Neuroform Atlas Stent補助下の中大脳動脈瘤塞栓術35症例の経験:1年後の閉塞率(RRS1+2)は96.2%

公開日:

2021年9月3日  

最終更新日:

2021年9月3日

Neuroform Atlas Stent for Treatment of Middle Cerebral Artery Aneurysms: 1-Year Outcomes From Neuroform Atlas Stent Pivotal Trial

Author:

Hanel RA  et al.

Affiliation:

Lyerly Neurosurgery, Jacksonville, Fl, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33826707]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2021 Jun
巻数:89(1)
開始ページ:102

【背景】

Stryker社(CA)のNeuroform Atlasステントは,0.0165インチ(内径0.4 mm)のマイクロカテーテルで誘導可能なlow profileの比較的新しい脳動脈瘤コイル塞栓術補助ステントである.本論文はIDE(治験用機器免除,FDA)下で行われた同ステント使用に関する多施設前向きの登録研究(AtlasIDE研究)の結果である.対象は動脈瘤径≧4 mm,ドーム/ネック比<2,母動脈径2.0~4.5 mmの動脈瘤.2015年から2016年にかけて201例の前方循環動脈瘤が登録され,そのうち35例がMCA動脈瘤であった.このうち5例は以前に破裂していた.

【結論】

存在部位はMCA分岐部77.1%,M1部14.3%,M2部8.6%で,平均動脈瘤径6.0±1.8 mm,ネック径4.4±1.2 mmであった.27例ではステントは1本のみ使用,8例では複数のステントをY字型に配置した.全例で塞栓術は技術的問題なく終了した.26例では術後12ヵ月のDSAが実施され,そのうち21例(80.8%)は動脈瘤完全閉塞(RRS1),4例(15.4%)はネック部造影(RRS2)であった.3例で安全性エンドポイントが報告された.何れも患側MCA領域の脳梗塞であった.12ヵ月間での再塞栓術実施は2例(5.7%)であった.死亡は2例であったが何れも治療手技や神経疾患が原因ではなかった.

【評価】

一般に中大脳動脈瘤に対する治療はアクセスのしやすさや不整形の形状に対する対応の柔軟さなどから開頭クリッピング手術が優先されている(文献1).未破裂動脈瘤に対する開頭クリッピング手術による動脈瘤の完全閉塞率は2つのメタアナリシスで約95%という結果が示されている(文献2,3).
一方,中大脳動脈瘤に対する種々のデバイス(ステント,フローダイバーター,フローディスラプター)を用いた血管内治療による動脈瘤の完全閉塞RRS1は,2020年のメタアナリシスでは約60%である(文献2).ステント補助下コイリングに限れば,その長期的な閉塞率は78.9%と90.6%となっている(文献4,5).
本研究で使用された塞栓術補助用Neuroform Atlasステントは,製造元のStryker社によれば,従来のステントに比較して,血管壁への密着性,安定性,操作性に優れており,コイルのTranscellデリバリーも実施しやすいとされている.2017年に我が国でも販売が承認され,添付文書では,「外科的手術(クリッピング術など)又は塞栓コイル単独のコイル塞栓術では治療困難な未破裂脳動脈瘤(最大径が5 mm以上)を有する患者のうち,ワイドネック型(ネック部が4 mm以上又はドーム/ネック比が2未満と定義)脳動脈瘤を有する患者に,コイル塞栓術時のコイル塊の親動脈への突出,逸脱を防ぐ目的のために使用されること」となっている(文献6).
米国25施設が参加している本AtlasIDE研究によれば,35例のMCA動脈瘤に対するNeuroform Atlasステント補助下コイル塞栓術における術後12ヵ月の閉塞率はRRS1と2併せて96.2%と高率であり,治療に関わる死亡はなく,罹患側MCA領域の梗塞が3例で発生している.従来の血管内治療による中大脳動脈瘤の治療と比較すれば,その成績は同等か良いと言えるが,大きさや,形状,年齢などの背景因子がどれほど異なっているのか不明なので,単純比較は出来ない.
この結果をどのように評価し,今後の治療法選択に結びつけていくかは,各施設における開頭クリッピング術の成績と比較して判断することになるが,そのためには抗血小板使用による有害事象の発生も含めた5年,10年という長期フォローの上での評価が必要であると思われる.

<コメント>
脳動脈瘤に対する脳血管内治療におけるデバイスは年単位で改良され,その治療成績も向上している.最新のメタアナリシス(文献1,2)でも1世代以上前のデバイスが使用されている研究が解析対象になっていることが多いので,解析結果には留意しなければいけない.Neuroform Atlasは,Neuroformが2003年に米国で使用されてから5世代目にあたり,本邦では2017年に導入された最新の脳動脈瘤コイル塞栓術補助ステントの一つである.リシースできない弱点はあるが,low profileで末梢到達性にすぐれ,屈曲部での血管密着性も高く(文献6),中大脳動脈瘤には適したステントと思われる.本研究で示されたように,中大脳動脈瘤に対するNeuroform Atlasステント補助下コイル塞栓術で,6.0±1.8 mmの動脈瘤であれば中期的(1年後)な閉塞率が96.2%(RRS1及び2)とクリッピングの報告と比較しても遜色ない閉塞率となっている.中大脳動脈瘤におけるステント補助下コイル塞栓術は,神経学的転帰においてクリッピング術に勝るというメタアナリシスの結果もあり(文献2),無視できない治療方法になってきたと思われる.他の動脈瘤治療デバイスとしてはフローダイバーターとフローディスラプターがあるが,中大脳動脈瘤に関しては現時点ではステント補助下コイリングが閉塞率で勝っている(文献2).ステント使用の欠点として抗血小板剤の長期使用があるが,抗血小板剤の使用を短期間で抑えられるデバイスが開発され,Neuroform Atlasと同等の閉塞率が得られれば,中大脳動脈瘤における血管内治療の適応はさらに広がると思われる.(翠清会梶川病院 溝上達也)

執筆者: 

有田和徳