ステントリトリーバーとADAPT(直接吸引法)の併用はステントリトリーバー単独に対する優越性を示さず―しかし―:フランスでのRCT(ASTER2)

公開日:

2021年10月11日  

最終更新日:

2021年10月12日

Effect of Thrombectomy With Combined Contact Aspiration and Stent Retriever vs Stent Retriever Alone on Revascularization in Patients With Acute Ischemic Stroke and Large Vessel Occlusion: The ASTER2 Randomized Clinical Trial

Author:

Lapergue B  et al.

Affiliation:

Stroke Center Neurology Division, Hôpital Foch, Suresnes, France

⇒ PubMedで読む[PMID:34581737]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2021 Sep
巻数:326(12)
開始ページ:1158

【背景】

急性期脳梗塞患者に対する血管内血栓除去療法(EVT)では,既にADAPT(直接吸引法)がステント型リトリーバー(SR)による除去に対して非劣性であることが証明されている(文献1,2).本研究はフランスで実施されたADAPTとSRの併用とSR単独を比較したRCTである.対象は発症後8時間以内の前方循環系主幹動脈閉塞患者405例で,203名に併用手技が202名にSR単独手技が割り振られた.両群とも3回まで割り当てられた手技(初期治療)を実施することが求められた.その後,併用群39例とSR単独群54例では術者の判断に基づいて救援治療(非割り当ての手技や血管形成など)が実施されてEVT手技が終了した.

【結論】

主要評価項目はEVT手技終了段階での完全再開通かほぼ完全再開通(eTICI 2c/3)の割合で,数値上は併用群が高かったが有意ではなかった(64.5 vs 57.9%;調整OR 1.33;p=.17).14項目の事前設定副次評価項目のうち12項目でも有意差がなかった.
ただし,初期治療(3回以内の割り当て手技)終了段階での良好な再開通(eTICI 2b50/2c/3)の割合は併用群で有意に高く(86.2 vs 72.3%;調整OR 2.5;p<.001),eTICI 2c/3の割合も併用群で有意に高かった(59.6 vs 49.5%;調整OR 1.52;p<.04).

【評価】

2015年以降に発表された7つのRCTのメタ解析であるHERMES第2解析でも,幅広い重症度かつ種々の画像所見を示す急性期脳梗塞患者に対して,血管内血栓除去療法(EVT)が有用であることを確認している(文献3).これらのRCTでは専らステント型リトリーバー(SR)を用いているが,Turkらによって開発されたADAPT(直接吸引First-Pass Technique)も優れた臨床成績を示してきた(文献4).2017年に公表されたASTER研究,2019年に公表されたCOMPASS研究の結果は,いずれもADAPTがSRに対して非劣性であることを証明した(文献1,2).
一方,ADAPTとSR手技を同時に用いることによる相乗効果によって,EVTによる再開通率がさらに高まる可能性がいくつかの観察研究を通して示唆されてきたが(文献5,6),これまでに両者を直接比較したRCTはなかった.
本試験はフランスにおいて先のASTER研究を主導したLapergue Bらによる408例(このうち3例は研究への同意が得られず脱落)を対象としたRCTである.本試験の結果,主要評価項目である全EVT手技終了段階での完全再開通かほぼ完全再開通(eTICI 2c/3)の割合は2群間で差はなかった(リスク差6.6%,調整OR 1.33;p=.17).
著者らはこの理由を症例数と2群間の差が少ない事による統計パワーの不足かも知れないと推測している.もう一つは,治療プロトコールに初期治療終了後のクロスオーバーも含めた救援治療が認められていた事が影響している可能性がある.実際SR単独群の方が救援治療を受けた症例数は多かった(54例 vs 39例).その結果,事前設定副次評価項目に含まれる初期治療終了段階でのeTICI 2b50/2c/3の割合ならびにeTICI 2c/3の割合は併用群で有意に高かったが,その後の救援治療の結果,その差が縮まった可能性がある.さらに著者らは,SR単独群のeTICI 2c/3達成率が従来の報告よりも高かったことが2群間の差を縮めた可能性を示唆している.
14項目の事前設定副次評価項目のうちその他の12項目には,eTICI 3の達成率,90日後のmRS分布,1年後のQOL(EQ-5D)などが含まれていたが,これらは何れも2群間で有意差がなかった.
ただし,ファーストパスでのeTICI 3達成率を見ると24.1 vs 17.8%(p=.10)と,有意差はないがやはり併用群に分がありそうである.この結果を見て,SRを先行させて,不十分な結果に終わったら,ADAPTあるいは併用に切り替えるよりは,最初から併用手技で開始した方が良いのではないかと考える血管内治療医は増えて来そうである.
今後,他の研究グループでのRCTも行われるであろうから,将来のメタアナリシスで主要評価項目での有意差が出るかも知れない.いずれにしても,より大口径の血栓吸引カテーテルの開発と普及(文献7)あるいは血栓の性状に特化したSRの開発も進んでいるようなので,急性期脳主幹動脈閉塞に対するEVTは今後さらに進化する可能性がある.

執筆者: 

有田和徳