ペランパネルなど最近の抗けいれん剤5種には自殺関連行為の可能性を高めるというエビデンスはない:17報のメタアナリシス

公開日:

2021年9月29日  

最終更新日:

2021年9月29日

Suicidality Risk of Newer Antiseizure Medications: A Meta-analysis

Author:

Klein P  et al.

Affiliation:

Epilepsy and Sleep Center, Bethesda, New York, New York, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34338718]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2021 Sep
巻数:78(9)
開始ページ:1118

【背景】

2008年にFDAは,それまでに認可していた11種類の抗けいれん剤(ASM)の治験結果の後ろ向き解析に基づいて,全てのASMは自殺傾向(念慮と行動)を高める可能性があると結論した(文献1,2).このため,それ以降に認可された10種類も含めて殆ど全てのASMの添付文書の使用上の注意に自殺に関する警告が掲載されるようになり,これは日本でも例外ではない.
本研究では米国で2008年以降に認可された10種類のASMに関するRCTのうち,自殺関連行為について前向きに調査されていた5種類のASMに関する17のRCTに含まれる5,996名(4,000名が実薬を服用)を対象としてメタアナリシスを行った.

【結論】

薬剤はエスリカルバゼピン,ペランパネル,ブリバラセタム,カンナビジオール,セノバメートで,投与期間は7~19週.自殺念慮は実薬群0.30%,偽薬群0.35%で認められ(p=.74),自殺企図は実薬群0.08%,偽薬群0%で認められた(p=.22). リスク比は0.75(95% CI,0.35~1.60)と0.75(95% CI,0.30~1.87)でいずれも有意ではなかった.自殺達成はともに0症例であった.我が国で市販されているペランパネルに関する4個のRCT1,636例でも自殺念慮,自殺企図ともリスク比は1以下で偽薬群と有意差はなかった.

【評価】

FDAは2005年,抗けいれん剤の製造業者にこれまでのRCTの中から自殺関連事象を報告するよう求めた.この結果,てんかん,精神疾患,疼痛など種々の疾患に対する11種類の抗けいれん剤投与に関する199個のRCT43,892症例が塊集された.そのメタアナリシスを通して,自殺念慮,自殺準備,自殺企図,自殺達成を含む自殺傾向(suicidality)は,偽薬服用群より有意に高く(抗けいれん剤服用群:0.43%,偽薬群:0.24%),そのオッズ比は1.8(95% CI,1.2~2.72)に達することを示した.さらに,そのリスクはてんかん患者に対する治験群で最も高いことも示した(抗けいれん剤服用群:0.34%,偽薬群:0.01%).この解析結果を受けて,FDAはそれ以降に承認した薬剤も含めて抗けいれん剤の添付文書に自殺傾向についての注意喚起の記載を推奨している.このため,明らかなエビデンスが乏しいにもかかわらず,ラコサミド, エスリカルバゼピン,ペランパネル,ブリバラセタムの添付文書では使用上の注意の最初に自殺に関する警告が記載されている.
しかし,このFDAのメタアナリシスに対しては①不均質で後方視的なデータ収集と自殺傾向の定義の欠落,②事後解析の問題,③単剤投与と追加投与の混在,④精神疾患患者など元来自殺リスクが高い集団がてんかん患者と一緒に解析されている,などの問題が指摘されてきた(文献3).
また,このFDAの推奨は,患者の抗けいれん剤服用の意欲を低下させ,服薬遵守率を低下させ,てんかん再発率を高め,結果として外傷やSUDEPを含めた死亡にもつながりかねないとの批判も多い(文献4).
本メタアナリシスは2008年以降にFDAで承認された5種類の抗けいれん薬に関する難治性てんかん患者のみを対象とし,自殺傾向についてのデータ収集が前向きに実施されていた17のRCTを対象としたものである.解析の結果,検討対象とした5種類の薬剤のいずれも,あるいは5種類全体でも自殺傾向を高めるとのエビデンスは得られなかったことを明らかにしている.
この結果を受けて著者らは,少なくともこれらの5種類の薬品は自殺傾向に関する一律の警告に値しないと結論している.
本論文は,てんかん治療の臨床現場での動きに直結する重要な問題提起である.日本国内での製薬メーカー,当該学会等の対応に注目したい.

<コメント> 
FDAによる2008年の報告は,カルバマゼピン,フェルバメート,ガバペンチン,ラモトリジン,レベチラセタム,オキシカルバゼピン,プレガバリン,チアガビン,トピラマート,ゾニサミドの計11種類の薬剤を評価した結果,これらの薬剤では自殺に関連した行動リスクが2倍になると述べている.本論文は,その後発売された10種類の薬剤のうち,ラコサミド,エゾガビン,クロバザム,エベロリムス,フェンフルラミンを除いた,エスリカルバゼピン,ペランパネル,ブリバラセタム,カンナビジオール,セノバメートの5剤について評価している.

てんかんをもつ患者では一般人口と比べて自殺リスクが3倍程度高いとされ,特に精神疾患の合併,中でも抑うつの合併例で高率であると考えられている.世界保健機関(WHO)は2014年に,自殺者の90%が何らかの診断がつく精神障害を有し,最も関連のある精神障害はうつ病とアルコール使用障害であることを報告している.また,精神疾患が重症であれば自殺率が高まるわけではなく,重傷自殺未遂者の約2割は適応障害であったとも報告されている.
こうしたリスクは広く知られており,randomized, double-blind, placebo-controlled studiesとはいえ,精神症状に対するリスクが当初から懸念されていた薬剤では,精神症状を合併する患者やリスクの高そうな患者への使用がはじめから避けられている可能性はある.また,本文でも本研究の限界として挙げられている様に,コントロール不良な精神神経疾患を合併した患者は初めから研究から除外されているため,自殺に対する低リスク群だけでの評価となっている可能性は除外できない.

抗けいれん剤と自殺との関連はいまだ議論のあるところではあるが,少なくとも現段階では直接の因果関係の有無はさておいて,抗けいれん薬服用中の患者では,自殺につながる精神状態についてのリスクには常に注意を払っておく必要がある.
(鹿児島大学てんかんセンター 花谷亮典)

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

花谷亮典