定位手術的照射後の前庭神経鞘腫に対する摘出手術:300例のシステマティックレビュー

公開日:

2021年12月9日  

最終更新日:

2021年12月10日

Resection of vestibular schwannomas after stereotactic radiosurgery: a systematic review

Author:

Whitmeyer M  et al.

Affiliation:

Ohio State University College of Medicine, Columbus, OH, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34331121]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Nov
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

ガンマナイフを含む定位手術的照射(SRS)後に前庭神経鞘腫が症候性/無症候性の増大を示すことがある(文献1,2).これに対しては摘出手術が選択されることが多いが(文献3),多数例を対象とした検討はない.オハイオ大学のWhitmeyerらは,21研究300症例(平均53.2歳)のシステマティックレビューを行った.手術の理由は症候性/無症候性の腫瘍増大92.3%,増大を伴わない症状悪化4.6%,のう胞の増大3.1%であった.SRS後手術までの期間は平均39.4ヵ月.手術時の平均腫瘍径は2.4 cm,平均体積は5.9 cc.手術アプローチとしては後S状静脈洞法43%か経迷路法57%が選択された.

【結論】

術前の顔面筋運動は59.5%がHBグレードI~IIであった.術後91.5%で顔面神経が温存された.顔面神経温存率,術後HBグレードI~IIの割合,手術合併症率はアプローチ間で差はなかった(p=0.31,0.18,0.29).
摘出率は肉眼的全摘(GTR)56%,亜全摘(STR)44%であった.STRが選択されたシリーズではGTRのシリーズに比して顔面神経損傷が少なく(5.3 vs 11.3%,p=.07),HBグレードI~IIの割合が高かった(72.9 vs 48.0%,p=.00003).術後再発率は2群間で差はなかった(STR3.6 vs GTR1.4%,p=.29).

【評価】

ガンマナイフを主体とするSRS後に前庭神経鞘腫の体積が一時的に増大することは過半の症例で観察されるが(文献3),その多くは照射後6~18ヵ月後に起こり,大部分は3~6ヵ月で消退する.この期間は脳神経や脳幹は手術侵襲に対して脆弱な時期でもあるので,照射後3年間は手術は避けた方が良いとされている(文献4).本シリーズでもSRSから手術までの期間は平均39.4ヵ月であり,概ねその考えに沿っていると考えて良い.増大のメカニズムに関しては,放射線照射によるのう胞化,微小出血,腫瘍血管床からの液状成分の漏出(文献5),腫瘍の悪性転化(文献6)などが考えられている.本論文では,手術の対象となった症例がSRSを受けた前庭神経鞘腫全体に占める割合については記載されていないが,従来は1.6~5%くらいと報告されている(文献6).ちなみに全300例で実施されたSRSの方法はガンマナイフ72.7%,ライナックメス10%,分割定位照射(fSRT)7.7%,サイバーナイフ3.3%であった.
本シリーズでは,GTR達成率は約56%であり,最初から手術が実施されたシリーズの81.6%(文献7)に比べればかなり劣るが,これはSRS後では腫瘍と脳神経あるいは脳幹との癒着が非照射例より強いことが理由として挙げられている.このため手術戦略としてGTRではなくSTRを選択する場合も多い.実際,STR群の方が顔面神経損傷が少なく(p=.07),顔面機能温存率(HBグレードI~II)が高い(p=.0003).術後再発率については追跡期間が不明ではあるが,STR群で3.6%で,GTR群での1.4%に比してやや高いが実質的な差は無い(p=0.29).
著者らはこの結果を受けて,SRS後の前庭神経鞘腫に対する摘出手術は最初から手術を行う場合に比べて困難であり,手術はGTRではなく腫瘍体積の減量と脳幹圧迫の除去をゴールとすべきであると結んでいる.
前庭神経鞘腫に対するSRSの後,数年を経ての増大が一定の割合で起こるのは事実であり,これに対しては本研究のように摘出手術を選択することは稀でない.その際に,どこまで全摘出を追求するかという手術戦略の策定にあたっては本研究の結果を参考にすべきであろうが,手術後10年,20年という長期経過観察のデータは未だないということも考慮しておかなければならない.一方で再度のSRSという治療方法もKanoらにより提案されており,良好な成績が報告されている(文献8).
SRS後の腫瘍増大に対する手術あるいは再度のSRSについては今後の多施設前向き研究でその得失が明らかにされる必要性がある.

<コメント>
SRSを受けた聴神経腫瘍に対する摘出手術のsystematic reviewであり,大変示唆に富む内容である.
①手術時期についてはSRS後平均39.4ヵ月であり,かなりの数の症例が腫瘍の一過性腫大の時期に摘出手術を受けていたことが示唆される.
②一番のポイントは,腫瘍摘出度と顔面神経機能の温存の関係である.今回の研究では,手術後の再発率はSTR後で3.6%, GTR後で1.4%であり有意差はない(p=0.29).
③一方,顔面神経機能温存(HBグレードI~II)率はSTRで72.9%,GTRで48%であった(p=.0003).
このことを考えると,SRS後の再発聴神経腫瘍に対しては,GTRよりも機能温存を意図した摘出手術(STRもしくは部分摘出)を行うべきであるという結論には納得できる.(富永病院ガンマナイフセンター 岩井謙育)
参考文献: Iwai Y, et al. Surgery after radiosurgery for acoustic neuromas: surgical strategy and histological findings. Neurosurgery (2 Suppl) ONS 60: 75-82, 2007.

執筆者: 

有田和徳