造影MRIにおける髄膜腫表面のデコボコを数値化すればグレード2~3が予測出来る:サーフェイスファクター(SF)の提案

公開日:

2021年11月8日  

The meningioma surface factor: a novel approach to quantify shape irregularity on preoperative imaging and its correlation with WHO grade

Author:

Popadic B  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University Hospital St. Poelten, Karl Landsteiner University of Health Sciences, Krems, Austria

⇒ PubMedで読む[PMID:34624861]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Oct
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

退形成性髄膜腫WHOグレード2と異形髄膜腫グレード3は併せて髄膜腫全体の約2割を占める(文献1,2).グレード1の平滑な表面とは異なり,グレード2~3の髄膜腫は不規則な表面形状をしており,この形状は術前MRIに基づく髄膜腫グレーディングの予測に役立つことが報告されている(文献2,3,4).しかしこれまで,不規則な表面形状の判断は,観察者の主観に委ねられており,客観的な指標は存在しなかった.
オーストリア・カール・ラントシュタイナー大学脳外科などによるチームは術前MRIにおける表面不整を反映するSurface Factor(SF)を考案し,自験の髄膜腫126例を対象として,その有用性を評価した.

【結論】

SF=[腫瘍と同一体積の球の表面積/実際の腫瘍の表面積]で算出され,不整な表面形状ほどSF値は低くなった.表面積計算にはフリーソフトの3D Slicerを用いた.グレード1の76例とグレード2~3の50例のSF値には有意差があった(0.851 vs 0.788,p<.001).
性,年齢,大きさ,表面積,SF,発生部位を想定予測因子として実施した多変量回帰解析では,SFだけがグレード2~3の予測因子であった(OR 0.000009,p=.020).

【評価】

本研究は,髄膜腫の表面積をフリーソフトの3D Slicer(version 4.10.2;https://www.slicer.org)で測定しSFを算出することで,従来主観的な判断に頼っていた髄膜腫の表面形状を客観的な数値で表現してWHOグレードとの関係を求めたものである.その結果,低いSFがグレード2~3の強い予測因子であることが明らかになったという単純で明快な結論である.また脳浸潤を伴う腫瘍では脳浸潤がない腫瘍よりもSFが有意に低いことも明らかにしている(OR 0.00127,p=.023).さらにROC解析ではAUCは0.713でSF0.8以下をカットオフにするとグレード2~3診断の感度は52%で陽性的中率は70.3%であった.
外部コホートで検証されるべき重要な発見だと思われるが,気になるのは,本研究ではADC値,T2値,周囲浮腫,灌流画像,MRSなど他のMRIパラメーターが検討の対象となっていないことで,今後の検証ではこうしたパラメーターとの比較あるいはコンビネーションの意義についても検討すべきであろう.
ちなみに本研究が実施された大学の名称のカール・ラントシュタイナーは1868年オーストリアに生まれたユダヤ人病理学者,血清学者で,1900年にABO式血液型を,1937年にRh式血液型を発見した.1922年にニューヨークのロックフェラー研究所に加わり,1939年の退職後も研究を続けた.1943年,研究室において心臓発作で死去した.

<コメント>
本研究は髄膜腫のgrade 2と3の,いわゆる悪性性格を持つものの画像の特徴を,腫瘍の形状を数値化するという最近のradiomicsの手法の一つを用いて検討した報告で,腫瘍の体積の割に表面積が大きいほど,grade 2または3の可能性が高いということを客観的,科学的に示した論文報告である.従来の報告では円形,不整,マッシュルーム型などに分類していたが,主観的であったためそれぞれの定義の境界線が不明瞭であった.数値化することで,科学的に再現が可能であり,髄膜腫 grade 1 vs grade 2 & 3を集団として観察した場合の特徴を正確に表している.
一方で,算出されたSF(腫瘍と同一体積の球の表面積/実際の腫瘍の表面積)の数値はgrade 1 vs grade 2 & 3でかなりoverlapしている.そのため,彼らは箱ヒゲ図などを作らず,表として結果を記載し有意差を記載するにとどめ,考察においては「カットオフを決めるには症例数が不足しており,さらなる症例の積み重ねによる検討が必要」としている.しかし,この少ない症例数でこれだけoverlapしているのであれば,症例数を増やしてもカットオフが決まるはずもなく,それが,彼らの結果の「低い陽性的中率」と「低い陰性的中率」に反映している.すなわち,個々の症例において髄膜腫のWHO gradeを予測するにはこのパラメーター単独では臨床上の有用性は乏しいという事実を示している.
その他の問題点としては,①施設1の採用症例は105/129(81%),施設2の採用症例は21/41(51%)であった.これは,selection biasが無視できないほど大きいことを示している.②parasagittalはconvexityに比べ,形状の制限が大きい.にもかかわらず,parasagittalの方がSFが小さい(表面積が大きい)という結果であった.これは,症例数が少ないためのbiasかもしれない.いずれにしても,convexityのみ,parasagittalのみで検討し条件を統一した方がデータとしては優れており,その観点でのデータは不足している.③文中の表によってはSFでなく,表面積の実測値を記載している(table 2 & 4).彼らの論文の論旨からは,table 3で示したSFのみで結果を示すべきであった.④考察に言い訳を書いてあるものの,grade 2と grade 3は分けて検討すべきであった.そうでなければ,grade 3の存在によってgrade2/3全体の結果が修飾されているという可能性を排除できない.⑤髄膜腫一般でのWHO gradeの比率を考えると,本シリーズのgrade 2 & 3の比率は高すぎる.⑥検討項目としてのMRIのパラメーターが少なすぎる.せめて浮腫体積くらいは入れるべきであった.
(広島大学脳神経外科 山崎文之)

執筆者: 

有田和徳