症候性透明中隔腔のう胞に対する手術療法:54例のシステマティックレビュー

公開日:

2021年12月9日  

Surgical management of symptomatic cavum septum pellucidum cysts: systematic review of the literature

Author:

Simonin A  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Sir Charles Gairdner Hospital (SCGH), Level 1, Nedlands, WA, Australia

⇒ PubMedで読む[PMID:33340053]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2021 Oct
巻数:44(5)
開始ページ:2425

【背景】

透明中隔腔(CSP)はありふれた正常変異であり,幅5 mm以下のものは人口の20%前後で認められる(文献1,2,3).CSPのほとんどは無症状であるが,まれに増大してのう胞化し,症候性となることがある.本稿は症候性CSPに対する手術の既報54例(女性20例)のレビューである.本稿では透明中隔腔と一体化したベルガ腔もふくめてCSPとして扱っている.平均年齢は24.3歳.症状は頭痛(62%)と精神症状(49.1%)が多かった.術前画像診断で54.5%に水頭症が認められた.治療法で最も多かったのは内視鏡下開窓術70.9%で,シャント18.2%,開頭手術5.5%,定位脳手術的開窓術1.8%が続いた.

【結論】

症状の完全消失は65.5%,部分消失は13%で得られた.死亡の1例(シャント感染等)を含む合併症は9.1%で発生した.のう胞の再発は5%で認められた.小児23例と成人21例を比較すると,頭痛は成人で多く(89 vs. 48%,p=.004),精神症状は小児で多かった(76 vs. 33%,p=.006).良好な治療結果(症状の完全消失+部分消失)が得られた群では,得られなかった群に比較して水頭症(96 vs. 4%,p<.0001),嘔気/嘔吐症状(27 vs. 0%,p=.003),うっ血乳頭(13 vs. 0%,p=.04)が多かった.

【評価】

透明中隔腔(CSP)の中でその幅が10 mmを超え,壁が両外側に膨らむものは透明中隔腔のう胞と呼ばれ,しばしばモンロー孔を閉塞し水頭症を来し,頭痛などの症状を呈することがある(文献4).台湾のWangらはMRI/CTによる頭部画像診断実施54,000例を後方視的に解析して,透明中隔腔のう胞22例(0.04%)を発見し,このうち16例(全体の0.03%)が頭痛を主訴としたと報告している(文献5).
頭痛以外の症状としては,本レビューでは精神症状として一括されているが,せん妄,行動異常,認知機能障害,易刺激性などが含まれている.本レビューのシリーズでは水頭症は30例(54.5%)で認められており,これらのケースでは水頭症が諸症状の原因であること,水頭症の存在が手術後の症状消失・改善と関係していることは良く理解出来る.一方,水頭症のないケースでものう胞壁の開窓などによって,症状は改善するので,のう胞自身による正中構造(脳弓などか)の伸展がこれらの症状を引き起こしているのであろうと著者らは推測している.
近年では,治療の中心は内視鏡下のう胞壁開窓である.その手技は様々であるが,特に本論文の著者らは,経脳梁的にのう胞内に進みのう胞下面の脳弓間でのう胞壁を開窓する手技(transcavum interforniceal approach)を推奨している.これによって,モンロー孔の正常な髄液流が回復するという.
ただし,この手技では脳弓や内大脳静脈の損傷には最大限の注意が要求されそうである.

<コメント>
CSPあるいはCSP with CVはよく見かけるが,症候性のものとなると頻度が低い.そのため個々の脳外科医の経験症例数が少なく,自信をもって症状がCSPによって生じていると断じるに躊躇してしまいがちである. 本報告では54.5%の症例で術前画像診断で水頭症が合併しており,外科治療により症状の65.5%が完全消失したという数量的指標を提供してくれている.また水頭症を呈さない場合も正中構造に与える伸展ストレスが解除されると症状が消失する可能性があることを示している.神経内視鏡手技が進歩してきた現在,症候性CSPに対しては、開頭術より低侵襲で,定位的手術よりは安全な治療が可能になっている.
ただし外科治療に踏み込むかどうかは,術後の症状改善の見込みについて脳外科医が情報をもっているかに左右される. その意味で, 本稿は希少疾患である症候性CSPに対する手術治療の動機付けにつながる有用な情報を提供してくれている. 今後さらに症例蓄積が進み, より詳細な病態が明らかになることを期待したい.(鹿児島大学脳神経外科 客員研究員 平野宏文)

執筆者: 

有田和徳