たとえWHOグレード1の髄膜腫でも身体他部位に腫瘍があれば再発しやすい

公開日:

2021年9月29日  

最終更新日:

2021年9月29日

Past medical history of tumors other than meningioma is a negative prognostic factor for tumor recurrence in meningiomas WHO grade I

Author:

Biczok A  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Ludwig-Maximilians-University Munich, Munich, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:33674888]

ジャーナル名:Acta Neurochir (Wien).
発行年月:2021 Oct
巻数:163(10)
開始ページ:2853

【背景】

髄膜腫の再発に関係する最も重要な因子はWHOグレードであるが,WHOグレード1でも約20%に再発が認められる(文献1).WHO1の髄膜腫の再発に相関する様々な要因が指摘されているが,身体他部位の腫瘍(主に癌)の合併はどうだろうか.ミュンヘン大学のBiczokらは,手術で全摘された自験の416例(女性305名)のWHO1髄膜腫を対象にこの点を検討した.平均年齢57歳(21~89).46例では既往歴上で身体他部位に腫瘍があった.内訳は乳癌41%,卵巣癌9%,血液癌4%,腎癌4%,子宮筋腫4%などであった.この46例では近年髄膜腫における再発との関係が指摘されているTERT変異はなかった.

【結論】

身体他部位に腫瘍があった46例と無かった370例では年齢,髄膜腫の部位(円蓋部か頭蓋底部か),核分裂像数に差はなかった.中央値53ヵ月と56ヵ月の経過観察期間での再発は,身体他部位に腫瘍があった群で19.6%,無かった群で9.2%に認められた(p=.034).年齢,性,髄膜腫の発生部位,身体他部位の腫瘍の存在,核分裂像数を対象とした単・多変量解析では性(男),髄膜腫の部位(円蓋部),身体他部位の腫瘍の存在が髄膜腫の再発と有意に相関していたが,多変量解析では身体他部位の腫瘍の存在は再発の最も強い予測因子であった(多変量p=.004,HR=3.1,CI=1.4~6.8).

【評価】

本研究では身体他部位に腫瘍(大部分が癌)が存在する患者では,他の因子とは独立して, WHOグレード1の髄膜腫の再発が多いという事実を指摘しているわけだが,これは何か.
本シリーズでは,女性における乳癌と卵巣癌合併が多かったが,家族性癌の証拠を有した患者はいなかった.著者らはこれらの癌と髄膜腫に共通したエストロゲンレセプターの発現が腫瘍の発生と再発に関連している可能性を示唆しているが(文献2),その根拠は示されていない.
最近,WHO1の髄膜腫の再発に関与する分子遺伝学的背景として,TERT変異,HH変異,TRAF7変異,DNAメチル化プロフィール,ヒストンH3K27me3欠失などが取り挙げられている(文献3,4,5,6).本研究では身体他部位の腫瘍と髄膜腫再発との相関の遺伝学的な背景を明らかにすることは出来ていないが,それをうかがわせる興味深い発見であり,先ずは外部コホートで検証されるべき事実である.

執筆者: 

有田和徳