頭部放射線照射後に発生するSMART症候群の予後因子

公開日:

2022年4月11日  

最終更新日:

2022年4月12日

Prognostic Factors of Stroke-Like Migraine Attacks after Radiation Therapy (SMART) Syndrome

Author:

Ota Y  et al.

Affiliation:

Division of Neuroradiology, University of Michigan, Ann Arbor, MI, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:35177545]

ジャーナル名:AJNR Am J Neuroradiol.
発行年月:2022 Mar
巻数:43(3)
開始ページ:396

【背景】

放射線療法後脳卒中様片頭痛発作(SMART)症候群は,1995年に初めて報告された,頭部放射線治療から数年以上経過後,急性発症の脳局所症状を伴う片頭痛様頭痛が単回あるいは再発性に起こる稀な病態であるが(文献1),その病態は不明な部分が多い.ミシガン大学や千葉大学など4大学のチームは,過去5年間に経験したSMART症候群20例(年齢中央値48歳,女性5例,男性15例)を後方視的に解析して症状の不完全寛解に関連する因子について解析した.中央値8.5ヵ月の経過観察期間での症状完全寛解は11例で,不完全寛解は9例であった.MRI所見の診断に関する2人の読影者の検者間一致度は高かった(k=0.7~1).

【結論】

高年齢,SMART初発後の経過観察期間の長さ,SMARTに対するステロイド治療が不完全寛解と相関した(p=.028,.002,.01).
急性期MRIで認められた局所所見は脳回の造影100%,皮質の浮腫状変化95%,rCBV増加67%,他部位の海綿状血管腫/微小出血痕65%,SWI/T2*での線状の皮質下低信号55%,白質の浮腫状変化45%,拡散制限20%であった.このうち,SWI/T2*での線状低信号,拡散制限,白質浮腫の存在は不完全寛解と相関した(p=.01,.026,.022).
経過中に脳回造影,皮質の浮腫状変化などは消失したが,皮質下の線状低信号や白質浮腫は残存した.

【評価】

放射線療法後脳卒中様片頭痛発作(SMART)症候群は,2006年Blackらによって①頭部放射線治療後の患者で,②放射線治療後数年以上経過してから片頭痛様頭痛,脳の局所症状などを起こし,③放射線照射野内の局所症状に対応する大脳皮質部位にガドリニウム造影効果を認め,④別の病因に起因しない,と定義されている(文献2).
本病態は稀で,2021年のメイヨークリニックからの報告でも過去24年間で25例しか経験されていない.本研究の対象となったのは,ミシガン大学,メイヨークリニック,千葉大学,アイオワ大学の4施設で過去5年間に経験した症例20例であるので,やはり稀少な病態と言うべきであろう.2021年のメイヨークリニックからの報告では,SMARTエピソードの再発に関係した因子としては女性と初回エピソード時のけいれん性脳波活動の不在が挙がっているが,画像所見の検討はなかった.
本稿は,SMARTの臨床像と同時に画像所見(MRI)に注目して症状の持続(不完全寛解)と相関する因子を検討したものである.臨床像では高年齢,SMART初発後の経過観察期間の長さ,SMARTに対するステロイド治療が不完全寛解と相関したとのことである.高年齢者では放射線障害からの脳機能の回復が悪いというのは理解出来る(文献3).ステロイド治療についてはどうか.ステロイド剤投与が脱髄巣の修復を遅らせている可能性も指摘されているが(文献4),臨床所見や画像所見の重篤さ故にステロイド剤投与が選択された可能性は否定出来ない.経過観察期間の長さも原因と言うよりは結果である可能性が高い.その他の臨床所見として,SMART診断時に片頭痛様頭痛は60%に認められていたが,その存在と完全寛解の有無とは関係がなかったという.
一方,MRI上は,脳回の造影,皮質の浮腫状変化,rCBV増加,他部位の海綿状血管腫/微小出血痕,SWI/T2*での線状の皮質下低信号,白質の浮腫状変化,拡散制限が認められた.このうち,SWI/T2*での線状の皮質下低信号,拡散制限,白質浮腫の存在が不完全寛解と相関した.拡散制限(細胞障害性浮腫)や白質浮腫がより重篤な病態と相関するのはなんとなく解るが,SWI/T2*での線状低信号の存在がより重篤で不完全寛解と相関したのは何故か.海綿状血管腫,マイクロブリーズ,脳表ヘモジデリン沈着は脳の遅発性放射線障害のMRI所見として良く知られている(文献4).しかし,この線状低信号は遅発性放射線障害では認められないので,SMARTに特異的な所見で病変内の出血性変化を反映しているのかも知れない.なお,この線状低信号は症状が完全寛解した症例でも消失しなかったとのことであった.
SMARTは稀な病態であるので,今後多施設登録研究で本研究における発見を検証する必要性がある.
一方,SMARTに対する安易なステロイド剤の投与が病態を遷延させる可能性については心にとめておくべきであろう.

執筆者: 

有田和徳