片側型もやもや病の反対側進展における遺伝子的ならびに非遺伝子的な背景:SUPRA研究

公開日:

2021年10月11日  

Genetic and nongenetic factors for contralateral progression of unilateral moyamoya disease: the first report from the SUPRA Japan Study Group

Author:

Mineharu Y  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:34507293]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Sep
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

2005年の全国調査では本邦における片側型もやもや病の有病率は0.66/10万人で(文献1),もやもや病全体の約1割の頻度と推定されている.片側型もやもや病から反対側へ(両側もやもや病へ)の進行の頻度やその背景因子は充分に明らかになってはいない.本報告は我が国の15施設が参加する片側型もやもや病の進行と遺伝的要因に関する後方視的患者登録研究(SUPRA Japan)からの第1報である.
片側型もやもや病93例が登録された.このうちRNF213 R4810K遺伝子変異(文献2,3)が認められた67例と認められなかった26例では臨床像に差はなかった.

【結論】

平均72.2ヵ月の観察期間で,93例中23例(24.7%)で反対側に病変が進行した.この23例の全例で反対側の内頚動脈終末部狭窄が認められ,20例ではもやもや血管も出現した.Cox回帰分析ではR4810K変異(HR 4.64,p=.044),小児期発症(HR 7.21,p<.001),男性(HR 2.85,p=.023),連日の飲酒(HR 4.25,p=.034)が反対側への病変進行の独立したリスク因子であった.

【評価】

従来の報告でも,発症時年齢(若い)が反対側への病変進行の予測因子であることが示されているが(文献4,5),本研究では,これに加えてR4810K変異,男性,連日の飲酒も独立した予測因子であることが明らかになった.この4つの因子の中では,R4810K変異の有無が最も強い予測因子で,以下発症時年齢,男性,連日の飲酒の順で続いている.逆にR4810K変異がない症例では反対側への進行は5%のみであった.著者らはこの結果を受けて,片側型もやもや病における反対側への病変進行の予測スコアリングを提案している.これによれば,R4810K変異,小児期発症,男性,連日の飲酒につきそれぞれ1点を与えると,90ヵ月後のPFSは0点で100%,1点で96.5%,2点で60.9%,3点で20.0%になるという.
R4810K変異のホモ(AA),ヘテロ(GA)ではリスクに統計学的な差はなかったが,これはホモが少ない事(n=5)による統計パワーの問題かも知れない.
少し意外であったのは,喫煙はリスク因子としては残らなかった事であるが,これについては考察中では特に言及されていない.一方で,毎日の飲酒が有意のリスク因子であった.これに関しては,アルコールが葉酸を減少させたりホモシスチンを増加させること,あるいはCAV1遺伝子メチル化に影響を与えることによって病態を進行させる可能性を示唆している(文献6,7,8).ただし,本研究ではアルコール摂取量は検討の対象となっておらず,そのメカニズムに関しては推測の域を出ない.
本研究は,片側型もやもや病患者の経過観察ならびに介入に関して重要な視点を提供しており,これらの発見は今後前向き登録で検証されるべきである.また,今回の検討対象とはならなかった脂質代謝異常が反対側への病変進行に影響を与えるか否かは臨床現場にとって重大な関心事であり,今後の研究で明らかにされることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳