脳出血後の抗血小板剤投与は正当化されるか:英国におけるRCT(RESTART)その後

公開日:

2021年10月20日  

最終更新日:

2021年10月20日

Effects of Antiplatelet Therapy After Stroke Caused by Intracerebral Hemorrhage: Extended Follow-up of the RESTART Randomized Clinical Trial

Author:

Salman RA  et al.

Affiliation:

Centre for Clinical Brain Sciences, University of Edinburgh, Edinburgh, United Kingom

⇒ PubMedで読む[PMID:34477823]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2021 Oct
巻数:78(10)
開始ページ:1179

【背景】

RESTART研究は,抗血栓剤服用中に脳内出血を生じた患者における,その後の抗血小板剤投与が脳内出血再発に及ぼす影響を明らかにするために英国122病院で実施されたRCTである(文献1).出血発症後中央値76日に,268例には抗血小板剤が開始され,269例は抗血小板剤を避けるように割り付けられた.2019年に発表された中央値2年間の追跡結果では,抗血小板剤投与群では,非投与群に比較して,脳内出血の再発の発生数は数値上は少なく,調整ハザード比(AHR)は0.5(4 vs 9%,p=.060)であった.本論文は追跡期間を延長した中央値3年間(IQR:2~5年)での結果である.

【結論】

主要評価項目の脳内出血の再発は抗血小板剤投与群で8.2%,非投与群で9.3%,AHRは0.87であった(p=.64).主要な血管性イベントの発生は抗血小板剤投与群で26.8%,非投与群で32.5%,HRは0.79であった(p=.14).大出血イベントの発生も11.9%と11.2%で2群間に差はなかった(p=.79).
この結果は,脳内出血後の患者における血管性イベントの二次予防のための抗血小板剤投与に関して安心感を与えるものである.

【評価】

2019年,コーネル大学のMurthy SBらは,脳内出血に関する3つの登録研究(MGH:1,854例,VISTA-ICH:762例,Yale:185例)の合計2,801例の患者個別データを基にして,脳出血後の抗血小板剤投与(再投与+新規投与)が生存と機能予後に与える影響を検討し発表している(文献2,3,4).これによれば,抗血小板剤投与は非投与に比較して死亡率,機能予後不良の頻度を高めないことが明らかになった.
一方,2018年に発表された米国のERICH研究(多施設後方視)では,抗血小板剤使用群の方が非使用群に比較して,3ヵ月目の機能予後良好群(mRS:0~2)の割合が小さかった(36.5 vs 40.8%,p=.021)が,傾向スコアマッチングでは2群間に差は無かった(35.5 vs 43.9%,p=.105)(文献5).
以上はいずれも観察研究の結果であったが,本RESTART研究は脳内出血後の抗血小板剤投与再開に関する唯一のRCTである.前報告からある程度予想された結果であるが,追跡期間を延長しても脳出血後の患者における二次予防目的での抗血小板剤の投与は脳内出血や大出血イベントの発生を増やさなかった.
一方,主要な血管性イベントの発生は抗血小板剤投与群で少なかったが,有意差はなかった.
本RESTART研究によって脳内出血後の患者における抗血小板剤の投与が安全であることはわかったが,本来の目的である主要な血管性イベントの発生や血管閉塞性イベントを抑制する効果があるのかに関してはより大規模なRCTによらなけらばならないであろう.また,脳内出血の部位, マイクロブリーズの数, 患者の背景因子などによってその後の抗血小板剤の投与のリスクあるいはベネフィットが異なるのかも検討課題である.さらに本研究では脳内出血発症後中央値76日で抗血小板剤の投与が開始されているが,どのタイミングがベストなのかも解決しなければならない問題である.

執筆者: 

有田和徳