多発性膠芽腫に対する摘出手術に意味があるのか?:連続100症例の検討から

公開日:

2021年12月29日  

Is There a Role for Surgical Resection of Multifocal Glioblastoma? A Retrospective Analysis of 100 Patients

Author:

Friso F  et al.

Affiliation:

Department of Biomedical and Neuromotor Sciences (DIBINEM), Alma Mater Studiorum University of Bologna, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:34662898]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2021 Nov
巻数:89(6)
開始ページ:1042

【背景】

頭蓋内病巣が複数存在する多発性膠芽腫は,FLAIR-MRIで病巣間に高信号が連続している多焦点性膠芽腫と連続性のない多中心性膠芽腫に分けられ,その頻度は多焦点性膠芽腫で12~35%,多中心性膠芽腫で2~6%と報告されている(文献1).では多発性膠芽腫に対する摘出手術に意味があるのか?本稿はボローニャ大学における後方視的研究である.対象は膠芽腫連続624例のうちの16%(100例,男性63例)の多発性膠芽腫で,このうち82例が多焦点性膠芽腫で,18例は多中心性膠芽腫であった.手術による摘出率は全摘15%,亜全摘(70%以上)14%,部分摘出(25~70%)32%,生検(25%以下)39%であった.

【結論】

OS中央値は全摘群17ヵ月,亜全摘群11ヵ月,部分摘出群7ヵ月,生検群5ヵ月であった.より高い摘出率(GTR,STR)は生検術に比較してより長いOSと相関していた.カプラン・マイヤー解析では全摘と亜全摘はより長いPFSと相関していた.年齢,術前KPS,病変数,補助療法を調整後のCox回帰解析でも,全摘,亜全摘,部分摘出は生検術に比較してOSと相関した.一方,PFSに関しては全摘のみが相関した.
以上の結果は,多発性膠芽腫患者において高い腫瘍摘出率がOSに有利に作用することを示唆するものであり,術後KPSが保たれ,術後補助療法の妨げにならないなら,摘出手術は合理的な選択であろう.

【評価】

本稿の著者らが過去10年間に経験した624例の膠芽腫シリーズにおける多発性膠芽腫が16%,うち多焦点性膠芽腫が13.1%,多中心性膠芽腫が2.9%という頻度は従来の報告にほぼ一致している.病巣の個数は2個が62%,3個以上が38%であった.膠芽腫一般において摘出率が重要なOS規定因子であることは良く知られており,予後を左右する摘出率の閾値についてLacroixは98%(文献2),Sanaiらは78%と定めている(文献3).しかし,一般には多発性膠芽腫は単発に比較して予後が不良と報告されており(文献4,5,6),厳しい予後を考慮して,全摘を目指した手術は躊躇されがちとなる.本稿の著者らのシリーズでも全摘15%,亜全摘14%と,摘出率は決して高くない.ただし,OS中央値は生検群で5ヵ月であったのに対して全摘群では17ヵ月,亜全摘群11ヵ月であり,全摘や亜全摘は生検に比べて有意のOS延長効果を示した(p=.001,.003).
すなわち,本稿は多発性膠芽腫においても,手術後機能予後(KPS)が維持され,術後補助療法の妨げにならないなら,maximal safe resectionを行うという膠芽腫に対する手術の一般的な原則は変わらないことを改めて示したということが出来る.実際,本シリーズでは術後KPSは72%が不変,6%が改善,22%が悪化し,75%はStuppプロトコールに基づいた術後補助療法が実施されている.
なお従来の報告では多中心性膠芽腫では多焦点性膠芽腫に比較してOSとPFSが短いことが示唆されているが(文献7,8),本シリーズでは2群間に差はなかった(p=.533,p=.784).
著者らも述べているように本研究は後ろ向き研究であるので,Cox回帰解析で年齢,腫瘍径,KPS,eloquent areaなどの要因が調整はされているが,予後良好と予想される患者が全摘手術の対象に選ばれたというバイアスの可能性は否定出来ない.
この多発性膠芽腫に対する手術の意義に関しては,その生物学的な背景の解析とともに,引きつづいて検証されるべき重要課題であり,出来る事なら前向き研究での検討を期待したい.
なお,本論文では摘出率の評価の対象となった腫瘍が造影部分のみなのかT2高信号部分も含むのかは不明であるが特に言及していないので前者と思われる.

執筆者: 

有田和徳