT,239例は対照(ベスト薬物治療)へ振り分けられていた.505例中,臨床症状-コア梗塞巣ミスマッチが認められたのは295例(臨床症状ミスマッチ群),灌流低下-コア梗塞巣ミスマッチが認められたのは359例であった(ターゲットミスマッチ群).両方のミスマッチは372例であった.

【結論】

臨床症状ミスマッチ群,ターゲットミスマッチ群ともEVT症例では対照症例に比較して90日目のmRSの低下が認められた(OR,3.57,p<.001,OR,3.13,p=.001).発症-治療開始時間を3つに分けた(6~9.5時間,9.6~12.7時間,12.8~24.0時間)何れの群でもEVTの有用性が認められた.対照症例に対するEVT症例のORが最も高かったのは一番遅い時間帯(12.8~24.0時間)であった(臨床症状ミスマッチ群110例内でのOR,4.95,p<.001,ターゲットミスマッチ群121例内でのOR,5.01,p<.001).

【評価】

本研究は,DAWNやDEFUSE 3を含む過去の6個のRCTのプール患者データベース(AURORA)(文献1,2,3)に基づく解析によって,発症-治療開始時間6~24時間のLVO症例に対するEVTは臨床症状ミスマッチ(clinical mismatch),ターゲットミスマッチ(target perfusion mismatch)の両群ともほぼ同等に有用であることを示した.なお,臨床症状ミスマッチ,灌流ミスマッチともに確定できなかった未確定群132例ではEVTの効果は有意ではなかった(OR,1.59,p=.17).ただし,この群では2つのミスマッチ確定群に比較して症例数が半分以下であり,統計パワー不足の可能性もあるという.
既にDAWN研究では臨床症状ミスマッチを選択基準とした場合,発症-治療開始24時間まで,DEFUSE 3研究ではターゲットミスマッチを選択基準とした場合,発症-治療開始16時間までであれば,EVTが有効であることを示している.本研究は24時間以内であれば,ターゲットミスマッチ基準でもEVTが有用であることを示した.ターゲットミスマッチ症例の方が臨床症状ミスマッチ症例よりも多いこと(本研究では359例 vs. 295例)を考慮すれば,今回明らかになった事実がもつ臨床的な意義は大きく,今後EVT適応が大きく拡大する可能性がある.
本研究結果の中で,特に興味深いのは発症-治療開始時間が最も遅い時間帯(12.8~24.0時間)の患者群でEVTのオッズ比が5前後と最も高かったことである.本論文では,この事実に関する考察は述べられていないが,この時間帯における対照群の機能予後がより悪かったことを反映しているのかも知れない.
我が国のガイドラインでは,最終健常確認時刻から6時間を超えた内頚動脈または中大脳動脈M1部の急性閉塞が原因と考えられる脳梗塞では,神経徴候と画像診断に基づく治療適応判定を行い,最終健常確認時刻から16時間以内(グレードA)あるいは24時間以内(グレードB)に血管内治療(機械的血栓回収療法)を開始することが勧められている(文献4).
今後16時間超えの症例に対するエビデンスが蓄積するにしたがい,16時間超えEVTのエビデンスグレードも上がる可能性が高い.
さらに,従来のRCTよりも大きな虚血巣(ASPECTS of 3-5,MRI-DWI≧50 ccなど)を対象とした国際的なRCT(SELECT 2)の他,潅流画像を適応基準としない発症6~24時間を対象としたオランダにおけるRCT(MR CLEAN-LATE)や発症後8~24時間を対象としたブラジルにおけるRCT(RESILIENT-Extend)も進行中である.今後,時間枠のみならず,病態においてもEVTの対象範囲が拡大する可能性がある.

執筆者: 

有田和徳