アスピリン+シロスタゾール vs. クロピドグレル+シロスタゾール,どちらが有用か:CSPS.comのサブ解析

公開日:

2021年9月3日  

最終更新日:

2021年9月3日

Dual Antiplatelet Therapy Using Cilostazol With Aspirin or Clopidogrel: Subanalysis of the CSPS.com Trial

Author:

Hoshino H  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Tokyo Saiseikai Central Hospital, Tokyo, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:34404237]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2021 Aug
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

我が国のCSPS.com研究は,抗血小板剤単剤投与に比較してシロスタゾール併用が出血性合併症の頻度を高める事なしに,脳梗塞の二次予防効果を高めることを明らかにしている(文献1).本報告はCSPS.comのデータを基にシロスタゾール併用の相手としてアスピリンあるいはクロピドグレル,どちらの有用性が高いのかを解析したものである.対象は非心原性虚血性脳卒中患者のうち高リスク患者1,879例.発症後,担当医の判断で763例でアスピリン,1,116例でクロピドグレルの単剤投与が開始された.アスピリン群に比較して,クロピドグレル群では過去の脳梗塞,頭蓋内・外動脈の狭窄などのリスク因子の頻度が高かった.

【結論】

発症8~180日で無作為に,アスピリン単剤投与群のうち383例,クロピドグレル単剤投与群のうち549例にシロスタゾール併用が指定された.
アスピリン群ではシロスタゾール併用は単独投与に比較して虚血性脳卒中の予防効果に有意差はなく(HR,0.569 [95% CI,0.273~1.189],安全性イベント(大出血)にも差はなかった.
クロピドグレル群では,シロスタゾール併用は単独投与に比較して虚血性脳卒中の予防効果は有意に高く(HR,0.447[95% CI,0.258~0.774]),安全性イベントに差はなかった(HR,0.730 [95% CI,0.206~2.588]).

【評価】

アスピリンあるいはクロピドグレルによる抗血小板薬単剤療法(SAPT)に比較して両者による抗血小板薬2剤療法(DAPT)は虚血性脳血管障害の頻度を軽度減らすが,出血性イベントを有意に増加させることは良く知られており,ガイドライン上は虚血性脳血管疾患慢性期患者における2次予防目的でのアスピリン+クロピドグレルのDAPTを避けることが推奨されている(文献2).一方,ホスホジエステラーゼ3の選択的阻害作用を有するシロスタゾールは虚血性脳血管障害を減少し,一方でアスピリンに比較して出血性イベントが少ないことがわかっている(文献3).
この低い出血性イベントに注目して,高リスク虚血性脳卒中患者を対象に我が国の292施設が参加して実施されたCSPS.com研究(2013~2017)は,アスピリン単独あるいはクロピドグレル単独へのシロスタゾール追加(DAPT)が2次予防効果を高めるかを検討したものである.この結果,シロスタゾール併用のDAPTは,アスピリンあるいはクロピドグレル単剤に比較して虚血性脳卒中再発予防効果が高く,出血性イベントは増加しないことを示した(文献1).なお,この研究での高リスクとは,主要な頭蓋内・外動脈の50%以上の狭窄,あるいは二個以上の血管性リスク因子を有する患者とされている.
クロピドグレルはアスピリンより虚血性脳卒中の2次予防効果が高いことが知られているので(文献4),クロピドグレルとシロスタゾールの併用は出血性イベントを増やす事なく,さらに2次予防効果を高める可能性がある.本研究は,クロピドグレルとシロスタゾールの併用の優越性を明らかにするために行われたCSPS.com研究のサブ解析である.本解析の結果,高リスクの非心原性虚血性脳卒中患者において,クロピドグレルとシロスタゾールの併用がクロピドグレル単剤投与に比較して,出血性イベントを増加させる事なしに虚血性脳卒中再発を有意に抑制することが明らかになった.一方,アスピリンとシロスタゾールの併用ではアスピリン単剤投与に対する統計学的な優越性は認められなかった.
この結果を解釈するときに,少し注意が必要なのは,アスピリンかクロピドグレルの選択は担当医の判断に任されていたことで,この結果,アスピリンはよりリスクの少ない患者に投与され,クロピドグレルは頭蓋内・外大血管の狭窄や過去の脳梗塞既往などの再発リスクが高い患者に投与されていたことである.これは,従来からアスピリンに比較してクロピドグレルの方が二次予防効果が高いことが周知されていることを反映しているものと思われる(文献4).実際,本研究でもアスピリン単独群の虚血性脳卒中再発率は3.56/100人・年であるのに対して,クロピドグレル単独群では5.19/100人・年と高かった.シロスタゾール併用によって,クロピドグレル群では2.31/100人・年と虚血性脳卒中再発率は大きく低下したが,アスピリン群でも2.04/100人・年と低下している.アスピリン群で有意差が出なかったのは,症例数と追跡期間(半数が5年以下)によるものかも知れない.
著者らはクロピドグレルとシロスタゾールの併用群で有意差が出た理由のもう一つに,アジア人に多いCYP2C19遺伝子多型によって,クロピドグレル単独投与の患者の中には充分な抗血小板作用が発揮出来ない患者が一定数いた可能性を示唆している(文献5).その他,クロピドグレルとシロスタゾールでは単純相加的な効果増大のみならず,シロスタゾールとの共同作用によるクロピドグレルの作用増強や血管拡張作用なども想定されている.
本研究の結果からは,特にアジア人の高リスクの患者では脳梗塞の2次予防にはクロピドグレル+シロスタゾールの併用が勧められるということになるかも知れない.今後,より多数例を蓄積して,リスクの傾向スコアマッチングをもとにしたアスピリン+シロスタゾールとの比較や,リスクをそろえた患者群に対するクロピドグレル+シロスタゾール vs アスピリン+シロスタゾールのRCTの実施に期待したい.

執筆者: 

有田和徳