小児脳動脈瘤の疫学と治療転帰:ジョンズホプキンス大学の47例

公開日:

2021年10月11日  

最終更新日:

2021年10月12日

Epidemiology and outcomes of pediatric intracranial aneurysms: comparison with an adult population in a 30-year, prospective database

Author:

Xu R  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34507296]

ジャーナル名:J Neurosurg Pediatr.
発行年月:2021 Sep
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

小児の脳動脈瘤は全脳動脈瘤の1~2%と稀であり,その疫学や病態は明らかではない.ジョンズホプキンス大学脳外科は過去30年間にわたって前向きに集積された4,500例5,150動脈瘤の中から18歳以下の小児47例53瘤を抽出して,成人4,453例5,097瘤と比較した.くも膜下出血を呈したのは小児53%,成人36%であった.成人では女性が多かったが,小児では少なかった(77 vs 38%).巨大動脈瘤(≧25 mm)の割合は小児では成人より多かった(18.9 vs 2.3%).小児では成人に比較して,内頚動脈海綿静脈洞部,内頚動脈終末部,前大脳動脈,椎骨動脈,後大脳動脈に出来る頻度が高かった.

【結論】

31例が開頭手術(29例がクリッピング)で治療され,15例が血管内治療を,1例が抗生剤投与のみを受けた.最終追跡時(平均65.9ヵ月),mRS≦2の機能予後良好例は85.1%であった.全死亡は5例(10.6%)で,その全てがくも膜下出血症例であった.治療後の再発は開頭手術群で0%(0/31),血管内治療群で6.7%(1/15)であった.追跡期間平均5.5年で動脈瘤の新規発生は認められなかった.

【評価】

本シリーズでは小児例は全脳動脈瘤のちょうど1%を占めていたわけであるが,その臨床像は成人例とはかなり違っていることが示されている.先ず性比であるが,成人の動脈瘤は女性に多い事は周知であるが,小児では男児に多い(文献1,2).また,巨大動脈瘤の割合は成人例の約10倍に達している.このことは,成人の脳動脈瘤が動脈壁の中膜の欠損を基盤として種々の背景因子の影響を受けながら数十年で徐々に発達するものであるのに対して,小児脳動脈瘤は全く別のメカニズムで発生することを示唆している.著者らによれば,小児脳動脈瘤は,やはり男児に多いファロー四徴症,左心室低形成症候群,大動脈縮窄症と同様の先天性の血管奇形と考えることが出来るという.
成人に比較して破裂瘤の割合が高い(53.2 vs 36.4%)ことも,先天的に動脈瘤壁が薄いことを反映しているのかも知れない.また,動脈瘤の発生部位も成人例とは異なり,前交通動脈は少なく,内頚動脈海綿静脈洞部,内頚動脈終末などが多い.
ただし,現在までのところ,小児脳動脈瘤の遺伝的背景あるいは小児脳動脈瘤が好発しやすい併存疾患は明らかではない.
治療方法に関しては,従来の報告シリーズでは100%顕微鏡下手術から100%血管内手術(文献3,4)まで様々な割合である.本シリーズでは30年間全体では58.5%が顕微鏡下手術,28.3%が血管内治療を受けているが,最近15年間では血管内治療を受けた割合が35.3%と微増している.全死亡率は10.6%と高いが,いずれかの治療を受けた患者における最終追跡段階での機能予後良好(mRS≦2)の割合は高く,90.9%であった.
今後,小児の脳動脈瘤においても巨大なものに対してはフローダイバージョンなどの新規テクニックの導入が進むものと予想されるが,現在までのところ,その成績は決して満足すべきものではなさそうである(文献2,5).小児の脳動脈瘤では,今後もバイパス術を含めた顕微鏡下手術と血管内手術の使い分け,そしてその共同が重要であり,両者のエキスパートからなるチームによって管理・治療がなされるべき疾患であると思われる.
なお,小児脳動脈瘤については中国や韓国からは大きなシリーズでの報告があるが(文献6,7,8),日本からの報告はまだない.症例が分散しているためか.遺伝子検索も含めた本邦での共同研究が待たれる.

執筆者: 

有田和徳