上衣下腫の臨床像と治療結果:890症例のメタアナリシス

公開日:

2021年9月21日  

最終更新日:

2021年9月22日

Tumor characteristics and surgical outcomes of intracranial subependymomas: a systematic review and meta-analysis

Author:

Kweh BTS  et al.

Affiliation:

National Trauma Research Institute, Melbourne, Victoria, Australia

⇒ PubMedで読む[PMID:34416731]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Aug
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

上衣下腫はWHOグレード1の良性腫瘍であるが,極めて稀なため,その病態はまだ不明な部分も多い.メルボルンのKwehらは24個の既報,890症例を基にレビューを行った.腫瘍は男性に多く(70%),平均年齢は47±18(SD)歳,発生部位は側脳室が最多(45%)で,第4脳室(43%),モンロー孔,第3脳室が続いた.側脳室内では前角(52%),透明中隔(41%),三角部(10%)の順で,第4脳室では底部(54%),室頂(11%)の順であった.水頭症は67%,腫瘍の石灰化は23%で認められた.68%はMRI-T1で低信号かつT2で高信号で,強い造影効果は37%,のう胞は91%で認められた.

【結論】

708例に手術が行われ,全摘GTR51%,亜全摘STR49%であった.組織学的には純粋な上衣下腫が86%,上衣腫との混合が14%,星細胞腫との混合が0.7%であった.術後死亡と合併症の頻度は3.4%と24.3%であった.平均追跡期間43ヵ月で再発は1.3%であった.原病生存率(上衣下腫による死亡がなかった症例の割合)は3年98.2%,9年97.6%であった(文献1).5年全生存率は89%で,女性で全生存率が高かった(HR 3.15,p=.006).その他,若年者,相対に大きい腫瘍径,GTR例,放射線照射例で全生存率が高い傾向であったが,いずれも統計学的に有意ではなかった(p>.18).

【評価】

本研究は,全頭蓋内腫瘍の1%以下で(文献2),上衣性腫瘍の8%に過ぎないというまれな上衣下腫(subependymoma)に対する過去最大のシステマティック・レビューならびにメタアナリシスである.臨床症状は頭痛が56%と最多で,嘔吐21%,めまい18%と続いている.16%は剖検での偶然発見症例であった.一方,Fujisawaらの報告のように比較的小型の上衣下腫がモンロー孔を閉塞し昏睡状態を引き起こすこともある(文献3)ので,モンロー孔近傍の上衣下腫の経過観察では注意が必要である.
発生部位に関しては,従来第4脳室が最も多い(57%)とされていたが(文献4),このレビューでは側脳室発生と第4脳室発生がほぼ同数であった.
上衣腫(ependymoma)の方は,発生部位や分子変異に基づいて9種類の亜型(タイプ)にわけられているが,上衣下腫に関してはこれまで分子変異の報告は乏しく,TRPS1とPTPN1遺伝子変異の関わりが示唆されているくらいで(文献5,6),その発生にかかわるメカニズムは不明である.かつて,Russellらは上衣下腫の一部は中枢性クリプトコッカス症などの他の疾患に伴い反応性に生じる可能性を推測しているが(文献7),組織学的かつ分子遺伝学的にさらなる検討が必要である.
本腫瘍のindolentな性質はcause-specific survival(原病生存率)が9年で97.6%という数字に表れている.これに比して手術死亡と合併症の頻度は3.4%と24.3%と,軽視出来無いほど高い.ただし,このレビューが古くは80年前からの症例を含んでいることを考慮する必要性があり,内視鏡の導入等による安全性の向上の成果は今後示されるものと思われる.
上衣下腫と組織学的に診断されながら,アグレッシブな進行を示すものの中には,本レビューで14%で認められるとされる上衣腫とのミックス腫瘍があるかも知れないので(文献8,9),組織像の再評価は必要であろう.上衣腫一般と同様に,そのような腫瘍に対する放射線照射は考慮されるべきだが(文献9),その有効性に関しては症例の蓄積が必要である.

執筆者: 

有田和徳