家族性の未破裂動脈瘤の破裂率:8コホート9,511症例のメタアナリシス

公開日:

2021年11月25日  

最終更新日:

2021年11月25日

Difference in Rupture Risk Between Familial and Sporadic Intracranial Aneurysms: An Individual Patient Data Meta-analysis

Author:

Zuurbier CCM   et al.

Affiliation:

Department of Neurology and Neurosurgery, UMC Utrecht Brain Center, University Medical Center Utrecht, Utrecht, The Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:34670818]

ジャーナル名:Neurology.
発行年月:2021 Oct
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

家族性未破裂動脈瘤の破裂率は孤発性のそれと異なるのか.この問題に応えるためにユトレヒト大学などの国際研究チームは過去に報告された8個の前向き研究コホート(フィンランド,オランダ,日本)の9,511症例11,647動脈瘤の個人参加者データ(IPD)のメタ解析を行った.多発性嚢胞腎ともやもや病の患者は除外した.家族性未破裂動脈瘤と孤発性未破裂動脈瘤の破裂率の比較に当たってはPHASESスコアと喫煙を調整後のハザード比(HR)を求めた.
全8コホート中6個のコホートの2,297例3,089動脈瘤のうち399例(17.3%)では親か子か同胞(兄弟姉妹)に動脈瘤があり,家族性動脈瘤と判断された.

【結論】

6個のコホートの7,301人・年の経過観察期間で,家族性のうち10例で(破裂率0.89%/人・年,CI:0.45~1.59),孤発例のうち41例で破裂が起こった(破裂率0.66%/人・年,CI:0.48~0.89).孤発例に対する家族性未破裂動脈瘤を有する患者の破裂の調整後HRは2.56(CI:1.18~5.56)であった.
一方,親か子に動脈瘤があった場合(同胞は含まない)にのみ家族性動脈瘤と判断した日本の大規模コホート2個を含む全8コホート9,511例では,家族性未破裂動脈瘤を有する患者における動脈瘤破裂の調整後HRは1.44(CI:0.86~2.40)であった.

【評価】

くも膜下出血や未破裂動脈瘤を有する患者の家族が動脈瘤を有する確率は10%前後と報告されているが(文献1),本研究では家族性未破裂動脈瘤の割合は17.3%であった.
一方,動脈瘤破裂の家族歴を有する患者の家族は,動脈瘤破裂の家族歴がない患者よりも動脈瘤破裂の頻度が高いことが報告されている(文献2).
本シリーズでは家族性未破裂動脈瘤を有する患者では孤発性未破裂動脈瘤を有する患者に比較して,平均年齢が低く,高血圧が少なく,動脈瘤径が小さく(<7.0 mm),中大脳動脈が多く,PHASESスコアが低かった(何れもp=.01).PHASESスコアは未破裂動脈瘤の増大や破裂を予測するために作成されたシステムで(文献3),人種,高血圧の有無,年齢,動脈瘤の大きさ,存在部位,くも膜下出血の既往の有無に基づいて点数を合算しスコア化したもので,PHASESスコアが高いほど動脈瘤は増大しやすく,破裂しやすい.これらの指標をもとに単純に考えると家族性未破裂動脈瘤の患者の方が孤発性未破裂動脈瘤患者より破裂しにくいように思われるが,非調整HRは1.49(CI:0.73~3.07)と家族性未破裂動脈瘤の患者の方がやや高かった.
さらに,PHASESスコアと喫煙を調整すると孤発性動脈瘤を有する患者と比較した家族性動脈瘤(親か子か兄弟姉妹)を有する患者の動脈瘤破裂の調整HRは2.5(CI:1.2~5.6)と有意に高かった.
一方,家族性動脈瘤の判断対象に同胞を含まないコホートも含めた場合は,家族性動脈瘤を有する患者の破裂の調整後HRは1.44(CI:0.86~2.40)で,わずかに有意とならなかった.
ちなみに,家族性未破裂動脈瘤の患者と孤発性未破裂動脈瘤の患者では多発性動脈瘤の割合は31%と27%で差はなかった.
家族性動脈瘤が破裂しやすい理由は,本稿では明らかにはされていないが,破裂につながる共通の遺伝学的背景(文献4),環境要因が存在することが示唆される.もしかすると口腔細菌(文献5),腸内細菌(文献6)などの共通の細菌叢も関与しているのかも知れない.今後の研究に期待したい.さしあたっては,家族性未破裂動脈瘤の患者では,孤発性動脈瘤より破裂のリスクが高いのは事実と考えて,より積極的な治療を提案することが必要かも知れない.少なくともより綿密な経過観察は必須であろう.一方,偶然に発見された未破裂動脈瘤を有する患者のリスク評価のために,その一親等血族に頭部MRAを勧めるべきかどうかは費用効果の観点での検討が必要であろう.
ところで,本論文を読むと,家族性動脈瘤を定義するのに同胞の動脈瘤を入れるのか入れないのか,2つの考え方があることがわかる.日本の法律上の一親等血族とは親と子のみであり,同胞は含まれてはいない.日本のUCAS Japanの家族性動脈瘤はこの判断に基づいていることになる.

<コメント>
一親等の定義が日本では親と子供までであるが,他の多くの国では同胞(兄弟姉妹)も入れているようで,ここに大きな違いがある.日本からのUCAS Japan(文献7)や慈恵医大の報告(文献8)では家族性が破裂の危険因子には入っておらず,その理由としては,兄弟姉妹の動脈瘤は含まれていないことと日本では家族歴があれば未破裂動脈瘤を積極的に治療している可能性が考えられる.
本研究ではPHASESスコアと喫煙を調整したHRを前面に出しているが,これらを調整しないと有意差は出ていない.いずれにせよ,孤発性と比較し,PHASESスコアが低く,小さな動脈瘤でも絶対破裂リスクが2.5倍高いということが本研究により証明された.これまでの報告より症例数が多く,高いレベルのエビデンスとなっている.
また,本論文中のLimitationにも記載されているように家族性動脈瘤を治療しないでフォローすることは倫理的に困難であり,実際のHRはもっと高いのかもしれない.本研究結果を見ると,PHASESスコア等の破裂リスク予測スコアには家族性の有無を加えても良いように思われる.
本メタ解析の結果からは家族性,特に同胞の動脈瘤の存在と破裂の相関が強い可能性が示唆され,今後のより詳細な検討の必要性を感じた.
(島根県立中央病院脳神経外科 井川房夫)

執筆者: 

有田和徳