大孔髄膜腫:1,053例のメタアナリシス

公開日:

2021年12月29日  

Foramen magnum meningiomas: a systematic review and meta-analysis

Author:

Paun L  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Geneva University Hospitals, Geneva, Switzerland

⇒ PubMedで読む[PMID:33507444]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2021 Oct
巻数:44(5)
開始ページ:2583

【背景】

大孔髄膜腫は全頭蓋内髄膜腫の1.8~3.2%と稀であるが,延髄,頸随,下位脳神経などの多彩な症状を呈しやすく,治療には難渋することが多い.本稿は33報1,053症例(女性54%,男性26%,記載なし20%)のメタ解析である.平均年齢は52.4歳(10~81歳).存在部位は前方66%,外側22%,後方13%.平均径は29 mm.椎骨動脈の取り込みは記載例の40%で認められた.手術アプローチで最も多かったのはfar lateralアプローチで,その他modified far lateral,extreme lateral,lateral,suboccipitalアプローチなどが用いられていた.

【結論】

多くのコホートで部分的から最大2/3におよぶ後頭顆の切除が行われていたが,頭蓋頸椎固定を行った症例はなかった.
80%で肉眼的全摘(GTR)が達成された.GTR達成率は外側や後方に存在する腫瘍が多くを占めるコホート(p=.025)や平均腫瘍径が25 mm以下のコホートで高かった(p<.05).
WHOグレード記載例の97%がグレード1であった.KPSは術前平均75,術後平均81であった.手術死亡率は0~17%,手術合併症率は0~91%(平均17.2%)であった.平均51ヵ月の追跡期間で2.5%が再発した.

【評価】

本稿は大孔髄膜腫に対する過去最大のメタアナリシスであるが,著者らも述べているように,過去の報告毎の手術アプローチの違い,評価方法の不均一が大きいため,ありきたりの結論しか導き出せていない.これは,大孔髄膜腫が発生部位やサイズによってかなり異なった臨床像を呈するためであり,これにしたがって手術アプローチも大きく異なっているためである.
ただし,全体としてみれば,GTR(Simpsonグレード1/2)が80%であり,解析の対象となった論文の著者らのセンターでは高い摘出率を達成していることが想像される.しかし,前方病変66%,椎骨動脈の取り込み(encasement)症例が記載例の40%というシリーズでのこの高い摘出率については,この論文の著者らも多少懐疑的な様である.片や手術死亡は0~17%,手術合併症率は0-91%(平均17.2%)と無視し得ない値である.
本レビューの対象論文で最も頻繁に使用されているのはfar-lateral(文献1,2)とextreme-lateral(文献3,4)アプローチであるが,いずれも椎骨動脈,下位脳神経,内頸静脈などの重要構造の損傷の可能性がある難易度の高い手術である.したがって,大孔髄膜腫は特定の施設/術者に症例を集積して安全性を高めるべきであろう.一方で,ガンマナイフや陽子線が普及しつつあり,髄膜腫への薬物療法の開発が模索されている現代において,大孔髄膜腫に対してどこまでの摘出を目指すべきなのかということは改めて問い直されるべきかも知れない.

<コメント>
マイクロサージェリーが発展した1996年以降の文献を中心にまとめられたforamen magnum meningioma(FMM,大孔髄膜腫)のメタアナリシスである.論文内のTableには,過去のFMMに関する重要な論文がほぼ網羅されており,これからFMMの治療を学ぶ者にとって貴重な文献リストとなっている.一般にFMMに関する論文を読むと,適切にcondyleを削る必要性,また削るとどのくらい術野が広がるか,椎骨動脈のtranspositionが必要かどうかなどのアプローチに関する内容が多いこと,外側後頭下開頭の変法に沢山の異なる名前がついていることなどが目につく.これに対して,本レビューでは手術アプローチについての議論は控え,良好な摘出度に影響するのは腫瘍径(25 mm未満)と腫瘍の発生部位が大孔の側面か後方であるという手術の結果を重視した点は評価できる.また,改めて著者らが述べているように,FMMの手術死亡率が他部位の髄膜腫より高いということは,FMM治療にあたって考慮すべき重要な注意点かもしれない.
気になったのは,大孔髄膜腫でも背側に発生したものは摘出に困難を伴う可能性が低く,そもそも過去のFMM論文の幾つかでは検討対象となっていない可能性がある点である.筆者らのFMM発生部位は前方が多いという主張の根拠は少し乏しいかも知れない.
なお,我々の発表した論文も引用されているが(文献6),全例が前-側方に主座をおく髄膜腫16例に関する内容であったにも関わらず,本レビュー内では部位不明になっている.我々の論文ではavailable operative space(AOS)という考え方を導入して,FMMの摘出手術の難易度と適切な手術アプローチを議論した.(山畑 仁志)

執筆者: 

有田和徳