成人視床グリオーマの病態:25報617例のメタアナリシス

公開日:

2021年12月29日  

最終更新日:

2021年12月30日

Thalamic gliomas in adults: a systematic review of clinical characteristics, treatment strategies, and survival outcomes

Author:

Palmisciano P  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Trauma Center, Gamma Knife Center, Cannizzaro Hospital, Catania, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:34797525]

ジャーナル名:J Neurooncol.
発行年月:2021 Dec
巻数:155(3)
開始ページ:215

【背景】

2016年のWHO第4版改訂では,視床を含む正中部/傍正中部グリオーマのうち,H3F3AかHIST1H3B/C遺伝子のK27M変異を伴うものは悪性で,Diffuse Midline Glioma(DMG)として取り扱われている(文献1,2).本稿はK27M変異症例を含む視床グリオーマ25報617例のシステマティックレビューである.患者年齢中央値は45歳.組織学的には膠芽腫47%,退形成性星細胞腫21%,グレードII 20%であった.H3 K27M変異検索141例中,変異陽性は82例(58%)であった.一般的な症状は運動機能障害52%,頭痛35%で,50%で水頭症を伴っていた.

【結論】

摘出術は69%,化学療法は56%,放射線治療は73%,レーザー組織照射は2.4%で実施された.摘出率は全摘出25%,亜全摘(≧80%)31%,部分摘出12%,生検31%であった.平均追跡期間は18.3ヵ月.OS中央値は12.1ヵ月,PFS中央値は9ヵ月であった.2年生存率は全症例で19.7%,低悪性度グリオーマでは31%,高悪性度グリオーマでは16.5%であった.組織学的悪性度はPFSとOSに相関し(p<.001),病変の側方性(左51%,右44%,両側性4.3%)や手術アプローチはOSに相関しなかった.H3 K27M変異陽性例は陰性例に比してOSが短かった(p=.017).

【評価】

視床グリオーマは成人の頭蓋内腫瘍の1%を占める稀な新生物である(文献3).本稿は617例を対象としたメタアナリシスで,視床グリオーマ患者のOS中央値が12.1ヵ月,PFS中央値が9ヵ月であり,その予後が極めて不良であることを示している.またH3 K27M変異を検索した141例中約6割を占める変異陽性は生命予後(OS)不良因子であることを改めて示した.加えて,H3 K27M変異を示す腫瘍群内ではWHOグレードによるOSの差がないこと(p=.089),H3 K27M変異陽性群では術前KPS,術後KPSともに有意に低いことを明らかにした(p=.042とp<.001).
さらに,腫瘍の摘出率(全摘あるいは亜全摘)や補助療法(テモゾロミド,放射線照射)の実施も,PFSならびにOSと有意に相関した.
これらの事実は視床グリオーマでは,組織学的グレーディングにかかわらず遺伝子変異の検索が重要であり,K27M変異陽性例ではよりアグレッシブな治療を考慮すべきことを示唆している.
本研究の問題点としては,H3 K27M変異検索がなされていない症例が全体の77%に達しており,H3 K27M変異有りと無しという生物学的に全く違う種類の腫瘍が同じ発生部位という括りで解析されている点である.対象となった論文の多くが2015年以前のものであり,1980年台のものも含まれていることを考慮すれば致し方のないことではある.今後,H3 K27M変異,TP53変異,MGMTメチル化,EGFR増幅,TERTプロモーターメチル化,IDH1/2変異などの遺伝子解析症例の蓄積によって,各分子グループ毎の病態解析が進むことに期待したい.

執筆者: 

有田和徳