もやもや病の患者の脈絡叢動脈に生じた破裂動脈瘤も積極的に治療した方が良い

公開日:

2022年4月11日  

最終更新日:

2022年4月12日

Treatment of ruptured aneurysms of the choroidal collateral system in moyamoya disease: a systematic review and data analysis

Author:

Wiedmann MKH  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, The National Hospital, Oslo University Hospital, Oslo, Norway

⇒ PubMedで読む[PMID:34450582]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Aug
巻数:136(3)
開始ページ:637

【背景】

脈絡叢動脈はもやもや病における側副動脈の一つであるが,ここに動脈瘤が発生し破裂することは稀ではない.オスロ大学を中心とする国際共同研究チームは,もやもや病に合併した破裂脈絡叢動脈瘤の至適な治療法を求めてシステマティックレビューを行った.PRISMAガイドラインに準拠して31報告を抽出し,さらに著者らが経験した症例も加えて72例(女性61%)を解析対象とした.年齢中央値は40歳(7~68).出血の形態は脳室内出血68%,脳実質内出血8%,脳室内+脳実質内出血22%.動脈瘤は後脈絡叢動脈上56%,前脈絡叢動脈上43%.初発症状は頭痛39%,意識障害24%,局所脳神経症状15%などであった.

【結論】

29%に保存的治療が選択され,このうち40%が再破裂した.再出血の63%は最初の35日以内に起こった.26%で血管内治療が,17%で血行再建術が,8%で直達手術が行われた.これらの3群ではその後の再破裂はなかった.血管内治療は安全であったが,アクセス困難による失敗率は21%であった.血行再建術群の82%でその後の動脈瘤の退縮が認められた.直達手術による動脈瘤除去も有効であったが,合併症率は25%と高かった.
経過観察後(中央値約1年)の転帰は全般に不良で,41%が死亡か不可逆的機能障害であった.自立率は,保存的治療群と比較して何らかの治療を行った3群で高かった(42 vs 68%,p<.08).

【評価】

もやもや病における側副血行路上に動脈瘤が出来る頻度は3~14%とされており,側副血行路上の動脈瘤の破裂はもやもや病における出血の16~25%を占める(文献1,2).もやもや病に伴う動脈瘤はウィリス動脈輪上,基底核もやもや血管上,側副血行路上に分けられ,その割合は概ね3:1:1とされる(文献3).側副血行路上の動脈瘤では脈絡叢動脈上動脈瘤が最も多く(文献3),大部分は脳室内出血か脳実質内出血で発症する.脈絡叢動脈上動脈瘤に対する治療は多くの場合困難である.これは,1)直達手術では皮質切開を要し,側副血行路である穿通動脈を損傷する可能性がある事,2)動脈瘤が真の嚢状動脈瘤ではなく,仮性動脈瘤が多い事,3)血管内治療では,ウィルス動脈輪が閉塞していることと母動脈が細くかつ蛇行しているためにアクセスが困難であることなどによる.
本稿は,過去に報告されたもやもや病に伴う破裂脈絡叢動脈瘤の報告と自験例を併せた72例を対象に,各種治療の有効性と転帰を検討したものである.
その結果の中で最も印象的なのは,保存的治療群では再出血が40%と高頻度であったのに対して,動脈瘤に対して何らかの治療(血管内,血行再建,直達手術)が試みられた群では再出血が0%と大きな違いがあったことである.しかも再出血の過半は初回出血後35日以内の早期であった.また,最終観察時の転帰は何らかの治療を行った群で良かった.著者らはこの結果を受けて,もやもや病患者における破裂脈絡叢動脈瘤の再破裂率は高く,緊急治療を要する病態であると結論している.
従来の報告ではもやもや病患者の破裂脈絡叢動脈瘤の治療は困難な反面,仮性動脈瘤が多く,自然消退する傾向が強いとの理由で保存的治療が推奨されることが多かったが(文献4,5),本稿の論旨はそれらとは対照的である.
今後本稿の論旨は,理想としてはRCTで検証されるべきであるが,症例の乏しさ,倫理的な障壁などのため,その実施は困難そうである.大規模な前向き登録研究に期待したい.

執筆者: 

有田和徳