難治性てんかんに対する切除手術の効果は60歳以上の高齢者の方が非高齢者よりも高い

公開日:

2022年3月22日  

Role of resective surgery in patients older than 60 years with therapy-resistant epilepsy

Author:

Bottan JS  et al.

Affiliation:

Department of Clinical Neurological Sciences, Schulich School of Medicine and Dentistry, Western University, London, Ontario, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:34920438]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Dec
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

一般に高齢者の開頭手術は手術合併症のリスクが高いことから避けられる傾向にあり,そのために難治性てんかん患者でも切除手術の対象から除外されることが多い.オンタリオ・ロンドン市ウェスタン大学のチームは過去20年間に切除手術を行った595症例のうち60歳以上の難治性てんかん患者31例(平均63.7歳)を対象にその効果と安全性を検討した.同時期に切除手術を受けた60歳未満の患者564例の中から60例(平均36.2歳)をランダムに抽出してコントロール(非高齢群)とした.高齢群と非高齢群では言語優位半球病変の割合,手術側,側頭葉手術の割合に差はなかった.

【結論】

高齢群ではてんかん有病期間が有意に長かった(28 vs 19年,p=.019).頭蓋内脳波は非高齢群で多かった(60 vs 36%,p=.030).手術後6ヵ月,1年,2年のエンゲルクラスIは,高齢群で89.7%,96.2%,94.7%,非高齢群で75%(p=.159),67.3%(p=.004),75.8%(p=.130)であった.術後のてんかん消失率は側頭葉てんかん患者で高く,特に高齢者で高かった(手術後1,2年目のエンゲルクラスIは共に100%).神経学的な合併症の頻度は2群間で差は無かったが,内科的あるいは軽微な合併症は高齢群で多かった(35.5 vs 10%,p=.003).

【評価】

てんかんの切除外科において内科的あるいは軽微な合併症が高齢群で多いのは首肯し得る.また丁寧な手術を行えば,神経学的な合併症の頻度に差が無いというのも理解はできる.しかし,むしろ高齢群の方が術後てんかん消失率が高かったのは何故か.高齢群と非高齢群では側頭葉てんかんの割合に差はなかったという.しかし,同じ側頭葉てんかんに対する手術でも,てんかん消失率は高齢群で高かった.著者らはその原因として,高齢群での器質的病変が多い事(80.6 vs 68.3%),また海馬硬化の頻度が高いことを指摘している(39 vs 25%).確かに,MRIでの陽性所見や海馬硬化の存在は,側頭葉てんかん焦点切除手術における良好な転帰と相関することが良く知られている(文献1).
一方,頭蓋内電極の設置は高齢群で少なかった(35.5 vs 60%,p=.030).このことは高齢群の方が,焦点診断がより容易であったこと(海馬硬化を含む器質病変の存在)を反映しているものと思われる.
これらのことは,難治性てんかんを有する高齢者の特性というよりは,高齢ゆえに,手術候補と判断される前に,あらかじめ厳密な選択が行われていることを反映しているのかも知れない.
同様に,高齢者てんかんの切除手術の成績に関しては,2021年にMayoクリニックから報告されている(文献2).彼らは既報の14報と自験例を含めた547例(平均56.9歳)の患者個別データのプール解析(平均追跡期間39ヵ月)によって,てんかん消失率が65%(95%CI 59~72%)であることを明らかにした.多変量メタ解析ではより高年齢であること(係数2.1,CI 1.1~3.1,p<.001)と海馬硬化の存在(係数0.3,CI 0.1~0.6,p=.015)がてんかん消失の最も強い予測因子であった.このデータもまた,高齢者のてんかん手術には厳しい適応判断が行われていることを反映している可能性がある.
これらの研究結果は,高齢者に対するてんかん手術の有望さを示唆するものであるが,今後その有効性に関しては若年者同様にRCTで証明される必要性がある(文献3).さらに,住民ベースの研究によって,高齢の難治性てんかん患者全体における手術適応の頻度も明らかにされるべきであろう.
少し興味深いのは非高齢者群でマリファナ使用者が15%を占めていたことである.本稿ではこのことに関するコメントはないが,カナダ国の一般人口の嗜好を反映しているのか,難治性てんかん患者がてんかんコントロールのために積極的に摂取しているのかは不明である.

執筆者: 

有田和徳