類上皮腫の長期予後(平均追跡期間89ヵ月):Mayoクリニックの63例

公開日:

2021年11月8日  

最終更新日:

2021年11月9日

Long-term surgical outcomes of intracranial epidermoid tumors: impact of extent of resection on recurrence and functional outcomes in 63 patients

Author:

Hasegawa H  et al.

Affiliation:

Departments of Neurologic Surgery, Mayo Clinic, Rochester, MN, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34653989]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Oct
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

類上皮腫は頭蓋内腫瘍のうち1%の稀な腫瘍である(文献1).極めて良性ながら後頭蓋窩や正中線上に出来ることが多く,腫瘍被膜は周囲組織に密着しているので完全な摘出は決して容易ではない.
Mayoクリニック脳外科は1990年以降に摘出手術を行った自験の63例(女性33例,初回手術時年齢中央値40歳,最大径中央値41 mm)を平均89ヵ月間追跡して長期予後を明らかにした.存在部位は後頭蓋窩33例,天幕上下に及ぶもの11例,松果体部5例,脳葉-半球間裂11例,中頭蓋窩3例であった.症状は顔面知覚障害14例,聴力低下12例,失調/平衡障害12例,けいれん8例,視力低下5例,複視5例,顔面麻痺5例などであった.

【結論】

摘出率は,初回手術63件では,全摘(GTR)とほぼ全摘(NTR)[被膜は残存]は併せて43%,亜全摘(STR)[>95%]35%,部分摘出(PR)22%で,2回目手術16件では各44%,13%,44%,3回目手術5件では40%,0%,60%であった.
GTR/NTRの10年無再発生存率は61%であり,STR,PRより良かった(p=.130とp<.001).10年無再発生存率は初回手術群では2回目手術群,3回目手術群より高かった(p=.102とp=.065).
無治療(intervention free)生存率は3,5,10,15年で100%,94%,59%,50%であった.

【評価】

単一施設での類上皮腫の手術成績と再発率を平均88ヵ月間(0.4~458.3ヵ月)という長期追跡で明らかにした労作である.類上皮腫は殆ど出血せず,大部分の腫瘍成分は吸引除去が可能なので,正しいアプローチを選択すれば腫瘍の過半を除去するのは難しくはない.近年の内視鏡の導入によって血管や脳神経の隙間に伸びている腫瘍部分も観察することが可能であるので顕微鏡単独手術の時代に比較して摘出率は向上しているように思われる(文献2,3).本シリーズでも初回手術の亜全摘(>95%)以上の摘出率は78%と高い.ただし2回目では57%,3回目では40%と低下している.
一方,本シリーズの初回手術群における無治療生存率は15年で50%であったという.つまり,これだけ高い摘出率であっても,手術後15年という長期経過観察では半数は再手術を要するまでに再増大するということである.ただし,GTR/NTR群では20年後も再手術を要した症例はなかったという.これは重要な指摘で,GTR/NTRを達成出来なかった患者に対しては特に長期の経過観察が欠かせないことになる.
一般に類上皮腫では腫瘍の過半を摘出し症状を改善させることは難しくはないので,ついつい気楽に構えがちであるが,初回手術こそが高い摘出率(GTR/NTR)を達成し,良好な腫瘍コントロールを得るための最良の機会であり,この機会をのがさないようにしなさいというのが,著者らの結論である.当たり前かも知れないが改めて心に刻みたい大切なメッセージである.
ちなみに手術による恒久的な神経学的合併症は初回手術10%,2回目手術6%,3回目手術20%で,いずれも重篤(disabling)なものではなかったという.しかし,類上皮腫の再発時の手術では強い癒着によって摘出が困難となるので,著者らは再手術時には出来るだけ初回とは別のルートをとるように推奨している.
一番気になるのは,腫瘍被膜の完全除去に伴うリスクは臨床的な利得と釣り合うかである.すなわち,被膜まで全部摘出した全摘(GTR)群と被膜を残したほぼ全摘(NTR)群では無再発生存率や無治療生存率が異なるのか.残念ながら,この研究ではGTRとNTRはワンセットで解析されており,その点に関する情報は得られない.今後解決すべき課題である.
なお,著者らは悪性転化した1例を検討対象から除外しているが,これまでにも極めてまれながら転移や播種を示す悪性転化した類上皮腫は報告されているので(文献4,5,6),経過観察上注意が必要である.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー