馬尾の上衣腫の臨床像:イタリア・ベローナ大学での125例

公開日:

2021年11月22日  

Cauda equina ependymomas: surgical treatment and long-term outcomes in a series of 125 patients

Author:

Marchesini N  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University Hospital Borgo Trento, Verona, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:34653993]

ジャーナル名:J Neurosurg Spine.
発行年月:2021 Oct
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

脊髄上衣腫の約1/3は馬尾に発生する(文献1).ベローナ大学脳外科は1998年以降に摘出手術を行った馬尾の上衣腫125例(男性67例)を後方視的に解析し,病態を明らかにした.手術時平均年齢は44.3歳(7.3~82.8).
内訳は65例がWHOグレード1のmyxopapillary ependymoma(MPE),59例がグレード2の上衣腫(EII)であった.
神経機能評価にはMcCormickグレード(Mグレード,I無症状~IV最重症)とKesselringスケール(Kスケール,0無症状か軽微な症状~4最重症)を用いた(文献2,3).入院時,84%がMグレードI,77%がKスコア0であった.

【結論】

仙骨にまでおよぶ腫瘍の存在と腫瘍径は退院時の機能不良(p=.029と.002)の,腫瘍径と複数回手術は最終追跡時の機能不良(p=.019とp<.001)の予測因子であった.術前のMグレード≧IIIとKスケール≧2は機能不良と相関していた.全摘出率はEII98%でMPE84%であった(p=.0074).多変量解析で全摘出と相関したのは腫瘍被膜の存在だけであった(p=0.011).再発例17例中,MPEは13例でEIIの4例より多かった(p=.032).長期無増大生存は初回手術での全摘出,一塊摘出,くも膜播種なし,腫瘍が存在する椎体レベルが短いことが相関していた(いずれもp<.05).

【評価】

脊髄上衣腫のうちグレード2の上衣腫(EII)は頚胸部に多く,myxopapillary ependymoma(MPE)は脊髄円錐や馬尾に多い(文献4).馬尾の上衣腫の多くは腰背部痛(42%)や下肢痛(44%)で発症し,尿閉や歩行障害を来すものは少なく,全摘出できれば機能予後は良好であるが,大きな腫瘍では全摘が困難となり,再発を繰り返すものもある.本シリーズ全体では肉眼的全摘出(GTR)の割合は91.2%と高く,特に腫瘍が被膜によって被われているものでは全摘出率が高かった.MPEでは被膜に被われていない割合が13.8%とEIIの1.7%に比較して高く,このことはMPEで全摘率が有意に低い(84 vs 98%)ことと関係していると思われる.
無増大生存は全摘,一塊摘出,くも膜播種なし,腫瘍が仙骨レベルまで及んでいないこと,腫瘍が存在する椎体レベルが短いことが関与していた.すなわち腫瘍が比較的狭い範囲に限局していれば,一塊摘出が可能で,長期の腫瘍コントロールが得られることを意味している.
この結果を受けて著者らは,腫瘍が症候性であれば,腫瘍の全摘出を目指して,出来るだけ早期に神経モニタリング下での一塊摘出を推奨している.特にMPEでは,大きくなると馬尾神経を巻き込んで発育し,境界不鮮明となり全摘出は困難になる.
したがって,MPEで特に亜全摘に終わった例では手術後の丁寧な経過観察が必須であり,放射線照射が必要になることもある.

執筆者: 

有田和徳