未破裂動脈瘤が経過観察中に増大したらどのくらい危ないのか:トリプルSモデルの提案

公開日:

2021年9月29日  

最終更新日:

2021年9月29日

Risk of Rupture After Intracranial Aneurysm Growth

Author:

van der Kamp LT  et al.

Affiliation:

Department of Neurology and Neurosurgery, University Medical Center Utrecht Brain Center, Utrecht University, the Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:34459846]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2021 Aug
巻数:e212915
開始ページ:

【背景】

動脈瘤径の増大が未破裂動脈瘤の破裂の重要なリスク因子であることは良く知られている(文献1,2,3).では,実際に増大が確認された動脈瘤はどのくらい危ないのか,また特に破裂しやすいリスク因子は何か.本研究は,日本を含む7ヵ国15施設の未破裂動脈瘤コホートの追跡結果の解析である.15コホートの5,166人(6,928瘤)の追跡中に339人の動脈瘤に増大(>1 mm)が確認された.このうち直ちに手術を受けた8例,その日のうちに破裂した6例,追跡不能の13例は解析から除外された.残る312例(女性71%,平均61歳,総動脈瘤数329個)を解析の対象とした.128例はその後に動脈瘤の治療を受けた.

【結論】

864瘤・年の追跡期間で7.6%(25/329)の動脈瘤が中央値1.1年後に破裂した.破裂の絶対リスクは6ヵ月以内2.9%,1年以内4.3%,2年以内6.0%であった.多変量解析では7 mm以上の径(HR:3.1),不整な形状(HR:2.9),部位(ICAに対してMCAのHR:3.55,その他の部位のHR:2.8)が破裂予測因子であった.Size,Shape,SiteのトリプルSモデルによって,増大した動脈瘤の破裂リスクの推計が可能で,1年間の破裂リスクはICAの動脈瘤,7 mm未満,スムーズな形状であれば2.1%であったが,MCAの動脈瘤,7 mm以上,不整形の組み合わせの場合は10.6%に達した.

【評価】

本研究では世界15コホートの動脈瘤の追跡結果に基づいて,サイズの増大が確認された動脈瘤のその後の破裂率は6ヵ月以内2.9%,1年以内4.3%,2年以内6.0%であったことを示した.このことは,増大が確認された動脈瘤の1年間の破裂頻度はPHASES研究で推計された未破裂動脈瘤全体の5年間の破裂頻度(3.4%)を超える事を示している(文献4).
さらに本研究は増大した動脈瘤のうち7 mm以上,不整な形状,ICA以外のものは破裂リスクが高いことを示した.こうしたリスク因子を有する動脈瘤では,年齢や併存疾患に配慮しながら,積極的な治療を考慮してよいかもしれない.一方で,増大動脈瘤でも,7 mm未満,スムーズな形状,ICA動脈瘤ではその後の破裂リスクが比較的小さいので,治療に伴う合併症のリスクをより慎重に見極めなければならないことになる.
注意しなければならないのは対象の312例中184例が中央値0.4年の段階で治療を受けており,治療を受けた動脈瘤は経過観察された動脈瘤に比較して径が大きく,不整形のものが多かったことで,このことが推定破裂率の低下をもたらした可能性は否定出来ない.また,追跡脱落例の中に破裂による突然死も含まれている可能性もある.

<コメント>
本研究は,増大確認後早期に治療された動脈瘤もあり,増大した未破裂脳動脈瘤全ての自然歴の研究ではない.しかし,本研究の強みは,予め論文化された研究計画(文献5)に従って,世界15施設でのプールデータを解析し,これまでのような相対リスクではなく,破裂の絶対リスクを明らかにした点にある.
増大を認めた未破裂脳動脈瘤の1年以内の破裂率は4.3%(25人に1人)で,これを多いととるか少ないととらえるか,著者らは後者のように考えているようであるが,トリプルSや患者背景等を考慮し治療を検討すべきとしている.
部位に関しては,UCAS-JapanではMCAは破裂リスクではなかったが,本研究ではMCAは多変量では有意差はないが,単変量,ログランクテストで有意差があった.一方,Acomは破裂リスクではなく,動脈瘤の存在部位に関しては,未破裂脳動脈瘤全体と増大例では破裂の危険因子は少し異なる可能性がある.
経過観察期間の3点(6ヵ月,1年,2年)で破裂リスクが評価されているが,破裂頻度が観察期間と正比例しない点など,本研究結果には今後の研究に向けたヒントも隠されているように思われる.(島根県立中央病院 井川房夫)

執筆者: 

有田和徳