High-grade astrocytoma with piloid features(HGAP,WHO2021)とは何か:シャリテー・ベルリン医科大学の6例

公開日:

2021年9月6日  

High-grade astrocytoma with piloid features (HGAP): the Charité experience with a new central nervous system tumor entity

Author:

Bender K  et al.

Affiliation:

Charité ‑ Universitätsmedizin Berlin, Department of Radiation Oncology, Charitéplatz, Berlin, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:33905054]

ジャーナル名:J Neurooncol.
発行年月:2021 May
巻数:153(1)
開始ページ:109

【背景】

High-grade astrocytoma with piloid features(HGAP)は,そのDNAプロファイルが他の小脳グリオーマから独立していることからWHO2021で新たに採用された腫瘍概念である.シャリテー・ベルリン医科大学のチームは自験例をもとにその画像所見,臨床像を明らかにした.同医科大学で2017年から2020年までに診断された成人グリオーマ951例の中からDNAメチル化アレイで診断したHGAPの6例(男性5例)を対象とした.年齢中央値は51歳(44~71).2例がNF-1の病歴を有した.存在部位は脳幹1例,小脳脚1例,中脳-間脳1例,頭頂-後頭葉1例,脊髄2例.

【結論】

腫瘍はT1で低-等信号,T2で高信号で,不均質に造影された.腫瘍周囲浮腫は4例で認められた.壊死が1例で認められたがのう胞はなかった.3例で施行されたDWIでは拡散制限はなかった.6例全例で手術が施行され,組織学的には1例を除いて悪性所見は認められなかった.術後3例で放射線化学療法が,1例で放射線照射が施行された.4例は診断後1.8,9.1,14.8,18.1ヵ月目に死亡し,1例は約1年でドロップアウト,1例は14.6ヵ月で生存.

【評価】

2018年にReinhardtらは組織学的にanaplastic pilocytic astrocytomaと診断された102例のDNAメチル化解析を行い,DNAプロファイルが独立していた83例をHGAPとして報告した(文献1).患者の年齢中央値は41.5歳であった.HGAPは小脳などの後頭蓋窩に発生し,予後は不良で,小脳のIDH野生型膠芽腫より少し良いくらいであった.さらに2019年,Reinhardtらは小脳の膠芽腫と診断されていた86例をDNAメチル化解析で再評価したところ25例がHGAPであった(文献2).
HGAPにはしばしばNF1,BRAF,FGFR1,CDKN2A/B,ATRXの遺伝子変異やMGMTプロモーターのメチル化を伴う.
本シリーズの6例では,病理学的にはgrade II ependymoma様の腫瘍1例と悪性グリオーマの組織像(核分裂像や壊死像)を示す1例以外の4例は,壊死・血管新生・顕著な分裂像などの悪性所見を示さず中等度の多形成を示すグリオーマ系の腫瘍と診断された.結局,HGAPの診断はすべてDNAメチル化解析の結果に基づいている.
HGAPの画像所見は,本シリーズの6例ではT1で低-等信号,T2で高信号,不均一に造影され,のう胞形成はなく,辺縁浮腫は4例に認められ,3例で実施されたDWIでは拡散制限はなかった.いずれも中等度悪性-悪性のグリオーマと大差はなく術前予想は難しそうである.
治療に関しては,HGAPにはMAPK経路の活性化変異を伴うことが多いのでMEK阻害剤の有効性が予想される(文献3).本シリーズでは1例でbinimetinib経口剤(45 mg×2/日)が使用されており,画像上の腫瘍縮小効果は認められなかったが,数ヵ月間は腫瘍はstableであった.今後,多数例を対象に検討されるべき治療方法であるかも知れない.

執筆者: 

有田和徳